能力がないただの雑魚。だけど、能力持ちの少女を拾った

ティーノ

第1話

ある日から、色々な能力を持った人たちが生まれるようになった。

残念ながら俺は、能力などを持たないただの一般人だ。もっと言えば、「能力がない奴はただの雑魚」らしい。

どうしてそう言われるのかが分からないが……周りのやつらは、何かしらの能力を持っている。

なんというか、他の人と違うことから、俺は孤立した感じになっている。

もっとわかりやすく言うなら、クラスで一人だけ存在感が薄いというか、「あれ、いつからそこにいたの?」って言われる立場である。

能力とは別に、ダンジョンとかっていうものも現れるように。

いつからその存在があったのかは分からないが、つい最近になって「ダンジョン」という名前を聞いた。

ダンジョンなんか異世界の話だけだと思っていたのに、まさか現実でそんなものができるなんて。

名前を聞いた時は、「それってなんかのゲームでしょ?」などとふざけたことを言っていたが、ゲームとかではなく街中に存在するものだった。

ある場所にハッチのようなものがあり、そこに入ると真っ暗な中を進んでいくという、結構危ない感じがした。

だけど、勇敢な人たちは懐中電灯やら剣やらを持ち、そのハッチの中に入っていく。

数時間すると、その人たちは地上に戻り、「どうしてハッチの中に?」と聞くと、「モンスター駆りだよ」と言った。

「モンスター?」とオウム返しすると、「ああ、ほら見なよ」と、バッグの中から取り出したものは何かの肉だった。

「……これがモンスター?」「そうさ。これがモンスターの肉。せっかくだから、この肉食べないか?」と言われ、「えっ、それじゃあお言葉に甘えて」そう言い、その男の後をついて行った。

その日の夜、俺はモンスターの肉を食べたりその男の奥さんや子供たちと話をした。

……と、そこまではよかった。

ある男が「ん?ちょっと待て、お前……」と、俺の顔をギロっと睨み言う。

「……一般人だな?」と言い放った。

「えっ?」もちろん俺は混乱した。いや、一般人だから何?

「ほーう……能力も持ってないただの雑魚、か」「えっ、ちょ、ちょっと待ってください」

「雑魚は……処刑だ」「はっ?」その瞬間、男は腕を振り上げ、俺はとっさにかわした。

「おい!捕まえろ!」「捕まってたまるか……!」

その男が持っていたのは、大きな刀だった。それで俺を殺そうとしたんだ。

なんとか逃げ切れた俺は、後ろを振り返り追ってきてないことを確かめる。

「つーか、雑魚だから処刑って……どういうことだ?」

雑魚=死 能力持ち=生 どういうことなのだろう。

どうしてこの世界は、能力持ちじゃないといけなくなったんだろう。

「はぁ、はぁ……まあいいや。とりあえず帰るか」

帰りの道中、俺はある違和感に気づいた。

少し先の方を見ると、なぜか段ボールの箱が置いてある。

嫌な予感がした。

歩道に大きな段ボールの箱で思いつくのは、野良猫か野良犬が入っているということ。

……俺の家、ペットダメなんだけどなぁ。

そう思ったなら箱を開けなきゃいいじゃん、と自分でも思った。

だが、その入っていたものが意外なものだったのだ。


「にゃー」

「………………嘘だろ」


白い猫耳を付けた……美少女が箱の中に入っていた。


「お兄さん、私一週間もここにいるの。だから……拾って?」


猫のポーズからの上目づかいでそういわれてしまった。


「……あー」


ペットはダメだけど、この子は入れてもいいだろ。

いや違うな。この子は猫じゃない。ただの人間だ。

だけど、どうして猫耳なんかつけてるんだろう。

コスプレが趣味だったとか?


「お兄さん……お願い」


白い猫耳、白い髪……そして、ロリ。

うん、拾わないとダメだね。


「ほら、立てるか?」

「ん……ありがとお兄さん。今まで何人かに声はかけたけど、誰も聞く耳を持っていなかった。でも、お兄さんは違った。こんな私を拾ってくれるなんて……」


そう言って少女は少し倒れそうになった。

俺は少女をおんぶして、家に帰ることにした。


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