ゼロ章 侍道化と闇勇芸団 完
「血と煙と鉄と男の臭い。何度訪れても、戦場って嫌ですね。」
昨夜山内 煌才団長と谷山 氷吾副団長に歌を披露した、長い黒髪の少女は落ちている物を拾ってはカゴに入れて、歩き回っていた。
「ふふ、ふん。今回は人数が多い戦でしたから、いっぱい色々落ちてますね〜。カゴもう一個買いましょうか? いいえ台車も。質屋に売るのもいいかもですが、出店も場所を選べば…え?」
少女は思わず固まってしまった。
(昨日、出会った二人のお兄さん…死んでる。)
「死なないでくださいって言ったのに! バカッ!」
少女は思わず叫んだ。そしてすぐに行動に出る。
「お約束通り、あなた方についてる金目の物全部貰っちゃいます。死人に口なし、そして死人に金は価値なしですからね。」
少女は言った通りのことをした。最初は煌才。続いて、少し離れた氷吾の物を奪った。
作業を終えると、その場を去ろうとした。しかし踏み留まり、振り返った。
「あなた方は、仲がよかったんですよね?」
少女はそう言うと、煌才の方に近づき、腕を掴んだ。
「あなたの方が引きずっても、怒らなさそうなので……失礼します。……ううう、ぐううう。」
少女は貧弱ながら、力を振り絞り、どうにか煌才を氷吾の倒れた隣へと、近づかさせた。
「仕上げです。せめてこの世に残した体は…手を繋がせて、っと。顔は…お互いの方に…傾けましょう。……これで見つめあって一緒ですね。」
少女は二人の体の特定の部分を動かすと、少し切なさそうな顔をした。
「さよなら。そして安らかに。仲良しのお二人さん。私もいつか信頼できる友達が欲しいです。」
少女はケジメをつけると、ようやく背を向けて、場所を後にした。
「さて、お宝探しを続けるとしましょう〜。戦で死んだ人の物はただで拾えますからね〜。……! 刀とか地面に刺さってませんかね〜。」
「これくらいの深さでいいかな? どう思う、和泉?」
括正は返事をするはずもない和泉の近くで大きな穴を掘り終わった。ふと和泉の顔を見る。
「君は最後まで優しかった。戦場なのに、悟りを開いたような笑顔で死んじゃって。君は僕の太陽だった。……でも世界は残酷すぎる。君にとっても、僕にとっても。君はこの世界に勿体無いくらい眩しかったんだ。」
括正はゆっくり優しく、和泉を抱き抱える。騎士が姫を持つように。
「君が僕に優しくしてくれたように、僕も誰かに優しくしたいな。できるかな〜? いや、やってみるさ。」
括正は涙を流しながらゆっくりと、和泉を穴の中に入れた。優しく土を被せると、撫でるように少しずつ叩きながら、固める。最後に和泉の刀を元の鞘にはめ直し、彼を埋めた土の上に軽く刺した。括正は刺した部分から何歩か下がると、膝をかがめ、目を閉じて下を向き、手を合わせた。
「君の魂を無事に天国に導いてくれる偉大なお方がもし存在するのなら……導いてくだされ、導いてくだされ、導いてくだされ……」
一方である者が、そこに近づいていた。
「あら? ちょうどわかりやすいところにに刀が刺さってますね〜。距離ありますけど、拾いに行きましょう。」
運命の出会いが……間もなく始まる!
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