二十八話
「……だからな。トグとかいう科学者のおっさんが滑って転んで便器に頭をぶつけてタイムマシンを思いついたんだが、そのタイムマシンは遠くの場所に移動できるワープ装置でもあったんだ。それを元に俺達は宇宙中を移動できるワープゲートを作ったんだ」
「そうなんですか。中々興味深い」
友成と双葉、ブレットとカノン、そしてダニエルが街に出かけていた頃。屋敷ではライゴウがダンから大昔にタイムマシンでもあるワープ装置を発明した発明者の話を聞いていた。
「本当にこんな話が面白いのか? こんなの俺達の所じゃ、子供でも知っている昔話だぜ?」
「ええ、とても面白いですよ。他の星の科学者が過去や遠く離れた装置を発明した話なんて中々聞けませんからね」
(それに今の話はアニメの設定集でも読んだことがあるけど、やっぱりアニメのキャラクターの口から直接聞きたかったし)
ダンの言葉にライゴウが答えながら心の中で呟くと、同じく興味深そうに聞いていた技術者のナツミが頷く。
「そうだな。私達の所ではタイムマシンやワープ装置の理論すらできていないからな。……それで、そのタイムマシンの詳しい構造については分からないのか?」
「分かるはずねぇだろ!」
ナツミの質問にダンが即答し、それを聞いていたライゴウだけでなくその場にいた全員が苦笑を浮かべる。
「お前は俺を何だと思っているんだ? 俺は単なるタンクマン乗りの傭兵で……んん?」
ピィー。 ピィー。 ピィィー……。
ダンがナツミに向かって何か言おうとしたその時、何処からか聞き覚えのある鳥の鳴き声に似た音が聞こえてきて、その場にいた全員の動きが止まる。
「お、おい……? この音ってまさか……?」
「間違いない……百機鵺光の始まりの音だ……」
「………!」
鳥の鳴き声、百機鵺光の前兆にダンとナツミが冷や汗を流しながら呟くと、ライゴウが屋敷の外へと走り出した。
「ッ! ライゴウ、何処に行くんだ!?」
「俺は先に現場に向かいます! 皆は自分の機体を出す準備をしてください!」
屋敷にいたアレックスがライゴウに向かって大声を出して聞くと、ライゴウも大声を出して答えてから屋敷の外へと出て、自分が設計したロボットを作り出す術式を発動させる。
「急急如律令! 式機神創造・轟音蜘蛛!」
術式を発動させて自らの式機神、轟音蜘蛛を作り出して内部に入り込んだライゴウは、蒸気の噴出を利用した高速移動で百機鵺光の前兆である鳥の鳴き声に似た音が聞こえた方角へと向かう。すると別の方角から陰陽師が操る式機神、ハヤテの斬刃鴉も鳥の鳴き声に似た音が聞こえてきた場所へと向かって行くのが見えた。
「ハヤテ! お前も聞こえたのか!?」
「ええ、聞こえましたよ! だからこうして………っ!?」
轟音蜘蛛に乗るライゴウの言葉に斬刃鴉に乗るハヤテが答えようとした時、突然街の上空に強い光が生じた。
光が収まると街の上空には、一体の巨大なロボットと機械の鎧を着た複数の男女、そして巨大な鳥と機械が一体化したような不気味な怪物が数匹飛んでおり、それを見たライゴウは思わず息をのんだ。
(ちょっと待てよ……! あれは、まさか……!)
ライゴウは街の上空を飛ぶ巨大ロボットと機械の鎧を着た男女、そして巨大な鳥と機械が一体化したような不気味な怪物達に見覚えがあった。
それはライゴウが前世で観たロボットアニメの知識で、今回現れた巨大ロボットとその周りにいる機械の鎧を着た男女もそのロボットアニメのキャラクターなのだが、ライゴウが注目しているのは巨大ロボットや機械の鎧を着た男女ではなく、鳥と機械が一体化したような不気味な怪物だった。
(ッ! 何でよりにもよってアレが出てくるんだよ! アレは世界に作り出された人類を滅ぼすための『敵性存在』だぞ!)
ライゴウはそう内心で呟くと、轟音蜘蛛を怪物に向けて高速で進ませるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます