日中友好祈念作品・中国日本悪名英雄たちの異世界名誉挽回太平記

郭隗の馬の骨

第1話 馬括、汚名返上

憂(う)かりける今の身こそは先の世と

おもへばいまぞ 後(のち)の世ならん


今の世の中の苦楽は、前世の生き様である。従って、今の世の中を一生懸命に正しく生きていくことで、来世も希望に満ちた素晴らしい人生を送ることができるという意味です。


島津いろは歌意訳

現世での行いを大切にすることで、来世に生まれ変わった自分へ徳を渡すことができるという「因果応報」の教えが、この歌にはこめられています。



舞台は2000年以上前、とある国の戦国時代!

ある若者が歴史に登場しました。


彼は若くして、名声を得て王と民衆の期待を一身に背負っていました。

当時、彼の国は戦争状態にあり、一人の老将軍が国家規模の大軍を率いていました。

しかし、老将軍の慎重な采配に王も民も不満を持っていました。


その時、その若者を老将軍と交代させようという声がどこからともかく沸き上がり、王もその気になりました。


ここで若者の視点に変わります。

「俺様は優秀な将軍になれる!老いぼれの将軍では敵を打ち倒すことはできない!だが俺は違う!!!見事敵を撃ち破り大勝利をしてみせよう!!」


若者は自分の国だけでなく、当時最大級の兵力を率いることになりました。

敵もまた当時覇権をとなえる強国であり、天下分け目の戦いとなりました。


ここから、走馬灯のように若者の記憶が映し出されます。

飢え死にする大量の味方の兵士!

味方同士で争い、死んだ者、殺したものを焼いて、あるいは生で食する兵士たち!


俺の気力も初めの充実さが嘘のように苦しい。

腹は減り、視界は狭くなり、胃は痛み、苦しさがジリジリと自分を追い詰める。


もう限界だ!

部下に命じて、何とか動けるものをかき集めた俺は敵陣に向かって突撃する。

よし、道は空いている、ここを抜ければ本国に連絡も取れるに違いない!


そう思った刹那、多くの、まるで空を覆わんがばかりの弓が俺を襲う!

無数の矢が体のいたる場所に突き刺さる!

痛い!苦しい!!辛い!!!もう殺してくれ・・・


若者の痛みはそこで終わりますが、彼のまぼろしはまだ続きます。

数万の味方の兵が降伏し、首を斬られ穴埋めにある光景が延々と続きます。

そして数百名の少年、少女たちがその風景を見るよう厳命され、死んだような目でそれを眺めています。


さらに舞台は変わり、涙をボロボロ流し嗚咽する母親の姿。

敵軍に攻め込まれ、混乱する若者の国の首都の様子。

そして、若者の国の王が虜となり、彼と戦った敵国に降伏する光景・・・


若者は泣き、叫び、嗚咽し、そして悔やみました。

「なぜこんなことになった!俺のせいなのか?くそう、二度とこんな思いをするもんか!!!」


ここで若者は意識を取り戻しました。

顔を上げると、左右に人々が並び、真ん中奥には女性が見えました。

女性の美しい声が聞こえます。


「馬括」 (ばかつ)

「 馬括よ!」

「目が覚めましたか!」


若者は答えます。

「俺の名前は✖括だ!馬括ではない!!あれ?なんで自分の名前が出ないんだ?」


女性は穏やかに言います。

「あなたの名前は私の前では馬括です、大事な事なので忘れずに覚えておきなさい」


若者は問います。

「あんたは誰だ、ここはどこだ!!」


女性は答えます。

「私は女神!あなたの思考で説明するなら天帝が少し近いかしら、ただし私はあなたの世界の天帝、神ではありません、別の世界の神です」

「私があなたに問うのは一つ!前世から学び私の世界で生きる覚悟はありますか?」


若者は間髪入れず答えます。

「もちろん、お願いします」

若者もなぜ自分がこの時即答したのか、後で不思議に思いました。


しかし、彼は心身共に飢えていて、もらえるものなら何でも欲しい、もう二度と死ぬ前の苦しい思いをしたくない。

それが今の彼のすべてだったのかもしれません。







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