役立て、俺の地震の記憶
RURI
2度の揺れ、咄嗟の判断
今年の2月頃、本格的に私はこの三陸の港町での生活を始めた。
色々とものを揃えながら生活をしているところで、テレビ台をまだ用意出来ていなくてとりあえず釣り具を詰めている段ボール箱の上にテレビを置いたままにしていたりした。
3月18日。この日はまだ包丁を用意していないのを忘れてイカを丸ごと買ってしまい、包丁が無い中で四苦八苦しながら手で捌いて夕食を作り、11時過ぎくらいからかなり遅い晩ご飯を食べていた。
食べ始めて2~30分くらい経った頃、それは突然の出来事だった。ゴゴゴゴゴ、という地鳴りがしたかと思うと、ゆさゆさと揺れ始め、それとほぼ同時にスマホが「地震です」というアナウンスとともにバイブし始める。
その直後、ドン、と突き上げる様な衝撃、そこから大きな揺れが襲ってくる。反射的にテレビを点けつつすぐ後ろにあるベッドに飛び乗り(部屋作りの際に、地震の時の安全地帯になるように家具を配置した)、おそらくは数十秒程度、棚からものが落ちたりするのを為す術なく見ていた。
――これ、津波くるかも。
建物の高さ的には大丈夫とはいえ、万が一津波が来たら孤立する可能性のある場所に居るゆえ、津波への意識というのは持っていた(つもり)。結構な大きさの地震だというのは疑いようもなかったから、急いで上着を着込み、クルマのキーをポケットに突っ込み、いつも使ってるリュックサックにパソコンとハンディサイズのランタン(何かあった時のために枕元に置いていた)を突っ込み、備蓄していた2Lのペットボトルの水をテーブルの上に置いて、すぐに避難出来るような準備を整えて、テレビで情報収集を試みた。それと平行しながら親に連絡を試みるも、そちらは繋がらず(地震云々に関係無く、単純に地域的に電波が悪い)。……なんてしている内に、再び大きな地鳴り。
——また地震……、デカい!
スマホとテレビから緊急地震速報が鳴り、今までに経験したことが無いような揺れが襲ってくる。
——ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい……!!
辛うじてベッドに這い上がり、壁に背中をつけながら、揺れが収まってくれることを待つことしかできない。段ボール箱の上のテレビは文字通り飛び跳ねてあらぬ方向を向くし、あらゆるところから物は落ちるし、引き戸は勝手に開いたり閉まったりするし、自分が乗っていたベッドさえも動いた。もの凄い揺れの中で何も出来なかった。
——ダメだこれ、津波来るだろ……
部屋の中もめちゃくちゃになっていたし、食べかけの夕飯もテーブルに残されたままだったけれど、とりあえず逃げることにした。直感的に津波が来るだろうと思って、津波の情報を待たずに避難を決めた。
さきい用意したリュックサックと部屋で日常的に使っていた寝袋(とそこに入ったままだった抱き枕)、それと貴重品を入れっぱなしにしていた肩掛けのカバンを抱え、テレビと部屋の電気を消し、そのまま何も考えずに部屋を飛び出して階段を駆け下りた。
(続く)
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