決意も新たに

 姉上の後始末がすべてが終わって私は自室のベッドでぐったりとしていました。もはや動く気力もなくなるくらいにです。


 ジネット様のお部屋を辞した後、姉上に会いに行くも謹慎中とのことで警護兵に追い返され、ふらつく足で部屋に戻り両親に手紙を出し、教員の方が事情説明のためにいらっしゃったので対応しました。


 更にそれから数日間、私も体調不良ということで室内でじっとしていました。周囲からの好奇の目を避けるためです。


 自室にこもっていた間、会ったのは見舞いに来てくれた両親のみ。そしてそのとき、姉上は実家と縁を切り国外追放されることを知りました。


 両親が去った後、知らされたお沙汰を思い返して私はぽつりと漏らします。


「何考えているの、バカじゃない」


 破滅することなんてわかりきっていたのに、どうしてあんな高位のお三方を手玉に取るようなことをしたの?


 きっと何も考えていなかったのでしょうね。昔から私とは違って妙にモテて何でも許されていたから、今回も大丈夫だと思ったに違いないです。はぁ、ほんとバカ。


 実家に縁を切られて国外でどうやって生きていくのかしら。私には想像もつきません。


 しかし、そこまで考えてとあることに思い至り、顔を青くします。


「モルガンとの婚約はどうなるのでしょう?」


 自分にとってモルガンと婚約していることがあまりにも当たり前でした。ですから、それが解消されてしまうことんなんて考えもしなかったんです。けれど、特大の不祥事を引き起こしてしまった姉上の実家と繋がりたいと思う家なんてありません。


「いくら家族ぐるみで付き合いがあるとはいっても、これでは」


 一度気付いてしまうと不安が膨れるばかりでした。すっかり落ち着きのなくなった私は、いつも待ち合わせ場所にしている樫の木の下へと向かいます。


 時は放課後、いつもの時間帯です。けれど、三日に一度の日とはずれています。会えないだろうなと思いつつも会いたいと思いながら見た樫の木の下には人影が。


 なんという天の采配でしょうか!


「モルガン! ああ、まさか本当にいるなんて!」


「オリアンヌ! 来てくれるとは思わなかった!!」


 王立学校の敷地の端で今一番会いたかった愛しいモルガンと出会えた私は、その胸に飛び込むと感極まって泣きました。抱き留めてくれたモルガンは優しく頭を撫でてくれます。


 しばらく泣いて気分が落ち着くと、私はごく自然にその胸の中で深呼吸を始めました。今一番私に必要なことです。


 泣き止んだと知った愛しい人が囁くように声をかけてくれます。


「落ち着いたかい?」


「ええ、ありがとう。私、姉上の騒動が起きてから不安で仕方なかったから、あなたの姿を見てつい」


「あんなことがあったから当然だよ。僕もすごく心配だったんだ」


「嬉しい! でも、私もう一つ大きな心配事があって」


「それはなんだい?」


「あなたとの婚約のことよ。姉上があんなことをしたものだから、婚約を解消するとあなたのお父様から申しつけられてもおかしくないでしょう?」


 不安そうにモルガンの顔を見上げながら私は胸の内の不安を伝えました。


 すると、私の愛しい人は苦笑いしながら返事をしてくれます。


「そのことなら父上と話をしたよ。確かに最初は婚約を解消する気でいたみたいだけど、僕が説得して思いとどまってもらったんだ」


「まぁ、そんな!」


「僕が長男だったら駄目だったろうね。けど、三男だからまだ我慢してもらえたんだ。今回ほど長男じゃなくて良かったって思ったことはないよ」


「ああ、モルガン!」


 感極まった私はまたモルガンの胸に顔を埋めました。そして当然のように深呼吸をします。ああ、気持ちがとても落ち着きます。


 そんな私を優しく抱いてくれる愛しい婚約者は笑顔で告げてくれます。


「大丈夫、何があっても僕達は一緒だよ。きみの姉さんには悪いけど、こんなことできみを手放したくないんだ」


「私も、私もあなたと離れたくないわ!」


 同じ思いを伝え合った私達はより一層強く抱きしめ合いました。お互いの気持ちが通じ合っているって、なんて素晴らしいのでしょう!


 私は決意も新たに、モルガンと最後まで添い遂げてみせると心に誓いました。絶対に、ぜ~ったいに離れませんからね!

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