失われた五感を取り戻せ

翌日。食堂に四人が集まった。

「皆さん、おはようございます。これより、第五ゲームを開始します。その前に皆さんには、前のテーブルにあるカードの中から、一枚カードを引いてもらいます。それでは、橘零さんから引いてください」

一度放送が切れ、目の前に四枚のカードが現れた。零がテーブルの前まで行くと、カードがすべて表になった。

(どうして表になったんだ?それよりも選択肢は・・・。僕に当てはまっているのは・・・これかな)

零が戻ると、カードが裏向きになった。

「では、次に橘麗さん。カードを引いてください」

麗がテーブルへ向かって歩き出した。

テーブルの前に着くと、サッとカードを引き、戻ってきた。

「最後に、興津斗貴さんと甲斐涼祐さん。順番にカードを引いてください」

放送が終わる前に歩き出し、終わった頃には、カードを引き終えていた。

「皆さん、カードの内容は見ないようにしてください。これから、移動をするので目をつぶってお待ちください」

放送が切れ、目を閉じていると、床が強く揺れた。


 目を開けると、目の前には真っ白な壁があった。周りを見渡すと、何もない白い壁が六面を覆っていた。しばらくして、放送が流れた。

「これから第五ゲーム、失った感覚を頼りに謎を解け、のルール説明をします。

ルールその一

先程引いたカードに書かれている感覚がゲーム開始と同時に失われます

ルールその二

失われた感覚は他人に言ってはいけません。もし言ってしまった場合、即脱落となりますが、三秒以内に答えを言い合っていたら、残っている人のうち一人の感覚を戻します

ルールその三

解いてもらう謎は計三個で、一つの謎が解けるごとに一人の感覚を戻します

ルールその四

謎が解けなかった時点で一人脱落してもらいます。つまり、最高で三人脱落することになります

ルールその五

時間は一つの謎につき三十分です

ルールその六

ゲーム中に取り戻せなかった感覚は、ゲームをクリアしたとしても戻ってきません

最後に、このゲームのリーダーは興津斗貴さんとなります


それでは、これより第五ゲーム、失った感覚を頼りに謎を解け、を開始します」

不気味なサイレンと共に放送が切れ、殺風景な部屋に机とカレンダーが現れた。


 (あれ?床の感触がしない・・・)

僕は、自分の失った感覚が何かが分かり、リーダーとしてゲームを進めようと、他の三人に向かって呼びかけをした。

「皆さん、起きてください。零くん、麗さん、涼」

すると、零くんが目を覚ました。

「ここは・・・それよりも君は?」

「零くん、僕だよ。興津斗貴。ここは・・・よく分からない」

(それよりも零くん、やっぱり話せたんだ)

零くんが話せるようになったことに感動しながらも、机の上にある時計を見ると、すでに二十分が過ぎていた。

「あれ・・・とっきーどこ?」

涼も目が覚め、少しホッとした。

「ここだよ、涼」

「見えないよ、とっきー」

(そうか。涼は視力を失ったのか)

気づいた瞬間に、涙がこぼれた。

(ごめんね、涼。僕が右のカードを引けば良かったのにね)

脱落しないように、心の中で謝り続けた。

悲しみに溺れていると、不気味なサイレンが鳴り響いた。

「一つ目の謎は失敗だったため、一人脱落してもらいます」

放送が響き、ハッと現実に連れ戻された。

「今回は、橘麗さんに脱落していただきます。それでは、引き続き頑張ってください」

放送が切れ、麗さんのいた床がなくなり、残り三人となった。


 二つ目の謎は、今日は何月何日か、だった。

「斗貴くん。今日は何日なの?」

零くんが、何も分からないかのように聞いてきた。

「僕たちがここに来たのが、三月二一日だから、たぶん三月二六日だと思うよ」

零くんの質問に答えたとき、

「残念、違います」

(これで答えたことになるのか・・・。それなら、一体今日は何日なんだ)

予想外の結果に動くことも出来ず、ただ放送を聞くことだけしか出来なかった。

「今回脱落してもらうのは、甲斐涼祐さんです。では、残り二つ頑張ってください」

放送が切れ、残りが僕と零くんだけになっていた。


 三つめの謎は、外にあった雪のようなものの正体を当てる、という内容だった。そして部屋の中には、外にあった雪のようなものが大量に降ってきた。僕は、雪のようなものに触るため、近づいて触った。

「あっ、僕触覚が失われているから分からないんだった」

何で声に出してしまったのか、自分でもよく分からない。気づいたときにはもう手遅れで、放送が流れた。

「興津斗貴くん。失われた感覚を言ってしまったため失格となります。今から三秒以内に答えを言ってください」

放送が切れ、カウントダウンが始まっていた。

(普通に考えて雪。でも、確かここに来たときに雪ではないって言ってたような・・・)

答えが分からずに諦めていた中

「ドライアイス」

後ろから声が響いた。

「正解です。それでは、残った橘零さんの記憶を戻します。橘零さんは目の前のドアから外に出てください。これで第五ゲーム、失った感覚を頼りに謎を解け、を終了します」

僕の床がなくなり落ちていった。

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