第44話 クラスメイトに結婚がバレた!?

 遥は途中でスピーカーに切り替えてくれた。



『いい、遥。もう一度言うけど、次のテストで百点を取れなかったら、女学院へ転校してもらうからね』



 な、なんだって!

 そんなことって……。

 それで遥は震えあがっていたのか。



「百点を取ればいいんだよね、ママ」


『そうよ。そうでなければもう自由なんて与えない。しかもこの前、田村くんに失礼なことをしたそうじゃない。これ以上は看過できないからね』


「うぅ……だって、それはパパが」

『言い訳は聞きたくありません。いいから、百点を取りなさい。そうすれば認めてあげるわ。しっかり勉強するのよ』



 容赦なく一方的に電話を切られた。なんてこった、遥のママは厳しい人っぽいな。



「ど、どうしよう……遙くん」



 床に崩れ落ちる遥は、涙を洪水のように流す。

 このままでは遥が転校する羽目になる。俺が勉強を教えて百点満点を取れるようにしてやらねば。



「こうなったらスパルタ教育だ。転校させない為にもがんばろう」

「うん。わたし、今の学校がいい。遙くんと一緒に登校して帰る毎日がいい。だから、がんばるね」


「よし、明日からがんばろう」

「そうだね、今日はせっかくの別荘だし」



 その通り。パパさんのご好意を無碍むげにするわけにもいかない。今日くらいは、このビルで贅沢三昧の限りを尽くし、明日帰ろう。



 ――風呂を出ると、赤髪メイドさんが寝室に案内してくれた。



 ていうか、このメイドさん……どこかで見え覚えがあるような気がする。う~ん……誰かに似ているんだよなあ。



 寝室に入ると、そこは大きくて広々としたベッドがひとつ・・・あった。設備も充実しているし、スイートルーム級だな。



「なあ、遥……」

「そ、そうだったー…。この部屋ってベッドひとつしかないんだよね」

「マジかよ。まあいいか、夫婦なんだし」


「う、うん。いつも一緒に寝てるし、いいよね」


「そうだな。いつも通りでいいだろ。遥の寝顔が俺の癒しだからな」



 本当のことを言うと、遥は顔を真っ赤にして煙を出した。……しまった、つい口を滑らせてしまった。



「よ、遙くん! わたしの寝顔見てるの!?」

「ま、まあな。だって可愛いし」

「か、可愛いって……もぉ、勝手に覗かないでよ、恥ずかしいじゃんっ」



 事実、小動物のように可愛いんだがな。



 弾むほどフカフカのベッドに寝そべり、遥と共に横になる。すると、赤髪メイドさんが「後ほどお食事をお持ちします」といって去っていった。


 そうか、ここで食事をするんだな。こんな夜景の綺麗な眺めの良い場所で食事。高級ホテルに泊まらないと味わえない経験がタダで出来るとはな。



 * * *



 高級寿司を腹いっぱい食べた。

 聞くところによれば、プロの寿司職人をわざわざ呼んだらしい。そりゃ、絶品なわけだ。大トロに中トロ、贅沢の限りを尽くした逸品だった。


 満腹になったところで、まったりとした時間が流れ――就寝へ。



「おやすみ、遙くん」

「おう、おやすみ」



 なんだかんだで、いつものノリで眠ってしまった。無駄に緊張して眠れなくなるよりはいいか。



 ――朝になった。



 今日も学校がある。

 急いで向かわねば。



 着替えやら仕度を終えると執事に促された。俺たちはエレベーターを降りて地下駐車場へ。そのまま車に乗り込み、学校へ向かった。



「遙くん、さっそくだけど」

「酔わないか?」

「うん、大丈夫」



 遥は本気らしい。車の中でも勉強をしたいと申し出てきた。そのやる気ある態度に俺は心を打たれた。そこまで本気になってくれとは……そうだな、転校が懸かっているんだ。真面目にやらないと、それこそ一巻の終わり。


 俺も本気で遥に勉強を教えていかないと。



 そうして登校中も勉強を教えていった。



 学校に到着。

 勉強しながら登校なんて今までない経験だが、俺はこの危機的状況を意外と楽しんでいた。遥は真剣そのもので、必死にテストに出そうな問題を覚えていたし、要点をノートに綴っていた。


 いいぞ、この調子だ。



 教室に入ってからも俺は遥に勉強を教え続けた。そんな光景が周囲からどう映ったのか分からないが――なんかいつの間にか“付き合っている”ことになっていた。


 ……って、まずいな。


 俺と遥の結婚がバレると危ない。



「少し話があるんだ、遥」



 休み時間になって俺は勉強を止めさせた。



「え……どうしたの?」

「教室内で勉強を教えていると、クラスメイトが怪しむんだ」


「あー…。確かに、さっき女子が噂してた。わたしと遙くんが付き合っている説で」

「マジかよ。まあ、事実だけど結婚がバレると困るぞ」

「さすがに結婚はバレないと思う。精々、付き合っているのかなってくらいじゃないかな」


 それもそうだけど――う~ん、考えすぎか。


 だけど、その時だった。



 クラスメイトが一斉に騒ぎ出したんだ。



 な、なんだ?

 何事だ?



 クラスの一人が叫び出す。



「おいおい、大変だぞ!! 天満と小桜さん付き合っているんだってさ!!」



 その瞬間、クラス内は大騒ぎに――。




「えええええええええ!!」「マジ!!」「うそだろ!!」「あの二人やっぱり!?」「いくらなんでも仲良すぎだもんな!」「そうだと思った」「もう手とか繋いだのかな」「馬鹿そんなの余裕だろ。それより、もっと凄いことを……」「え~、天満くん狙ってたのにぃ」「ショック~」




 ちょ、ええッ!?



 な、なんでバレたんだ……!?

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