第26話 AR(拡張現実)はSF

 携帯ゲーム機の3D機能に大興奮だった竜一りゅういちだったが、さらに凄い機能をそのゲーム機は備えていた。

 ゲーム機のそばにあった謎のカードが数枚。それが竜一の常識をくつがえす、とんでもない機能を持っていた。


「ところでこのカードは何に使うんだ? また「英傑えいけつウォーズ」みたいにカードを読み取って何かするのか?」


「ああそれ? AR(拡張現実)って言って現実世界に仮想世界の情報をつけ足す技術なんだ。まぁ説明するより実際に試した方が早いかな? やってみなよ」


 竜也はそう言ってゲーム機に内蔵されたとあるソフトを起動し、竜一に渡す。


「ゲーム機にカメラがついてるでしょ? それでカードを映してごらん」

「お、おう……!? な、何だ!?」


 並べた5枚のカードに書かれたキャラクターが3D画像になって現れた。


「!? どうなってんだ!? カードからキャラが飛び出している!?」


 ゲーム機で映った映像には竜也の机の上でカードの上に立つ形でゲームのキャラが飛び出しているように見えていた。


「このキャラとあのキャラ同士をもっと近づけみてよ」

「お、おう……」


 竜一は並べたカードを入れ替え、竜也が指定したキャラ同士を近づける。すると……。


「何だ!? キャラ同士が掛け合いをしてる! こんなこともできるのか!? ARとか言ったか!? スゲェんだな!」

伯父おじさんからしたらすごい技術に見えるけどもう10年以上昔からある「枯れた」技術なんだけどね」

「はぁ~! こんなスゲェ技術が「枯れている」と来たか! 技術の進歩ってスゲェんだな!」


 竜一にとっては未知の技術であるARに感心している中、竜也はすかさず次の手を打ってくる。2023年現在においてはARの1つの完成形、と言えるものだ。




「伯父さんからしたらこれは相当な衝撃だと思うけど、こんなスポーツがあるんだよ……「HADOUハドウ」って言うんだけど」


 そう言って自分のスマホにとある動画を表示させる。


「何だ? 「HADOUハドウ」だって? あの「波動拳」の波動はどうか?」


 疑問に思いながらも動画を見始めた竜一の目に飛び込んできたのは、3人1チーム、合計6名の出場選手の手からエナジーボールが飛び出し、さらにはそれをさえぎるシールドで防ぐ光景だった。


「な、何だこりゃぁ!? これもARなのか!?」

「そうだよ。ARを使ってエナジーボールを打ち合うスポーツなんだよ。ちょうどドラゴンキューブでエネルギー弾を打ち出せるような感覚だね」

「ス、スゲェ! ドラゴンキューブみたいなエネルギー弾を打ちあって戦うことがもう現実で出来るのか!? とんでもねえぞこれは!

 いやー技術の進歩ってこんなスゲェこともできるのか! さすが2023年だなー! あのバックトゥザフューチャー2よりも未来な世界の出来事なだけあるぜ!?」


 こんな凄い事ができるなんて! 竜一はARの素晴らしさを全身で味わっていた。


「いやーこんなスゲェ事ができるなんてSF小説でもそうは無いぞ! いい世の中になったなー!」


 竜一はARが見せてくれたSF的未来、センスオブワンダーを見て大いに満足していた。世間では格差が広がってるとかいうけど、彼にとっては2023年の今はそんなのどうでもよくなる程に素晴らしい世界である事、それに間違いは一切なかった。




【次回予告】

 拡張現実の凄さを体験してから数日。今度の竜也は撮り溜めた深夜アニメを消化していた。

 現代のレコーダーはいわゆる「ビデオデッキ」で止まっていた竜一にとってはセンスオブワンダーを感じさせる凄さを備えていた。 


 第27話 「レコーダーはSF」

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