第3話 準備 〔前編〕

異世界転生して初めての朝だ。

雲一つない快晴!

幸先がいい。

朝食は魚にした。和風に。

美味しいんだよなあこれが。

塩は、名前は違えどこの国にもあるそうだ。

魚の塩焼きをこっちで食べられるなんて思っていなかった。


「全・回・復!」


リーノア

「おー!

明日が決戦の日ですね!

私共も最善を尽くして頂きたいと思っていますので、何か私たちにできるようなことがあれば何なりと申し付けください!

応援しています!」


「あー。転生最高だぁ。

目が覚めたら最強になって、かわいい女の子に応援されるとかまじで俺幸せ者すぎるな~。」


リーノア

「ちょっと何言ってるかわっかんないです。あっははっ!」



守りたいこの笑顔。



今日は、ある程度自分の力について、明日に響かない程度に調べていこうと思っている。


さすがにリーノアにも見られるのは良くないと思うから、どこか人目につかないところを探さないといけないなあ。


「リーノアさんは、この辺りであまり人目につかない場所とか知っていますか?」


リーノア

「うーん。このあたりだとあまりないと思います。

魔術結界ではだめなんですか?」


「・・・あー魔法結界ねーはいはい。そういえば忘れてたやー。」


リーノア

「一応確認なんですけど・・・魔術結界についてご存じですか?」


「・・・」


リーノア

「魔術の基本中の基本の技みたいなものです!

自分の魔術式で自分を覆うことで、術式空間内を外界とは完全に隔離させることができます。

自分の術式の耐久性次第ですが、それによっては中で訓練もできると思いますよ!」


「明日に武道会を控える身で言うのは気が引けるんだけど、魔術についての一切を知らないんだ!

とりあえず一から教えてくれないか?」


リーノア

「私はただの受付嬢なので大した魔術、魔法は使えませんが、私なんかで良ければもちろんです!」


可愛いが過ぎるのに、優しいが過ぎる。


「ありがとう。本当に助かるよ。」


リーノア

「いえいえ、全然気にしないでください!

私も暇なので!

それでは、始めましょう!


それじゃあ、まずは魔術、魔法についてからお話ししようと思います。

このあたりの話は全くご存じない、ということでよろしいですか?」


「恥ずかしながら・・・。」


リーノア

「大丈夫です!私が一から教えるので、任せてください!」


あらやだ惚れそう。


リーノア

「ではまずは、魔法、魔術のそれぞれについて解説していきます!

そもそも、世界にはマナというものが漂っています。

そして、それを使って何かを作ったり、衝撃を与えるのが魔法です。

発動者は魔法発動時に体内に備わった【マナの楔】というものを介して魔法を発生させるのですが、その楔の行使に体力や集中力を必要とします。

一方、魔術はそれらとは大きく異なるもので、この魔という字は、魔人という言葉が由来です。

魔人とは、私たちエルフや、貴方たち人間など、この世の全ての種族の能力を優に凌駕する能力をもつ存在のことです。

その昔、この世界に魔人が存在していてたらしく、その中でも一際優れた能力をもつ魔人が魔人族の長となりました。

しかし、それに納得がいかなかったほかの魔人たちが、ある日大勢で魔人の長を殺害しようとします。

ところが魔人の長はほかの魔人とは比にならない力を持っているので、大勢で襲われても、たった一人でその軍勢と互角かそれ以上の力を発揮します。

ですがその戦いの最中、魔人の長は自分の死後、この魔人たちがこの世界をあってはいけない形にするかもしれないということを危惧し、その場で戦うのを止め、後に生まれる生命に命の危機が訪れた際、それぞれがそれぞれの力でその危機を脱出できるよう、残る全ての力を振り絞って魔法を発動しました。

この時に必要としたマナの量はこの世全てのマナだったと言われています。

この魔法の発動対象が、後世を生きるすべての生命というあまりにも莫大なものでしたので、その反動で魔人の長は灰となり命を落としてしまいます。

しかし、その魔法のおかげで、こうして後世を生きる私たちの体にはその魔人の力の一部が受け継がれている、というわけです。

ちなみに、その魔人の長を襲った魔人たちは同種族間で争いを起こし、結果として全滅してしまいました。

また、その魔人の中には長のことを良く思っていた人たちも多くいたそうですが、彼らは長の墓を作った後、

『我々の長と共に』という言葉を残して自害してしまったと言われています。

このお話は国を問わず有名ですが、ご存じありませんか?」


「いやぁ。ほんと山奥の小さな村で育ったから、外の話とか全然分からないんですよ。

でも、理解はできました。

いい話・・・ってわけでは無いですけど、何かこう、心にジーンとくるものがありますね。」


リーノア

「わかります!私このお話、良くお母さんにしてもらってたんです!」


「・・・でも、なんでその場で全滅させなかったんだろう。

互角以上の力があるのであれば、全滅させればほかの魔人たちが原因の悪事は起きないとおもうんです。」


リーノア

「うーん、そんなに頭が回らなかった、とかですかね?

すいません、私もそのあたりのことは分からないです。

・・・あ、その魔人たちみたいに力でほかの存在を貶めようとするものから守るためなんじゃないですか?」


「・・・確かにそれは一理ありますね。

そもそも、この話は事実なのでしょうか・・・。

ほら、作り話だった、とか。


まあ、僕がするべきなのは他なんですけどね!」


リーノア

「あっははは!

そうですね!私たちは明日に向けて頑張るんですもんね!

それじゃあ、あとはまず実践してみてから考えましょう!」


「そうですね!頑張ります!」


一層やる気が増した。

明日、明後日に向けてできるだけのことはしよう。

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