第13話 一歩

昔から母親との関係は良くないままで

月日は経ちあたしも20歳を迎えた

19歳と20歳とは1年歳をとるだけで

何も変わらない気がしていた

夜の街も16歳からもう4年


何かを変えなきゃ

どうすれば変わる?


周りを見ると夜から足を洗った子

風俗に行った子

子供が出来て辞めた子

夜で生きていくと決めた子


あたしは何にも当てはまらなかった

何になりたい?今更自分に自問自答

夜の街を離れる

何かが変わるかも

家族の温かさがわからないから

温かい家庭が欲しかった

それなら自分で作れる

店では1番長かった事もあり

ママやチーママが居ない時は店を任されていた

ある日ママに相談をし

店を辞める事を伝えた

自分が思う将来の為に今出来る事の一歩

そんな気がした

『いつでも戻っておいで』

ママや常連客に見送られ

夜の世界から足を洗った


ただ、何をしたら良いかわからず

世間一般で言う

【きちんとした仕事】

それを探すことにした

たまたま見つけた求人情報

【未経験OK⠀無資格OK 高卒以上】

とりあえず面接してもらおう

ギリギリ高校だけは出ていたので

ダメで元々そんな気分で受けた先は

県内では割と大きな病院

先ず事務長と名乗る人や堅苦しいスーツを着た男の人3人と話をした

履歴書なんて初めて書いた

何か色々質問をしてくる

テストまであるなんて聞いてない

心の中で【あー落ちたな】

それから30分ほど待つ様に言われ座っていた

次は看護師長と名乗る人が来た

『お疲れ様どうでしたか?』

看護師長は優しい口調で話してきた

あたしは正直にと言うか面接というものがよくわからなかった

『どうでしたか?』の返事が何が正解かわからない

不意に出た言葉は『疲れました。テストもあるんですね』

『まぁ、形だけだから大丈夫よ』

そんな会話をした後看護師長は少し待つように言った

広い会議室みたいな所で待っていた

20分ほどして看護師長は戻ってきた

『早速だけどいつから働けますか?』

『え?』

当日合否決まるんだ

急に【きちんとした仕事】につけた

『来週からなら』

あたしは答えた

『制服合わせに行きましょう』

言われるまま制服をあわせ

ドレス以外の服を着ることになった

なんか不思議


何もかもが初めてで

少し不安な気持ちもあった

でもやるしかない

履歴書の経歴が空白の私が受かる

少しこそばゆいそんな感じの

そんな一歩

面接が終わり一番に祖父母に電話をした

『あのね病院に仕事決まったよ』

夜の街で働いていた時は心配させないように居酒屋のバイトと伝えていた

20歳になったらちゃんと就職するよ

なんて適当に言ってきた言葉が

本当になった

祖父母も長く生きてる

水商売をしていた事などきっとバレてたはずだが否定もされなかった

たまに『ご飯食べてる?』なんて連絡が来てたが後ろめたさもあるし

中々祖父母に会い帰ることも出来ていなかった。

祖母は『凄いねぇおばあちゃんが病気になったら入院出来るねぇよかった』

祖父は無口なのだが電話を代われと祖母に言っていた

祖父が『ぼちぼちやれな人生は長いぞ』

『ありがとう』

数分の電話があたしに力をくれた

それから2年程働いていたある日

看護師長から『看護学校いかないか』

と推薦してもらえた

朝は病院で仕事をし夕方には学校

そんな生活をし無事看護師になれた

振り返ると10年も経っていた


こんな私でも出来るんだ

あの時たまたま見た求人

人生ってわからないもんだ

母はと言うと人伝に聞いたのか

私が看護師になったと聞いたらしく

急に知らない番号から電話が来た

母親だった

開口一番

『人から聞いた今看護師偉くなったね流石私の娘それでね今ちょっと困ってて』

【流石あたしの娘】

引っかかる言葉 吐きそう

イライラした


金の無心は続く

頻繁に電話がなる

『車買って』

『お金貸して』

相変わらずの人だった

想定内の生き方





















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