第35話 ギャル風紀委員長から告白!?

 遥は、明日には退院できるようだった。なんて驚異的な回復力――いや、頭だ。


 病室を出ると遥パパがいた。



「遙くん、帰りは送ろう」

「いや、大丈夫ですよ。歩いて帰れますし」

「そうかね。その……なんだ。遙くん。これからも遥を頼むよ」

「はい、任せて下さい」



 別れを告げ、俺は病院を出た。



 * * *



 外へ出ると『ライン』が入った。

 遥からだ。



 遥:今日はありがとね、遙くん


 俺:気にすんな。明日には帰ってこれるんだろう?


 遥:うん。寂しいけど、マンションで待ってて


 俺:ああ、明日は迎えに行くよ


 遥:大丈夫。パパが送迎してくれるっさ


 俺:それならいいか。分かった、待ってるよ



 スタンプも添えて、俺は一度スマホをポケットへ閉まった。


 外はすっかり夜。

 ひとりで行動するなんて、いつ振りだろう。いつも隣には必ず遥がいた。けれど、今はひとりぼっち。


 なんだか昔に戻った気分だ。


 マンションへ戻り、いつもの生活をはじめる。と、言っても遥はいない。寂しいなあ



「まずは風呂でも入るか」



 脱衣所へ向かう。

 扉をあけると、遥の下着が転がっていた。……って、うわッ! 遥のヤツ、なんで放置しているんだよ……!


 さすがに散乱させておくわけにはいかない。俺は、それを素手で掴み、拾ってカゴへ入れておいた。くぅ、なんだかヘンな気分になるな。


 シャワーを浴び、風呂を出るとスマホが鳴った。親父からだ。



「どうした、親父」

『おう、遙か。聞いたぞ、大変だったんだな』

「ああ、テロ事件に巻き込まれた」


『はあ? なに言ってんだお前』


「信じてくれ、本当だ。ニュース見たろ、公園で爆発騒ぎのヤツ」


『あ~! あれか、あれって遙、お前だったのか』


「違う元校長の奥村の仕業だ。俺は、地域を守ったんだぞ」

『なるほどな。お前は昔からトラブルに巻き込まれやすい体質だったしな』



 認めたくはないけど、その通り。これは運命かな。けど、おかげで遥とは出会えたし、結婚に関してはとても運が良かった。幸せしかない。



「とにかく、こっちは無事だ」

『そうか、それは良かったが、一度お祓いでも行った方がいいかもな』

「そうするよ。それじゃ、切る。おやすみ」

『うむ。また何か困ったことがあったら言ってくれ』



 親父との通信が切れた。

 一応、心配してくれたんだな。



 その後、俺はカップラーメンを作って晩飯を済ませた。スマホで世界情勢を巡っていると、あっと言う間に深夜。俺はいつの間にか眠ってしまっていた。



 ――翌朝。


 学生服に着替え、ひとまずは当校。午後に早退してマンションへ帰ることにした。午前中はおそらく、まだ検査とかあるだろうしな。



 いつもの通学路を行く。

 ひとりぼっちって寂しいなあ。


 などと哀愁を感じていると、背後から呼ぶ声がした。



「天満くん」

「……ん? って、風紀委員長」

「あ~、そうでした。あたしの事は名前で呼んで。こっちは遙くんって呼ぶので」


「じゃ、じゃあ……椎名。なにか用?」

「遙くん、珍しくひとりですよね」

「あ、ああー…、昨日いろいろあってな。遥が入院中なんだ」


「昨日の事件、関係あったり?」


「昨日、椎名が戻ってから遥は足を滑らせて階段から落ちたんだ。軽い脳震盪のうしんとうだった。でも、もう大丈夫だ。遥は今日にでも帰ってくる」

「良かったです。小桜さん、復帰できるんですね」


「うん。だからもう安心してくれ」



 椎名もホッとしていた。

 どうやら心配してくれていたみたいだな。



「それでは、学校まで一緒に歩きましょう。どのみち、一緒の学校ですし」

「そ、そうだな。いいけど」


「ありがとうございます」


 はじめて椎名と登校するな。相変わらず金髪ギャルだけど、口調は敬語で大人しいっていうか。あんまりギャルっぽくはないんだよな。ちょっと背伸びしている感じ。でも、そのギャップが良い。



「ところで、椎名はなんでギャルしてるの? 風紀委員長なのにさ。お手本となる人物が、それでいいのか?」


「うちの学校の校則は結構緩いですからね。実は、女子は染めてる子も多いですよ。ほら、あそこの子とか栗色ですし」



 確かに、そう言われると見渡す限り茶髪とか金髪もちらほら。そういう時代かね。



「まあ、風紀委員長が良い言うならいいのか」

「はい、大丈夫ですよ~」

「なるほど」

「ところで遙くん」

「ん?」


「遙くんは、ギャルは好みですか?」

「好きか嫌いかで言えば、好きだけどね。意外に優しいみたいだし。少なくとも椎名とは話しやすい」

「うんうん」

「最近、ギャル人気も少し上昇中だし、まあ、ぶっちゃけアリだよな」

「素晴らしい。では、あたしと付き合いましょう」


「は!?」



 突然の告白……?

 マジ?


 いやいや、でも俺には遥がいるからな。結婚しているんだ。無理なものは無理だ。だが、椎名は強かった。



「あ~、小桜さんのことは気にしなくて大丈夫です。これでも、あたしって口は堅いんです。秘密にしておきますし、ナイショで付き合ってくれていいですよ。ていうか、付き合わなくてもいいです。えっちな関係とかでも構いません」



 そ、それは、つまりアレなフレンドってわけか!? 風紀委員長なのに、風紀乱れすぎだろう!!

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