三十七話

「こうして見ると中々壮観ですね」


 怨霊獣との戦いが終わった後、グランセイヴァーの操縦士であるリュウセイと、ソフィアとジョウを初めとした操縦士候補達もライゴウの屋敷の客人となった。


 そしてその二日後。ライゴウの屋敷の庭でハヤテが目の前の光景を見ながら言うと、隣に立つライゴウが頷いた。


「ああ、本当に凄いな……!」


 ライゴウとハヤテの前には、トウマのドラグーンにアレックスとワール達三姉妹のソルジャー四機、ダン達のタンクマン三機、そして今回新しくこの世界に転移して来たリュウセイのグランセイヴァーの姿があった。それぞれ異なる異世界から来た巨大ロボットがこうして並ぶ光景に、前世からロボットアニメの大ファンであるライゴウは感動していた。


(前世で見ていた複数のアニメのロボット達を、こうして一度に生で見られるなんて、この世界の陰陽師に転生して本当に良かった……)


 表情は全く変わっていないが内心でうっとりとしながらライゴウが目の前にいるロボット達を見つめていると、ハヤテが話しかけてきた。


「そう言えばライゴウ? ダニエル君のことなのですが……やっぱり彼、この間から変ではありませんか?」


 ハヤテの言う通り、あの怨霊獣との戦いがあった日からダニエルは、ライゴウやハヤテだけでなく自分と同じ世界から来た者達に対しても敵意を持っており、自分以外誰も信じていない様子だった。それに加えて現在ダニエルは屋敷の中を何かを探るように歩き回っていて、ハヤテだけでなく他の者達もダニエルの行動に疑問を懐いていた。


(やっぱりダニエルは俺達を裏切ろうとしているのか? だけど本当に裏切ったとしても、その後はこの異世界でダニエルはどうするつもりなんだ?)


 ダニエルの屋敷での行動はライゴウも知っており、ダニエルに対する警戒心を上げながらハヤテに返事をする。


「確かに変だけど……今は様子見でいいんじゃないか? 陰陽師の記録にも、百機鵺光でやって来た異世界人の中には自分達の状況に動転したり絶望したりして、予想外の行動を取る者もいるってあっただろ?」


「それは、そうですね……」


 自分の言葉にハヤテはまだ何か言いたそうにしていたが、それでも納得することにして頷き、それを見てライゴウが心の中で付け足す。


(もちろん保険は用意しているけどな……。ロボットアニメでもダニエルは裏切ったけど『彼女』のお陰で最悪の展開は免れた。だから協力を頼んでみたが……アニメと同じようにうまくいくかな?)


 ライゴウは一応、ロボットアニメの情報を元にしたダニエルの裏切りに対する保険を用意していた。しかしそれでも念の為、他にも何か保険を用意しておくか考えていると、屋敷で雇っている使用人の一人が庭にやって来てライゴウとハヤテに声をかけてきた。


「ライゴウ様。ハヤテ様。よろしいでしょうか? 先程、お館様が街にお戻りになり、屋敷に向かっていると連絡がきました」


「思ったより早く帰ってきたな? ハヤテ、行こうか?」


「ええ、そうですね」


 使用人が言うお館様とはこの辺りの土地を治めている松永家の現当主、ライゴウの祖父のことである。少し前から仕事で街を離れていたライゴウの祖父が帰ってきたと聞いて、ライゴウとハヤテの二人は出迎えるために庭を後にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る