第3話 テッドの戦い方…(かなり卑怯な方法だけど、怒らないであげて)

 確かにねぇ…強い魔物を要求したよ。

 だからといって、何で魔王軍の幹部が来るんだよ…?

 それにこの威圧感…明らかにヴァルギスタイガーより強いだろ?

 こっちは…今日戦闘初な妹が2人居るのに、こんなのと戦わせる訳にはいかないし…

 さて、どうすれば良いかな?

 僕は試しに…無駄かもしれないけど聞いてみた。


 「魔王軍の幹部の方…そういえば、名前なんだっけ?」

 『我の名は、フェルスリーヴァだ!』

 「実は…4人で戦いたい所なんですが、2人の妹は今日が初めての戦いだったので戦力になるか…?」

 『むぅ? 確かに…初戦の者が2人もいれば、本領発揮は期待出来そうもないな!』


 あ…この流れは良い兆候だな?

 このままいけば…戦闘は回避出来るかな?


 「なので…日を改めて再戦というのはどうでしょうか?」

 『なら…お前1人で我に挑めば良いだろう? 魔剣シーズニングの持ち主よ…』

 「この剣の事をさっきから指摘していますけど…これってそんなに凄い剣なのですか?」

 『なんと⁉ その魔剣シーズニングの力を知らぬというのか?』

 「はい、全く…僕も前回の…ヴァルギスタイガーとの戦いで初めて使ったので…」


 勿論、大嘘である。

 だけど、その時の状況を知らないフェルスリーヴァは、考え込んでいた。


 『確かに…その剣は完全体では無いな。 完全体の時の凄まじい力を感じぬ。』

 「完全体? この剣はこれで完全では無いのですか?」

 『その剣の鍔の所に宝石があるだろ? その横に左右2つずつの宝石をはめ込んで完全体となるのだ!』

 「つまり、この1つしか宝石がはまってない状態では、初期段階という事ですね?」


 この剣の鍔には、確かに中心にひし形の宝石がはまっている。

 だけど、その横にはめ込められる様な穴は無い。

 …というか、そもそも魔王軍の幹部は何故この魔剣シーズニングの事に詳しいんだろう?


 「あのフェルスリーヴァさん、貴方は何故この魔剣シーズニングの事が詳しいんですか?」

 『そこから話さないといけないのか? 前魔王はこの魔剣シーズニングでザイリンドーガを討たれたのだ! その者は勇者でもないただの人間にな…』

 「あれ? 変だな…? 魔王ザイリンドーガを倒したのは、4つの種族の勇者が倒した事になっているけど?」

 『実際は、勇者の紋章を持たぬ人間が魔剣シーズニングをその他の3人が勇者の紋章を持った勇者だったのだ。』

 「あれ? では、4人の勇者って…?」

 『恐らく…魔王ザイリンドーガを倒した事によりそう伝わったのだろう…そして現魔王のヴァルサリンガ様は、魔剣シーズニングを見つけ出してから封印したはず…だったのだが?』

 

 それを父さんが遺跡探査中で発見して、持ち帰ったという事か…

 なら、この魔剣シーズニングにはめ込まれていた4つの宝石は何処に行ったのかな?


 「この魔剣シーズニングに嵌っていた宝石は何処に行ったのですか?」

 『それはな…って、言えるか! 危ない危ない…』


 フェルスリーヴァは、必死に口を閉ざそうとしていた。

 だが、時々何かを話している節が見受けられた。

 なんか変だな?

 では、質問を変えてみよう。


 「魔王軍の幹部達は、魔王ヴァルサリンガと同じ故郷の出身なんですか?」

 『我らは違う! 元はこの世界に生きる魔獣で、魔王ヴァルサリンガ様との契約により…この姿と力を得たのだ!』

 「ちなみに契約って何ですか?」

 『契約の方法はそれぞれ違うが、我の場合は偽りを口にせずという事を条件に得た力なのだ。』

 「なるほどなるほど…では、魔剣シーズニングにはめ込まれていた宝石はどこにあるんですか?」

 『それはそれぞれの魔王の幹部達の持つ武具にはめ込まれて…って、あぁ!』


 ということは…ヴァルギスタイガーが使っていた斧の中心にあった宝石が魔剣シーズニングにはめ込まれていたという宝石か…

 僕はマジックバックからヴァルギスタイガーが使っていた斧を取り出して、中心にある宝石を取り外してから魔剣シーズニングに近付けた。


 『貴様…何故、ヴァルギスタイガーの斧を持っている⁉』

 「何かの役に立つかと思ってギルマスに借りて置いたw とすると…貴方も持っているんですよね?」

 

