第22話 ついにソーラーセイル(太陽帆)とイオンエンジンが実現!!

「うわあああああああああああ!!」


 休日の門河かどかわ家から突如竜一りゅういちの絶叫が発せられる。


「兄貴! どうした!?」

「竜一君! どうしたの!?」


 騒ぎを聞きつけた竜一の弟である竜二りゅうじとその妻の咲夜さくやがびっくりした様子で竜一の部屋に飛び込んでくる。


「竜二! 聞いてくれ! ついにソーラーセイルが現実のものになったんだ!」


 竜一は偶然見つけた日本の宇宙開発機関のページ、そこにあったソーラーセイル実証機に関するページを見て思わず絶叫してしまったのだ。


 ソーラーセイル……

「太陽帆」とも呼ばれるそれは太陽から放射される光やイオンなどを反射して推力とするもので、簡単に言えば「帆船の帆の宇宙船版」というものだ。

 帆に当たる部分は極めて軽量かつ頑丈な素材でなくてはならないため、長らく主に海外のSF小説の世界でしか見れなかったのだが、ついに現実のものとなったそうだ。


「今回は日本がやってのけたんだよ! 日本がソーラーセイルを現実のものにしてくれたんだよ! いやスゲェ! スゲェ事だよこれは! SFだよSF!!

 SFの出来事が現実になったんだよ! とんでもねえ事だぞこれは!」


 1人大興奮して早口言葉でまくし立てるように言いたいことを一気に吐き出した竜一だったが、いつもの事かと弟夫妻は少しあきれた様子で実の、あるいは義理の兄を見ていた。


「分かった分かった。でも今回はあくまで実証実験のためだから、応用してすぐ宇宙船に使えるってわけにはいかないけどな」

「でも実際に出来た事は確かなんだろ!? スゲェ事じゃねえか! って言うか竜二、何でこんなスゲェ事が起きたのにそうやって冷静でいられるんだ!?」


 竜一からしたら自分が他人から見たら異様なほど大興奮し過ぎているのだがそれは正常なことで、

 むしろこんなとんでもない大事件が起きたのに平然としていられる周りの方が不自然に見えた。




「まぁ俺はSF小説もマンガも兄貴に見せられたもの以外はあんまり見ないもんなぁ。スターウォーズやスタートレックもあんまり詳しくないし」


 竜二は兄に無理やり見せられ続けたSF映画やSF小説を思い出し、少しだけ嫌な感情を込めつつ話す。

「嫌いなものを見せられても苦痛なだけだしすぐ忘れる」という、誰が言ったかは分からないが主に学校の勉強に関するものであろうその格言は、竜二にとってのSFに当てはまった。

 小中学生の頃に兄の竜一によって強引に見せられたが、内容は全く覚えていない。


「そういえばイオンエンジンも実用化されて人工衛星に使われているって話は聞いたか?」

「!? な、何ぃ!? イ、イオンエンジンがもう実用化されているのか!? あのイオンエンジンか!?」


 竜二は「火に油を注ぐ」事をやってしまったのだがもう遅い。目の前の兄はさらにヒートアップする。


「あ、ああ。地上では使えないから宇宙空間にある人工衛星や地球外の惑星の探査機に使われてるって話だぜ」

「ス、スゲェ! イオンエンジンって言ったらスターウォーズのTIEツイン・イオン・エンジンファイターのエンジンそのものじゃないか! それがもう実用化してるのか!? スゲェじゃねえか!」


 SFには興味のない一般人でもギリギリ知ってるか知らないかの境目であるTIEツイン・イオン・エンジンファイターのエンジンが実用化されている。そんなとんでもないことに竜一はさらに大興奮だ。




「ス、スゲェ! ソーラーセイルが現実のものになった上にイオンエンジンまで実用化されてるなんて! SFにとってこんな凄いことはなかなか無いぞ!

 さすが平成の先の年号なだけあるな! SFの中だけの出来事が次々と現実のものになっていくのか! こんなのどんなSF作家でも書けないよ!」


 ソーラーセイルが実用化されただけでも凄いのに、イオンエンジンまで実用化されているとなると大はしゃぎで文字通り「お祭り騒ぎ」の竜一だ。

 この後彼は10分ほどSFの中のアイテムが現実になると言う事がいかに素晴らしくてワクワクさせてくれることなのか、を家族に向けて語っていたがその家族たちは理解できなかったという。




【次回予告】

「Mamazonプライム」なるサービスを使えばマンガやアニメ、映画が見放題らしい。しかもお値段はたったの月500円。

 なんでも「1人月500円でも10億人にサービスを提供すれば月商5000億円、年商6兆円の商売」になるらしく、

 ドラゴンキューブのパワーインフレそのものじゃねえか!  と竜一は語ったという。


 第23話 「サブスクはSF」

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