第5話・閑話 私のお姉ちゃん
私のお姉ちゃんのリット・リターンズは、頭が少しおかしい。
尊敬出来る点…
1.料理が出来て、どんな材料でも驚くほどの料理が出来る事。
2.スターンズ家のお財布担当で、贅沢は罪という考え。 だけど、どうしても欲しい物があれば融通は効く。
3.家事は万能で、毎日お掃除は欠かさない。 見えない所まで綺麗になっている。
ここまでは尊敬出来る所なんだけど…
尊敬出来ない…というか、異常な行動としか思えない時がある。
それは…?
お兄ちゃんの事を好きすぎるという点だった。
・・・・・・?
別に私もロットもお兄ちゃんは嫌いじゃありませんよ?
寧ろ好きで大好きです。
だってお兄ちゃんは…冒険者になってから、英雄の称号を手に入れるまでに1日も仕事を休まなかった。
晴れの日でも、雨の日でも、嵐の日でも仕事を休む事は無かった。
「お兄ちゃん、今日くらい休んだら?」
そう聞いたら…?
「日々食べる分しか稼げないから仕事を休む訳にはいかな…うちは余裕がある訳じゃないしね。」
…と言っていた。
更に、パンの耳やクズ野菜が手に入らない時は…私達がお腹を空かない様に自分の御飯を渡してくれた。
あとで見たら、お兄ちゃんは水を飲んで飢えを凌いでいた。
そんなお兄ちゃんが嫌いな訳がない!
その翌日から、私もルットも服飾の仕事を始めたのだった。
少しでも家計を助ける為だった…んだけど、稼いでいたお金は材料費に消えてばかりで家計を助ける事は出来なかった。
暫くしてから、私やロットの作った物の品物が売れる様になった。
これで生活の足しになると喜んでいたら、お兄ちゃんが魔獣を討伐して【英雄】という称号を得たのだった。
それからは生活が一変して、私達は人並みの生活を送る事が出来る様になった。
その頃から…お姉ちゃんがお兄ちゃんに対する意識が変わっていたのを感じた。
今迄だと、仕事から帰って来たお兄ちゃんを労ったりして料理を作っているだけだった。
でも…それらは変わってないんだけど、お姉ちゃんはお兄ちゃんの日々の疲れを癒す為にマッサージをする様になった。
ここまでならね………
初めから1週間は、服の上からのマッサージだったんだけど、次の週からお兄ちゃんの服を脱がせてマッサージをしようとした。
さすがにお兄ちゃんはそれを嫌がって、マッサージを拒否した。
そしてお姉ちゃんがおかしくなったのはこの時に発覚した。
「お兄ちゃんと男女の関係になれば、より深い所のマッサージも出来るよね⁉」
私は、その話を聞いて唖然としていた。
ロットはどうかは知らないけど、私のお客様の中には…風俗街のお姉様達がいる。
そのお姉様達と話してをしている所為か、男女の関係という意味は何となく分かる。
だが、当のお姉ちゃんはその事を理解しているのかが怪しい…?
でもその数日間は、何事も無く終わった。
お姉ちゃんの誕生日が1週間後に迫っていた時だった。
「ルット…透けている服って作れる?」
「へ…?」
マジックビロードという布材を使えば、月あかりを浴びると服が透けるという物はある。
風俗街の娼館のお姉様の依頼で作った事はある…んだけど。
ヤバい…このお姉ちゃんは本気だ!
私は一応作ってあげる事にした…けど、いつ使うんだろう?
1週間後に服は完成した。
それをお姉ちゃんに渡すと、お姉ちゃんは袖を通した。
「お姉ちゃん…それをどうするの?」
「多分お兄ちゃんは、仕事の事で私の誕生日のプレゼントは忘れていると思うから、プレゼントのおねだりに一緒に寝るという事をお願いするの。 ところで似合うかな?」
正直言って、娼館のお姉様の中の…ハーフウットのお姉様と大差がなかった。
質問の内容が「似合う?」…だから良かったけど、「私セクシー?」とか聞かれたらどう答えれば良いか解らなかった。
もう…作戦とかという全ての話を聞かなくても、その時に事に及ぶという事が解った。
そしてお姉ちゃんの誕生日の夜…お姉ちゃんがお兄ちゃんに一緒に寝たいという話をしたら、お兄ちゃんはOKした。
お兄ちゃんが部屋に入って行くと、お姉ちゃんはあの服に着替えてから、親指を出してジェスチャーした。
私と意味が解っていなかったロットは、親指を出してジェスチャーをし返した。
そしてお姉ちゃんは、お兄ちゃんの部屋に入って行った。
まぁ、お姉ちゃんはあんなだけど、お兄ちゃんは分別が出来るので一線を越える様な事は無いと思う。
そして翌日…
私はお姉ちゃんから報告を受けた。
「お兄ちゃんにね、好きだって告白をしたの! でもね…僕も好きだよ~って普通に返されたの。」
良かった…お兄ちゃんは、妹の対応の仕方が分かっていた。
だが更にお姉ちゃんは、とんでもない事を言い出した。
「お兄ちゃんの頬にキスしたり、首筋にキスしてから擦り寄っても反応が無くてね…頬を軽く噛んだりしても反応が無いの。 お兄ちゃんはきっと、女の子に対して興味が無いんだわ!」
お兄ちゃん的には、普通に妹が甘えて来たり…妹としてしか見てないからそんな反応だったと思うんだけど?
お姉ちゃんはその事に気付かないのかな?
「次は媚薬を手に入れて…お兄ちゃんの料理に入れてその気にさせて見せるわ‼」
「へぇ…頑張ってぇ。」
私はそう返事した。
もう…このお姉ちゃんは止められない。
私はお姉ちゃんの無駄な作戦を止めなかった。
何で無駄なのか?
媚薬は、成人を過ぎた男性や女性に効果があっても成人以下の子供には全く効果が無いからだった。
この頭のおかしいお姉ちゃんをどうしたら良いのかな?
そしていつになったら、自分がおかしな事をしていると気付くのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます