第15話 校長、暴行容疑で逮捕

 ブチギレた校長は、教頭の胸倉を掴み拳を振り上げた。頬に強烈な一撃を入れてしまい、大柳教頭の体が吹き飛び、床へ転げ回った。


 いくらなんでも、やりすぎだ!

 俺は直ぐに教頭の元へ。


「教頭先生!」

「……手を出した以上、校長先生はもう終わりです。天満くん、直ぐに警察を呼んでください」


「わ、分かりました!」



 スマホを取り出そうとすると、発狂した校長が通報の妨害をしてきた。



「天満くん、君はもう退学だ!!」



 まだそんな寝惚けた事を言っているのか。教頭を殴っておいて問題にならないとでも思っているのか? そう思っているのなら、大間違いだ。



「元校長先生、もう貴方にそんな権限ないでしょ!」

「天満くんの言う通りです。暴力はよくないですよ」


 遥も一緒になって抗議してくれる。

 しかし、それでも校長は抵抗を続けた。往生際が悪い。けど、そこで事態は急変。校長室に爺ちゃんと警察官が現れた。



「待たせたな、遙!」

「じ、爺ちゃん!!」

「こんなこともあろうかと、知り合いの刑事デカに頼んで警察を呼んでおいた。どうやら、教頭先生が殴られたようだな」


「ああ、そうなんだ。これは立派な暴行罪だ」



 警察官は、現場を直ぐに把握はあく

 奥村校長を現行犯逮捕した。



「ち、違う!! 私ではない!! そこの天満という学生が殴ったんだ!!」



 悪あがきかよ。

 最後まで面倒な校長だな。

 呆れていると、教頭が俺を擁護してくれた。



「天満くんは殴っていません。奥村校長が私を殴りました」

「大柳! お前というヤツはああああああああああ!! あああああああああああああ!!」



 ついに奥村校長は、暴行の容疑で連行されていった。いや、こうなったら元校長・・・か。これでもう、俺と遥の仲を裂こうとする者はいなくなった。



 * * *



 あの事件から三十分後。

 事情聴取を受けた。

 事実を包み隠さず全て警察に話した。


 証拠もあったおかげか、校長は確実に起訴されるだろうというオチとなった。……良かった、もうあんなトラブルは勘弁だ。



 ちなみに、校長のスマホから俺ではなく、遥を尾行して盗撮するような動画や写真が多数発見された。また、お見せできないような写真も多数出てきたという。酷いな。


 さらに、昨晩の『知恵袋』の書き込み――ブンブンさんは、奥村校長だったことが発覚した。あの『そんなもんは投げ捨てろ!』と書き込んでいたのは校長だったのか。



 大柳教頭と爺ちゃんには感謝だな。あの二人が大親友でなければ、俺たちは詰んでいたかもしれない。                  



 それから、授業に出る気分でもなくなり、遥と共に屋上へ。



「大変だったね、遙くん」

「そうだな、すげぇ疲れた」



 手も足もクタクタだ。

 脱力して柵へ背中を預けた。

 隣に遥も座ってくる。

 距離が近いせいか良い匂いがして、俺の不安を取り除いてくれた。遥は、なんだか上品な香水を薄っすら使っているようだな。



「これから校長先生、どうなるんだろうね」

「警察沙汰になってしまったからな。校長は辞職か懲戒解雇とかじゃないか?」



 学校のトップが暴力を振るったとなれば、さすがに大問題。もう奥村は終わりだろう。ストーカーに暴力。これだけやらかしたんだ、ニュースになってもおかしくない。裁判にもなるかもな。



「仕方ないよね。でも、これで遙くんと一緒に学生生活を送れる」



 遥は、嬉しそうに頭を預けてくる。

 唐突とうとつなスキンシップに、俺は心臓がドキドキする。……屋上で二人きり、こうして身を寄せられるとか、嬉しすぎて幸せだ。


 遥の小さな頭が目の前に。

 綺麗な髪が風でゆらゆら揺れる。

 きめ細かな白い肌がモチモチ。


 近くで見ると、また違った魅力があった。



「退学にならなくて本当に良かった。遥と思い出をいっぱい作りたいし」

「うん。そうだね、学生でしか出来ないこともあるもんね」


 そう言いながら遥は、制服のブラウスのボタンを外していく。今日は結構暑いしな。七月だし。しかし胸元が大胆にはだけているような。


「遥、その……胸が見えそうだぞ」

「遙くん、学生でしか出来ないこと、する?」

「え……」

「制服のまま出来るの、今の内なんだよ」



 ま、まさか制服えっち!?

 確かに学生限定だ。

 卒業してからは、ただのコスプレ。

 リアルではない。


 だから、俺は……そうか、いいんだよな。だって、遥は俺の嫁なんだから。遥もそれ・・を望んでいるってことだよな。


 今、学校は授業中。

 屋上に誰も来ないし、俺と遥の二人きり。するなら、今しかない。


 だが、俺はまだ肝心な儀式を進めていなかった。



「その、遥。これをまだ渡していなかったな」



 俺はポケットから小箱を取り出し、蓋を開けた。中から『結婚指輪』が出てくる。それを見た遥は、嬉しそうに涙をぽろぽろ流していた。


「遙くん、これ……結婚指輪?」

「そ、その通りだ。遥、その、俺たちまだ数日の関係だけど……でも、日に日に気持ちが高まっているんだ」


 あぁ、くそ……緊張してきた。

 ここから先、なんて言えばいい。


 手足が震え、頭が真っ白になってきた。



「うん、わたしも同じ気持ち。でも、結婚からはじまっているから……まだ分からないことも多い。でも一緒に生活しているし、結構早いスピードでお互いを理解できていると思う。わたしと遙くん、相性バッチリじゃないかな」



 趣味とか特技、嗜好しこうとか好きな旅先とか、遥のことをもっと知りたい。俺のことも知って欲しい。


 ああ、そうだ。

 まだ、はじまったばかりじゃないか。


 ここがようやく、スタートラインだ。


 結婚から始まる恋物語なんだ。



「遥、その……結婚はしてるけど、でもまだ本当の意味では結ばれていないと思うんだ。だから、この指輪をめるよ。遥が俺のことを好き好き大好きって言ってくれるくらい、俺は努力して良い男になるよ」


「あはは、なにそれ。遙くんのこと、好きだよ。大好き。言ったでしょ、そうじゃなかったら一緒に生活しないって」


 遥は、もう俺の望みを叶えてくれた。早いな! なら、あとは指輪だけだ。俺は、万感の思いを込めて――遥の左手薬指へそっとめた。



***おねがい***

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