 魔剣シーズニングに近付けた宝石は、鍔の中心の横の場所に嵌った。

 すると…魔剣シーズニングに何やら強い力を感じたのだった。


 『貴様…我が話すと…』

 「嘘が付けないんですよね? どこですか?」

 『それは、我のサークレットに…って貴様! もう、何を聞かれても話さんぞ‼』

 「では、他の幹部の特徴を…」

 『だから話さぬと…海の海獣と大地の魔獣だ! くそぅ…』

 

 何とも間抜けな爺さんだな…嘘が付けないからって馬鹿正直に話すなんてw

 それだけだと特徴としては解らないけど、フェルスリーヴァが空に関係する物ならば、陸・海・空という事になるな。

 だったら、ミノタウロスのヴァルギスタイガー何系だったんだろ?

 そんな事を考えていたら、フェルスリーヴァは突然怒り出した。


 『貴様の口車に乗ってベラベラと喋り過ぎてしまったが、貴様達を始末すれば済む事だ!』

 「逆に、今撤退して今後僕に近付かなければ…魔剣シーズニングは完全体にはならないと思うよ?」

 『う…うぅむ…?』


 フェルスリーヴァは何やら考え込んでいた。

 僕はこの隙に妹達の所に行くと、ルットとロットに尋ねてみた。


 「ロット、さっき休憩中にやった結界は、アイツにも張れる?」

 「多分、出来ると思うけど?」

 「奴を飛び立てない様にする為に、合図したらお願い! あと、ルット…さっき地面を破壊した爆発系の魔法ってもっと威力の高い物はある?」

 「エクスプロージョンがあるけど…本気でやったら、さっきの比じゃないよ?」

 「その為にロットに結界をお願いしたんだよ。 結界の中に最大威力のエクスプロージョンを叩き込んで!」

 「解ったけど…どうなっても知らないよ?」

 「大丈夫だ! お兄ちゃんを信じろ!」


 正直、フェルスリーヴァがどうなろうと知ったこっちゃない!

 僕は考え込んで油断をしているフェルスリーヴァに、ロットに合図をして結界を張って貰った。

 まだ気づいている様子が無かったので、ルットに合図をしてエクスプロージョンを放って貰った。

 狭い結界の中で大爆発が起きると…?


 『ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 貴様…不意打ちにしてはこの魔法はズルいぞ‼』

 「ちっ…生きていたか!」


 ロットは結界の維持、ルットの爆発魔法の使用で、2人共疲れたみたく地面に座り込んでいた。

 フェルスリーヴァを見ると、全身白い羽が黒く焦げ付いていて、片方の翼が消失していた。

 これで、空を飛ぶ事は無いと思った。


 『貴様…戦いの合図も出てない内に攻撃を仕掛けるとは…? 戦士の風上にも置けぬ‼』

 「人間の子供が魔王軍の幹部クラスは勝つには、こういった手を使わないと…それに僕は、戦士じゃないもん!」

 

 僕はこっそりリットに合図を出した。


 『それにこの威力…そこの娘達は本当に今日が初だったのか⁉』

 「そうだよ~! 僕もビックリ〜w」

 『どこまでも我をコケにする様な発言ばかりしおって…良かろう、本気で相手をしてやる‼』

 「その、片方しかない翼で? 空中戦はもう無理だよね?」

 『ふ…馬鹿にするな! 片方の翼でも飛ぶには問題…ぐあっ!』

 

