十五話

(ハヤテの斬刃鴉が今にも戦いそうだったから思わず飛び込んできたけど、まさかここでもロボットアニメのキャラクターがいるとはな……)


 轟音蜘蛛の中でライゴウは、自分の友人であり同僚でもあるハヤテの斬刃鴉を見てから、それに対峙している二体のロボットに視線を向ける。


(あの特徴的な外見のロボットはタンクマン……。それであの機体はダンとブレットか)


 ダン達はトウマ達と同じ、ライゴウが前世で観ていたロボットアニメのキャラクター達であった。そのアニメは何百年と続いた星間戦争のせいで荒廃した地球とは別の惑星を舞台に、傭兵兼何でも屋をしているダン達が様々な仕事をする、バトルあり笑いありのコメディーよりのロボットアニメだったとライゴウは記憶していた。


 新たなロボットアニメのキャラクターに出会えたことに喜びたいライゴウであったが、今のそれどころではない一触即発の空気を感じ取ると、ハヤテに今の状況を聞くことにする。


「ハヤテ? これは一体どういう状況? 何で異世界のロボットと今にも戦いそうな感じになっているの?」


「……簡単に説明しますと、この村の人達がダンさん達……あそこにいる異世界人の二人の仲間に危害を与えようとして、それに激怒したんです。そしてあのままだとダンさんが村を滅ぼしかねなかったので、こうして止めようとしています」


(まいったな……。一度怒ったら止まらないダンのバーサーカーっぷりはここでも同じか)


 ハヤテの説明を聞いて事情を理解したライゴウは、アニメで観た怒り狂った時のダンの姿を思い出して内心で舌打ちをしたい気分となる。


「おいおい、お仲間登場か? 何だか二人揃って凶悪で強そうだけどよ……そんなもんで俺が止まると思うなっ!」


「っ!」


 ライゴウとハヤテがどうやってダンを止めようかと考えていると、当の本人であるダンは新たなロボット、轟音蜘蛛の登場に逆に闘志を燃やしてタンクマンの左腕のマシンガンを斬刃鴉に向けて撃った。撃たれた斬刃鴉は咄嗟に腕や肩の装甲で防御して、それにより弾丸が反射される音が周囲に響き渡る。


「ハヤテ!? この……!」


「待ってください、ライゴウ!」


 ダンが斬刃鴉をマシンガンで撃ったのを見たライゴウが轟音蜘蛛の背中にある大砲を構えようとすると、ハヤテがそれを言葉で止める。


「轟音蜘蛛の武装では周りに被害が出ます! ここは私がダンさんを止めます!」


 ハヤテがそう言うと、斬刃鴉の背中と足にある噴出口から蒸気が凄まじい勢いで出て、その勢いを使い斬刃鴉が高速でダンの乗るタンクマンに向かって飛んだ。


「ちぃっ!」


 ダンはこちらへ拘束で飛んで来て捕まえようとする斬刃鴉の手から逃れると、再び左腕のマシンガンを撃つ。しかし……。


「甘い!」


「何だと!?」


 ハヤテが乗る斬刃鴉は今度の銃弾は装甲で防ぐのでも回避するのでもなく、高速で回転して背中の翼で全て「斬って」みせて、それを目の当たりにしたダンが驚きの声を上げる。


 斬刃鴉は背中の翼だけでなく、全身を覆う無数の装甲全てが刃である。高速で飛翔して一瞬で敵の懐に潜り込み、全身の刃を使って敵の機体を斬り刻み無力化させるのがハヤテと斬刃鴉の戦い方であった。


 そしてさっきハヤテが言った通り、轟音蜘蛛の両腕から放つ鉄球や背中の大砲では高速で動き回るタンクマンには上手く当たらず、逆に村に被害を出してしまうかもしれない。今、高速移動をするタンクマンを周囲に被害を出さずに無力化できるのはハヤテの斬刃鴉だけだと理解したライゴウは、いざという時はすぐに援護が出来る様に身構えながら自分の友人を見守ることにした。


「ダンさん……。どうやら貴方に落ち着いてもらうには、一度そのロボットを無力化させるしかないようですね。手荒な手段となりますが許してくださいね?」


 ハヤテがそういうと斬刃鴉の両腕にそれぞれ装備されているチェーンソーが展開して、耳障りな音を立てて刃を回転させるのであった。

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