偽善人

モノサイト

プロローグ:夜明けに思う





....この世とは、悪人の集合だ。


俗に善人と言われる人間たちだって、その行いの根底には、所詮自己満足しかない。そいつらが善人と言われている理由は、単なる利害の一致か、はたまた、子供たちを有用な道具に育て上げたい大人たちの策だ。


人が為す善。即ち偽善だ。








不幸は良い。

その中にあってこそ、その人の本性を見られるから。くだらない飾りが脱ぎ捨てられ、一個のヒトとしてのその人が見える。


だから私は、不幸を嗤う。





...目を覚ますと、外はもう明るくなり始めていた。三月も終わり、まだ空気は肌を逆立たせるくらいに冷たいが、重たいまぶたにあたる赤い光が、わずかに開いた目をこじ開ける。一つ、大きく伸びをした。


そして私は、ため息をつく。

今日もまた一日、この大嫌いな人間を、生かさなくてはいけないことに。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る