第10話 悪魔の棲む教会?
昼食は街でも美味しいと有名なカフェに入った。
並んだけれど早めに出たから12時ごろにはテーブルにつけた。
席に着くとコルネさんは周りを見渡した。
「しかしすごい人だねえ…、ほんとに人気なんだ」
「う、うん、でも私一回来たことあってねすごく美味しかったからコルネさんにも食べて欲しくて…」
「そうなの?ふふ、楽しみだなあ」
メニューを開くコルネさんを私はちらりと見た。
ずっと神父服のような服を着ていたコルネさんが私服を着てる。
違和感ってゆうかなんてゆうか…、不思議な感じ…。
「あ、あの、今日は私服なんだね」
「ああ、祓魔師学校の制服は目立つでしょ?」
コルネさんはにっこり笑うと答えてくれる。
「たしかに目立つかも…?」
「アレは耐魔性があるからなるべくなら着ておきたいんだけど、ココは小さな街だし毎週来てるなら他人となるべく関わらないようにしててもエルちゃんも顔見知りくらいはいるでしょ?」
「うん、少しだけ…」
「あんまり、
「え…」
「交代制じゃなくて一人担当決めようと思ったのも毎日三人や四人とか、違う人といたら変に思われるかなって思ったからなんだ」
そこまで考えてくれてるんだ…。
「あっ、でも大丈夫だよ。銃は持ってきてるし耐魔性のあるブレスレットもしてるから!ね!」
「…ありがとうコルネさん」
「お礼を言われることじゃないよ~。ほら、早く注文しよ。どれがおススメなの?」
コルネさんが広げていたメニューをこっちに向けてくれた。
「あ…、一回来ただけだからなあ…、前に食べたのはサンドイッチだけど」
「おススメはオムライスだよ…」
斜め下から控えめな声が飛んできた。
びっくりして声のほうを向くと、白い髪に真っ赤な瞳の美少年が立っていた。カフェの制服を着てる。
「店員さん…?」
「うん、そうボク…ココの店員…。ボクのおススメはオムライス…料理はお姉ちゃんともう一人で作ってる。オムライスはお姉ちゃんの担当、おいしい」
「そうなの?きみのお姉さんが作ってるんだ…?」
「じゃあオムライスにしようか」
コルネさんが少年と私のやり取りを見てクスッと笑うとそう言った。私はコルネさんの言葉に頷く。
「うん、オムライスふたつ」
「オムライスふたつ…。飲み物は…?」
「私は…えっと、りんごジュース…」
「僕はコーヒーで」
私たちが言った注文を少年は黙ってメモしていく。
その姿は一生懸命で可愛らしい。
「分かった。……お姉ちゃんたち、デート?」
少年がじっと私たちを純粋な瞳で見つめる。
デート、という単語にカッと顔が熱くなった。
「「えっ」」
私とコルネさんがそう声を上げたのは同時だった。
その私たちの反応を見て少年は不思議そうに首を傾げる。
「違うの?」
「ち、違うよ!?」
思わず悲鳴のような声を上げた。少年は大きな瞳をぱちくりさせる。
「そうなの…?おにあいなのに…」
「お、おにあい!?」
今度はコルネさんが叫んで少し赤くなった。あわあわと両手を振っている。
「そんな、そんなことないよ…!?」
「そうなの…?あ、ごめんね、すぐ品物持ってくるね」
少年はそう言うとたたたっとその場を離れる。
少年が居なくなると私たちの間には沈黙が流れた。
「………………」
なんか変な空気に…!!!
なんだか冷や汗をかいている。するとコルネさんが申し訳なさそうに頰を掻いた。
「ごめんね、僕とデートとかおにあいとか迷惑だよね」
「えっ、いや、…あの、むしろ嬉しいかなって…」
つい、そう口にしていた。コルネさんがびっくりして目を丸くするけれど、私自身もびっくりしている。
なんか変なこと言っちゃった…!
「えっ…?」
「あっ、その、コルネさんみたいな素敵な人とおにあいって言われて嬉しい…っていうか…っ…」
驚くコルネさんに慌てて言い訳しようとして、余計におかしなことを言ってしまった。
それにコルネさんがまた少しだけ赤くなった。
「そ、そっか、その、ありがとう…」
「い、いえ…、むしろ、コルネさんが迷惑じゃないかなってくらいで…」
私は目を伏せた、恥ずかしくて顔が見れない。
少ししてからそっとコルネさんを見上げるとコルネさんは優しく微笑んだ。
「迷惑じゃないよ。全然。エルちゃんみたいな可愛い子とお似合いなんて光栄だもの」
コルネさんが少し恥ずかしそうに爽やかにそう言った。
たらしだ!天然たらしだ…!!さらっと言えちゃうんだ…!
「そ、そっか…それならよかった…」
「うん」
なんか、恥ずかしいから話を逸らそう…!
「さ、さっきの店員さん、小さかったね…何歳くらいかな…」
「ああ、確かに?12歳くらいかな…?家族経営でアルバイト雇ってるカフェなのかもね」
ちょっと無理矢理だけれど上手く方向転換ができた。
コルネさんは無理矢理話題を変えたのに気付いたのか気付かなかった分からないけれど、クスッと笑った。
「そうかも…」
お姉ちゃんって言ってたしね。家族経営なら納得できる。確かにアットホームな雰囲気のあるカフェだ。
「おまたせしました…」
さっきの少年がオムライスと飲み物を運んできてくれて、飲み物と食事をテーブルに置いた。
「あ…、ありがとう」
「オムライスふたつとりんごジュースとコーヒー…以上で大丈夫…?ですか…」
「うん、大丈夫だよ」
「ごゆっくり…」
「うん、ありがと…う…?」
去るのかと思った少年は何故かじっと私を見つめている。
「どうしたの?まだ何か…?」
「お姉ちゃん、街はずれの教会によく行くでしょ…」
「?うん…」
街はずれの教会、といえばフロスト神父のところしかない。
「僕もよく行く…。あそこには、あくまが住んでるから気をつけてね…」
「えっ、悪魔って」
聞き返す間もなく少年はお辞儀をすると、他の席に注文を取りに行ってしまった。
「悪魔が住んでる…?」
「……どういうことだ?」
私が首を傾げると、コルネさんも首を傾げる。
教会に悪魔が住んでるなんて、そんな考えられないこと…。
そのあとその子に話しかけようと試みるも忙しくて話しかけられるわけもなく、注文をするていで呼んでみても他の店員さんが来てしまって、結局分からずじまいで店を出ることになってしまった。
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