第30話 光の贈り物

『おめでとう。汝は力を得た。汝こそ、真なる女王として相応しい』


 まだ、夢心地の意識を奮い起こして、瞼を開けるとそこは見渡す限り、どこまでも白い光に包まれた純白の世界ですわ。

 不思議な空間とでも言うべきかしら?


『汝は血に抗い、真なる光を得たのだ』


 一面白い世界の中でひときわ大きな輝きを放っていて、姿形すら分からない光源と思しきものが威厳のある声の主みたい。


「レオは? レオは大丈夫なの?」

『それな。だいじょーぶだわ。お前の癒しの力、ちょすごだわ!ズッ友でガチヨロなのだわ』

「んんん?」


 今のは多分、バステトでしょう?

 意味が分からない訳ではないですけど、かなり変……。

 でも、どうもと理解して、いいですわね。

 多分、自信はありませんけど。


『永き時、我らはこの地に縛られていた。されど、汝の光により、我らはくさびより解き放たれた。礼を言おう』


 バステトがギャーギャーと小声で喚いているのを威厳のある声が抑えて、非常に気になることを言ってますわ!

 光? それよりもレオは?

 レオはどうなったの?


『心配はいらぬ。汝の癒しの力は絶大なものだ。汝であれば、恐らくは失われた命をも戻せるかもしれぬ』

「え? えぇ?」


 お祖母様フリッグお母様ゲェルセミは光の魔法を得意ですから、わたしにその形質が継がれていたとしてもおかしくないのです。

 ただ、それをロキから受け継いだ闇の血が邪魔していたはず……。

 そうではなかった?

 わたしがそう思い込んでいただけ。

 本当は元から、闇になど囚われていなかったのかしら?


『そうなのだわ。思い込みはいけないのだわ』

『バステトは少し、口を噤んでおれ』

『りょ』


 バステトの言い回しは軽い。

 だからこそ、逆に分かりやすいとも言えるのかしら?

 変に頭で考えないのがいいのかしらね。


 そう! わたしはレオを助けることが出来たのだわ!


 いけませんわ。

 バステトの口癖が伝染ったのではなくて!?


『我らはこの地を離れる。だが、その前に汝に感謝の気持ちを贈ろう』

『受け取るのだわ』




 夢?

 あまりにもはっきりとしていて、不思議な体験……。

 でも、確かなことが一つだけ。

 それはレオが助かったということ。


 血の気を失っていたレオの顔色が元に戻りつつあって、荒かった呼吸も静かになっています。

 傷だらけになっていた体も傷口がふさがり、血が止まっていました。


 これがわたしの力?

 光属性の癒しを使えたのだわ!

 あら? 変な癖がついてません?


「よかった……レオ」


 レオの体を抱き締めて、今更のように気が付きましたの。

 わたし、何も着てませんわ!?

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