第4章 新任警察官、交際

第19話 告白

蔵山警察署に到着した。

まず署長への申告を行い、訓示をいただいた。

その後、貸与品を更衣室の個人ロッカーに収めた。

警察署での各種手続き終了後は、市役所で転入出等の手続きをした後、寮に送迎してもらった。

寮では、荷物を自室に運ぶことから始まった。

私の配属された蔵山警察署は、官舎ではなく単身者用の寮に住むことになっていた。

寮は、ここ最近建替えられたばかりでとても綺麗だった。


私達はシェアルームに入寮した。

シェアルームは3人1室になっており、キッチン・風呂・トイレは共同になっているが、個人の部屋は鍵付きでプライバシーが確保されているものだった。

その日は、片付けをした後、蔵山市内組で飲み会を行った。

(警察組織は滅茶苦茶酒を飲む…。

やはり体育会系のノリだからなのかもしれないが…。

うちの期も例外ではなく、仲が良いことも相まって本当によく酒を飲みに行っていた。)

2〜3次会までしたと思うが、警察学校を卒業した私たちには門限も無ければ就寝時間も決まっていない。

なので、帰り道に酒やつまみを買い、寮で飲み直した。

正直、何時まで飲んでいつ寝たのかよく覚えていない…。


翌朝、起きると半端じゃない二日酔いだった。

携帯を確認するとエミリーからLINEが来ていたので返信した。

よっぽど心配していたのか直ぐに返信が返ってきた。

二日酔いで頭が痛いことを教えると「心配だから電話したい」と返信がきた。

そうして電話をすることになった。

(この頃、エミリーとはよく電話をしていた。

よく電話をしすぎたせいで、ある初任科在校中の同期との飲み会で私が離席中に電話が掛かってきてアキラたちにエミリーの存在がバレるという事件があった。)

エミリーは「もしもし〜、大丈夫?」と心配をしてくれるのだが、とにかく気持ちが悪いので「いや〜頭痛いわ〜、気持ち悪いし〜」と返事をしていると深刻そうな声色で「ごめんね〜、出来るなら隣に行って助けてあげたい」と言ってくれた。

その言葉に私は便乗するように「それだったら助かるわ」と他愛も無い返事をしていたのだが、ふと思った。

「エミリーは俺のことが好きなのか?」

少し前からLINEのスタンプとか文面が変わったなという気はしていたのだが、やはり間違いない。

何となく今までの恋愛経験からそう思った。

それだったら嬉しいなと思う反面会ったこと無いしそれってどうなんだろうか?と言うか組織にどう説明すればいいのだろうか…と二日酔いながらも意外と頭は働いていた。

頭が痛いし、自問自答してもラチが明かないので、単刀直入に聞いてみることにした。

私は「エミリーは好きな人いるの?」と質問をした。

少し間が空いてエミリーは恥ずかしそうに「うん、いるよ」と答えた。

この言葉を聞いた時に少しドキドキした。

答えを聞きたくて仕方がなかったので「へ〜、誰?」と質問をした。

(誰ってもし俺じゃなかったら知るはずも無いのだが笑)

するとエミリーは恥ずかしそうに「リュウタのことが好きだ。だから付き合えたらいいなと思ってる。」と言った。

その言葉を聞いた時に過去一ぐらい心臓がバクバクしたのを覚えている。

確信は無いけど何となくそんな気はしていた。

でも、いざそれが本当であるとわかった時ものすごく緊張した。

そのせいで間が空くとエミリーが「どう思う」と聞いてきた。

答えは勿論決まっていた。

「いいよ。俺もエミリーのことが好きだ。」

そうして私たちは付き合うことになった。

本当に唐突ではあったが、連絡を取り始めてから約2年弱が経ち、夢に思っていたエミリーと付き合うことになった。


マッチングアプリも今のように旺盛ではなく、ネットでの出会いが危険・変だと思われていた時代…ましてや私の職業は警察官である。

そんなのがまかりとる筈もなく周囲の人間はそんな出会いと恋愛は不審だと思うだろうし、更に相手が外国人となれば国際ロマンス詐欺なり、その他の犯罪とかだと余計に不審がるのは目に見えていた。

だから、誰にも口外できない大きな秘密が始まった。


翌日から浮かれに浮かれまくっていた。

エミリーの写真を見ながら「この人が俺の彼女になる日が来るとは…」と惚気けていたのだが、「早くエミリーに会いたい」という思いが今まで以上に強くなっていた。

それは、どんな人なのかもっと知りたいという気持ちと一緒の時間を過ごしたいという気持ち、実際に会えば組織に対してちゃんと説明が出来る…という色々な感情と考えからだった。

時々、私自身もこれは本当に付き合っているのか?と自問することがあったが、LINEや電話でいつも思いやり、気持ちをダイレクトに伝えてくれるエイミーの姿を見る度に「絶対に大丈夫だ。」と思っていた。

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