第3章 四者四様

第11話 ランチパニック

 土曜日の自分をブン殴ってやりたい!


 何が『月曜日、学校ではみんな普通に話せるのだろうか』だ!

 そもそも放課後位しか、みんなと話さねぇじゃねーか!!


 他の時間はちょろっと話す位だろ。

 シリアス気取ってた自分が恥ずかしい。

 少し4人でお出かけしただけ。

 ギャルから少しばかり気に入られてるだけ。


 それなのに、もうあれか。

 俺も知らずに陽キャの仲間入りしちゃったかな?的な……そ そんなのこちとら別に求めてないんだからね!


 あぁ 何か恥ずかしい……土曜日のアレは、厨二病みたいなセリフで恥ずかしい……



若生わこう君。何か危ない薬でもやってんの? 」 

「別に」

「そ。さっきから苦悩の表情で、頭かきむしちゃってるし」

「髪切りたいな。って、思っただけ」


 ハイハイ。さーせんさーせん

 土曜日の事が恥ずかしくてもだえるんだよ!


「若生君ったら、ホント可愛いんだから」


 可愛い要素どこ!? 吉沢さんは今の俺の何処に可愛さを見出したの??


「もう。お昼休みだよ」


 だから何だよ? いつも通りギャル友と食堂にでも行って食ってろ…………よ


「吉沢さん? 」

「なに? 」

「いや。何してんの?? 」

「観りゃ分かるじゃん。机くっつけてる」


 そりゃ 観たら分かるけど。


「教科書忘れたの? 」

「はっ?? 昼休みに教科書使う訳ないじゃん」

「ですよね。では、何故机をピタッとくっつけてくるの? 」

「友だちには『教室で食べる』言っちゃったし」



 ニヒヒと明らかに何か企んでそうな笑い方をすると、吉沢さんはバッグに手を突っ込んだ


「作ってきたから一緒、食べよ」

「はい? 」

「わ 若生君の為に頑張ったんだからね」


 両手で顔を覆って恥ずかしがるようにしてるけど


「吉沢さん。何か危ない薬でもやってんの? 」

「やってないし! 」

「キャラ崩壊してるよ」

「こういう、あざとい女が好きなんじゃないの? 」


 それ、野々宮さんをあざといと思ってんじゃねーか!


「俺も一緒にさせてくれよ」

れん? 」

「この机、借りよう」


 わざわざ前の席の机を反対にし、吉沢さんの机にくっつけてきた


 蓮は蓮で昼休みはいつも陽キャグループといるのに


「では、私もご一緒させて下さい」

「の 野々宮さん……」


 人差し指を頬に当て「う〜ん」と何かを悩んでる野々宮さん。

 隣の吉沢さんから「ッチ」って舌打ちが聞こえた様な気がするのですが……


「そうですね……松岡君の隣に机を合わせれば、バランス良いですね」


 見てすぐ分かるでしょ? わざわざ人差し指を頬に当てて悩まなくても! その姿がめちゃくちゃ可愛いかったけど……あざとっ!


 野々宮さんの仕草って天然だと思ってたけど計算? 俺が気付けなかっただけ?? あざと女子だったのか!


 ってか。クラスメイトがザワツイてるんですが。


 俺の隣にはお洒落なギャル筆頭の吉沢さん。

 斜め向かいにはイケメン陽キャな人気者の蓮。

 前には清楚系な深窓の令嬢。学力学年トップ野々宮さん。


 タイプは違えど学校内の有名人が、謎に俺の近くに集まっている。



「じゃ〜ん。若生君のお口に合えば良いけど」


 弁当箱を開けると、だし巻き卵に唐揚げ。タコさんウインナーやら、ほうれん草の胡麻和え。


「しっかりとした弁当じゃん」

「めちゃくちゃ美味そう!! 吉沢さんホント、ギヤップ萌え多いよね」


 やたらと蓮が食らいついているが


「そちらは、お弁当屋さんのですよね」

「え? な なな。何のことか分かんない」


 野々宮さんの言葉に棘があるよ!

 吉沢さんもキョドりだしたし


「そちらと同じお弁当見たことあります。違うお弁当箱に移し替えだだけですよね」


 軽く手を口に添えてクスクスと笑う野々宮さん


「お可愛いですね。愛梨あいりちゃん」


 棘が増えてる!!

 吉沢さんを見れば眉毛が八の字になっていた

 野々宮さんの棘が刺さりまくりだよ!!


「べ 別に美味うまきゃ良いじゃん。な、颯太そうた。そうだよな颯太」

「お おう」


 吉沢さんをフォローする蓮。


「では、私のお弁当はどうでしょう? 」


 野々宮さんは可愛らしいランチクロスに包まれたお弁当箱を取り出し、ほどくと丁寧にランチクロスを机に敷いた。


「うぉ! 俺の好きなミニハンバーグにシウマイじゃん!! 」

「松岡君。好きなんですか? 偶然ですね。差し上げますので遠慮なくお食べください」

「マジで? ありがとう野々宮さん」


 これ、土曜に俺が教えたやつじゃん! 蓮の好きな食べ物ってことで!!

 偶然をよそおい蓮を上手く誘導させるとは


「美味い! めちゃくちゃ美味いんだけど!! お店に出して良いレベルだよ」

「そんな褒められると照れます。でも、松岡君に気に入って頂いて嬉しいです」


 お祈りするように両手を握り合わせ、上目遣いに蓮を見つめる野々宮さん。

 くっそあざとい!! 

 恋は盲目とは言ったもんで、俺が見抜けなかっただけか?


 こんなあざといのかよ。

 分かっててもめちゃくちゃ可愛いんですが……



「どうせ。アタシのはお弁当屋さんのですよ」


 あっ 吉沢さんがプクッと頬を膨らませイジケてらっしゃる。


 唐揚げをつまんで口に入れた。


「美味い。弁当屋さんのでも良いじゃん」

「だよね! 」

「そうですが、手作りの方が味わいがあると思いませんか? 」



 なんなの? 俺たちの知らないところで、野々宮さんと吉沢さんも土曜日に何かあった??


「それもそうだけど、何を食べるか。ってより、誰と食べるか。の方が大事だと俺はおもうよ」

「確かに! 颯太にしては出来た答えだな」


「うるせ! 吉沢さん。久しぶりに楽しい昼ご飯だよ」

「颯太は、いつも1人でパン食ってるだけだったもんな」


 味気ないかもしれないが、別に俺はそれでも苦じゃなかった。

 苦じゃなかったけど、今日の昼ご飯はマジで美味うめぇ!


「吉沢さんも食べなよ」

「ウン! 」



『学校ではみんな普通に話せるのだろうか』

 


 普通以上にみんなの思惑が絡んでて怖い……これから、こんな日が続くのかな?


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