第46話 フィギュアはSF

 エアコンの効いた竜也たつやの室内に、部屋の主と竜一りゅういちがゲームをして過ごしていた。

 真夏のギラギラした太陽といえど、エアコンの効いた室内では無力。暑さを感じずに快適に過ごしていた。


「さて……」


 竜也はゲームをする前に棚に飾ってあったフィギュアを何体か取り出した。どうやらゲームのキャラクターらしい。


「竜也、何だそれ? そのフィギュア何に使うんだ?」


「まぁ見ればわかるさ」


 竜也はゲームを操作しメニュー画面を出す。すると……


「フィギュアをNFCエリアにタッチしてください」


 という表示が出る。

 竜也はフィギュアをゲームのコントローラーに当てると、ピピッ。という音がすると同時に「スターコイン20枚獲得しました」という表示が出た。


「何だ? この「スターコイン」とやらは?」

「ゲーム内の通貨だよ。毎日ちょっとだけ得をするのさ」

「へースゲェな! フィギュアがゲームに影響を与えるのか。それも科学技術の進歩がなきゃ出来ない事なんだろ?」

「少なくとも伯父おじさんが生きていた90年代では出来なかった事だったよ。確か、そう「NFC」っていう技術が使われているそうだよ」

「NFCねぇ……調べて見るか」


 スマホのWikiが言うには、NFCとは日本語では「近距離無線通信」と呼ばれるもので20センチメートルほどのごく近距離で情報のやり取りを行う無線機器の規格である。

 竜也が持っていたのは台座にそのNFC機能を埋め込んだもので、ゲームと簡単な通信を行う事が出来るフィギュアだった。


「へぇ! こんなものが出来るとはスゲェな! フィギュアがゲームと繋がるのかー! 新しくてスゲェなー!」


「とある大人気格闘ゲーム」のために作ったような物、という噂もあるがそれ以外でも役立つと言えば役立つもので、もちろんフィギュア単体としても価値はある出来だ。

 竜也はコインを獲得するとゲームを進める。しばらくして何とかボス前までたどり着いたがHPはギリギリの状態で、挑んだらまず負けるだろう。




「大丈夫か? HPが少なくないか?」

「ああ、大丈夫」


 竜也はそう言ってさっきスターコインを獲得したときと同様にメニューを開き再び「フィギュアをNFCエリアにタッチしてください」と表示させる。

 さっき「スターコイン」を手に入れた時とは別の、そのゲームに登場する主人公キャラのフィギュアをタッチする。すると……。

「HPが100回復しました」というメッセージと共に体力が7割近くにまで回復した。


「!? スゲェ! 体力の回復までできるのか!? ……でもちょっとズルくない?」


 さすがにフィギュアさえあればタダで体力回復できるのはズルいと竜一は思ったが、竜也は特に罪悪感などは抱えてはいなかった。


「まぁ考えによってはズルいかもしれないけどこのゲームは他人と競争するわけじゃないし、オンライン要素やオンラインランキングも無いから

 レトロゲームの連射装置やどこでもセーブできる機能、それに巻き戻し機能の親戚みたいなものなんだけどね。

 それに1日1回の制限があるからフィギュアさえあれば無敵ってわけでもないからね」

「へぇ、巻き戻し機能と一緒と来たか。なんかどんどんゲームがヌルくなってないか?」


 竜一はいわゆる「レトロゲーム」彼からしたら新しいゲームなのだが……それを遊べるゲームにそれらの機能があるのを知っていた。連射機能ならまだしも「巻き戻し」はちょっと卑怯だと感じていた。




竜二オヤジが言うには「老眼が入って来ると巻き戻しやセーブ機能を駆使しないと若いころやってたゲームをやるのが難しくなる」そうだよ」

「あー、老眼か。もう竜二りゅうじはそんな年になったのかぁ……」


 竜二は前に竜一に対して「40代になると身体にガタが来るから厄年って大事なんだ」と言ってたが、そういう事かと納得した。

 それに加えて以前、本人が今は44歳になると言ってたな。人生の折り返しを過ぎて後半戦となるとやむなしか。


「……年は取りたくないもんだな。俺のオヤジ、竜也からしたら祖父じいちゃんになるけどもう40代のころから老眼入ってたそうだぜ」


 そういえば身体にガタが来ると言ってたのは今は亡き竜一の父親もそうだった。彼も40代になって老眼が出てきたらしく、新聞は近眼用の眼鏡を外さないと見えないとかボヤいてたのを竜一は思い出した。


「へぇ、もうそんなに早くから!? 俺もじいちゃんが新聞見るときにいつもしかめっ面してたのは覚えてるけど」

「ああ。竜二と一緒だそうだ」

「うーわ、やだやだ。年は取りたくないなぁ」


 まだ10代だというのに早くも年を取りたくない、という若さに合わない話をしながらメニューを閉じてゲームを再開した。結局ボスにあと1歩のところで負けてしまった。

 また明日出直してこい、というわけだ。




【次回予告】

 令和の時代には電気が宙を飛びスマホを充電させることもできるのか!?

 SF小説でもなかなか出てこない「ワイヤレス充電」が竜一に対して強烈な衝撃を叩き込んだ。


 第47話 「ワイヤレス充電はSF」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る