 話をしている内に、リットが背後に回ってもう片方の翼の先端を斬り落とした。

 そして2撃目を入れようとした瞬間に、フェルスリーヴァは空に飛びあがった。

 だが、翼が不安定な所為か…バランスを保っていなかった。


 「ルット、風魔法は使える?」

 「もう魔力が残り少ないけど、威力が弱い物なら…」

 「リット、ヤツを落とすから攻撃を合わせて!」

 「どうやるのかは分からないけど、わかった!」


 ルットはトルネードの魔法をフェルスリーヴァに放った。


 『これは何の真似だ? 風魔将軍である我に風魔法は効かぬぞ‼』

 「これだけならね…性質変化、胡椒・マスタード・ハバネロ・ジョロキア・山葵・山椒・花椒・ビネガーを粉末に変化! 複種合成…香辛料フルバースト‼」


 ルットの巻き起こる風魔法に8種類の香辛料の粉末を合わせて放った。

 フェルスリーヴァはそれらの粉末を吸い込んだのか…酷い勢いで蒸せ始めて地面に墜落した。

 墜落した後でも、酷く蒸せながらゲホゲホと酷い咳をしていた。


 《条件が満たされました! マーベラス調味料に新たな複合香辛料が追加されます! カイエンペッパー、デスソースが追加されました!》


 マーベラス調味料って、特定の香辛料を使用すると覚えるのか…

 カイエンペッパーというのは解らないけど、デスソースって…名前からして、どう聞いてもヤバい香辛料というのは解る。

 僕は魔剣シーズニングを抜いてから、デスソースセイバーと唱えた。

 更に濃度上昇を使用すると、刀身から放たれた匂いで僕まで咳き込みそうになった。


 『貴様…やはり、魔剣シーズニングを使う者ではあるな! やり方が以前の所有者と変わらん‼』

 

 フェルスリーヴァは、かなり嘔吐をして体の中から複種合成で作った香辛料を吐き出した。

 そして立ち上がって、こちらに向かって構えを取っていた。


 「随分弱っているね、大丈夫?」

 『ふ…これしきの事で我は…』

 「カイエンペッパー‼」

 

 呼吸をしながら話をしているフェルスリーヴァにカイエンペッパーを放つと、またその粉末を吸い込んで酷く蒸せて咳をしていた。

 それも…先程の比ではない程の咳き込みだった。

 

 「カイエンペッパー…ヤバいな! リット!」


 僕はデスソースセイバーを構えて…リットは聖剣グランマルスを構えてから一斉にフェルスリーヴァに飛び込んだ。

 そして蒸せて咳込んでいるフェルスリーヴァの全体を滅多切りにしたのだった。

 すると…フェルスリーヴァは良く解らない叫び声を上げながらのた打ち回っていた。

 まぁ…聖剣グランマルスの攻撃はどうかは解らないけど、明らかにデスソースセイバーの攻撃で苦しんでいる感じだった。


 『貴様…卑怯な手ばかり使いやがって! まともに戦おうとは思わんのか⁉』

 「まともに戦って勝てないと判断したから、こういう戦法になったんだよ! 子供の身体能力を大人と一緒にするな! それと…全てが自分の思い描いた通りになるとは思うなよ‼」

 『この卑怯者が‼ 戦士の戦いを汚しおって‼』

 「僕にそんな戦いを求められてもなぁ…? 生まれ変わったら、そんな戦いが出来る相手を探せば良いさ!」


 僕はフェルスリーヴァの首を落とした。

 すると、サークレット以外の肉体は灰になって消滅したのだった。

 僕はサークレットの中心にある宝石を取ってから、魔剣シーズニングに近付けた。

 すると、宝石がはめ込まれて…また強い力を感じる事が出来たのだった。


 「結局…宝石が増えただけで強い力は感じるけど、何が変わったんだろう?」


 やはり完全体にならないと、変化は見られないのだろうか?

 僕とリットは疲れ果てて座っているルットとロットに手を差し出して立ち上がらせた。

 僕はロットを、リットはルットをおぶって冒険者ギルドに帰ったのだった…が?


 「今回の討伐依頼は失敗ですね?」

 「ですが、2人目の魔王の幹部を倒しました!」

 「わかりました…ギルマスの部屋に案内します。」


 僕達はギルマスの部屋に案内され、ギルマスに2人目の魔王の幹部のサークレットを見せたのだった。

 ギルマスはまた呆れた顔をしていた。

 こうして、ルットとロットの初戦闘は終わった訳だが、僕のレベルは50まで上がり、リットは41まで、2人は26まで上がっていた。


 「また、スキルの確認をしないといけないのか…面倒だなぁ。」


 レベル50になって新たな特殊スキルを覚えたのだが、その話はまた今度ね!


 ・・・・・・・・・一方、魔王城では?・・・・・・・・・


 「ま…魔王様! 目の報告があります!」

 『まさかとは思うが…?』

 「そのまさかです! 風魔将軍フェルスリーヴァ様が、またも魔剣シーズニングの所有者に討たれました。」

 『幹部は残り2名か…次は我が赴いて、その者の力量を測ってやろう!」


 魔王は玉座の間から姿を消したのだった。


 ・・・・・・・・・???・・・・・・・・・


 「やっとついたのが、こんな田舎だとは?」

 「奇遇だな…俺もそう思っていた。」


 2人の知と魔の勇者とそのパーティーは、クレーメルの街に辿り着いたのだった。

 そして、テッド達兄妹と出会う事になるのだが…

  

 その前に次回は、他の者達の閑話になります。

 勇者達と魔王との話は、閑話を挟んだ後に公開します。

 お楽しみに!

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