第5話 敵を観察する僕

 真一お前はなんか失敗しろ!

 僕は念じた。

 

 僕は性格が悪かったんだな。

 しかし仕方あるまい。

 僕が好きな姉ちゃんだぞ。

 簡単にお前にやるものか。


 この真一って男はなんかむかつく。

 僕の10個も年上で仕事はお堅そうでしっかり稼いでそうだ。

 イケメンで落ち着いた雰囲気。

 いかにも好青年。

 反則だろ!

 こんな奴世間一般にいたのか。

 芸能人でも王子様でもロボットでもない。

 こういう奴は世の男のためにさっさと結婚しとけ。

 よりによってうちの姉ちゃんの彼氏におさまるなんざお父さんが許しても僕が許さん。


 お父さんは届いた寿司を食べながら泣き出した。


 だめだ。

 お酒が入ると泣き出すお父さんは戦線離脱だ。

 

 姉ちゃんは今日は好きなお酒を飲まない。

 この一大イベントを絶対に失敗したくないから。


 お酒を飲むお父さんと真一を羨ましそうに見てはいるが。


 僕は愛想笑いをし、姉ちゃんの為に(真一の為じゃない)その場に何事も起きないように見守った。


 お父さんが姉ちゃんの恥ずかしい話とかしないようにとか。

 この場の誰もが緊張していたせいで沈黙が続きすぎないように話題を振ったりした。


 僕は何してるんだ?

 はあ、疲れた。

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