2-4:半妖の力について

 復帰配信をしてから3日間の間は、後れを取り戻すためにゲームをせずにひたすら勉強してた。その間に私用に尻尾部分が加工された服が5組ほど届いた。うち二組は寝巻だ。寝るときは下履いてなかったので非常に助かる。下着についても加工した奴が届いててかなり助かった。最初は下着少し下げてたんだけど、途中から気になりだしてノーパンで暮らしてたんだよね。外出することなかったからよかったけどさ。あ、流石に陣さんが来たときは履いてたよ?さすがにね。


 そして今日は祖父の道場に向かう。昨日祖父から連絡があり、半妖化に関する記録があったのでそれを見せるとのこと。ただ、この資料は持ち出すことができないので、祖父が迎えにくるとのこと。


「おはよう、翔。今日は爺さんが迎えにくるんだっけ」


「そうだよ。なんか道場にこいってさ。ついでに一葉も呼ばれてるよ。もし来れるなら久しぶりに稽古でもどうかだってさ。」


「残念ながら僕は大学いかなきゃいけないからって伝えといて。」


「だよね、了解。」


 朝ご飯を済ませたあと、一葉を見送りして出かける準備をする。丁度10時になったところで爺ちゃんが来た。


『翔、前に車止めて待っとるぞ』


「ん、今行く」


そして爺ちゃんの車に乗り、道場へ向かう。


「あ、一葉は大学だってさ」


「そうか、ならしかたないのぉ。あやつの格闘センスは良い線いっとるからなぁ。久しぶりにうちの門下生の相手をしてくれればと思ったんじゃが」


「やるにしても最初から刃が付いてないの使ってね」


「当り前じゃ。刃が付いたやつで稽古するのはうちの血縁にあるやつだけじゃ。外部の人とやるときはあって刃を潰したものじゃな」


「そう、ならいいけど」


 そんなこんなで会話をしてると道場についたので車から降りる。ちなみに今日は道場お休みらしく、爺ちゃん以外は道場にいないらしい。はたして門下生の話はなんだったのか。



「ここじゃ。ここに資料があると言われておる」


そして道場に入って連れてこられたのは、地下室にあるかなり古い扉の前だ。


「言われてるってどういうこと?」


「そういう資料が残っているというだけじゃ。なんでも半妖化したものにしか開けられず、そして入れないらしくての。そして儂はここまでしかこれん。」


「えっ、それは大丈夫なの?」


「わからん。が、幽霊だのなんだのに詳しい人に何度か見てもらったことはあるが、何も問題ないらしい。むしろ若干神気を感じるといったやつもおったくらいじゃ。」


「ふーん、まぁ、まずはそもそも開くかどうかだよね。」


「じゃな、開けてみてくれ」


 言われた通りに扉を開けると、地下なのに外の景色が広がっていた。草原が広がり、少し進んだ先には丘があってその頂上に巨大な木が生えている。それ以外は何もなく地平線までずっと草原が続いている。


「爺ちゃんこれる?」


「何があるかは見えとるが、先に進めないのぉ。何かようわからんものにぶつかっとるわ。お主は大丈夫なんか?」


「うん」


「そうか。んじゃ、行ってこい。記録にある通りならそこは半妖化したもののための資料室兼研究所みたいな扱いらしいでな。じゃ、儂は上で待っとるぞい」


 そして爺ちゃんは上に戻ってった。ここからは私一人で入らないといけないわけだ。でもこの感じ、SLAWOのあのよくわからない場所に似てる気がする。景色は全然違うけど、雰囲気がそれっぽい。


 とりあえず中に入り、扉を閉める。扉が消えるんじゃないかと不安になったが、それは問題ないようでしっかりと扉が残っている。


 ちなみに扉の後ろに回り込めるのか確認しようとしたら、どうやら壁があるらしい。壁と天井の映像を映し出してこの光景を産み出してるような感じかな?床は本物らしい。とりあえずちゃんと地下室であることは間違いないらしいが、あまりにリアルすぎて境目が全くわからない。壁にぶつかるのが怖いので慎重に歩く。とりあえず目標はあの丘の上にある木だ。多分あそこになにかあるはず。



 地下室を慎重に進んでいき、丘の前についた。よくよく見ると扉が付いており、扉を開けて中に入る。中は書庫になっており、壁一面に本棚が並べられていた。明らかに古い本しかなくて、私に読めるのかどうかは不明。そして部屋の中央には机が配置されていて、その上には見開きの状態で本が置かれていた。なぜかそれを読まないといけない気がしたので読みにく。


ーーーーーーー

 この本を読んでいる我が血族へ。


 さて、ここに来たということは君は半妖化したということなのだろう。時に妖怪退治を生業としてるものに追われてるのではないかな?まぁ、それは私の時代の話であって、君がこの本を読んでいる時代にはそういうものはないのかもしれないが。もしかしたら我々が扱う文字も変わってるかもしれないな。なに、その辺は我の血縁なら読めるように細工をしてあるから心配しなくていい。


 おっと、そろそろここは何なのかを説明しないとな。いつもいつも前置きばかりで本題までが長いと嫁に怒られていたからな。あぁ、懐かしい話だ。


 さて、この場所は君のように半妖化したもののための資料室であり研究室でもある。ん、資料室なのは見ればわかる?はっはっは!私が書いてるときはこの本しかないはずだから、もし部屋を見て資料室と分かるのであればそれだけ長い時が過ぎたということなのだろうな。あぁ、それはいいとしてだ。


 私が残すのは妖力の使い方についてだ。妖力というのは妖術を発動するための力だな。有名なところだと九尾の狐が人化の術を用いて人を騙していたという話か。

 とまぁ、そういうことが出来るのが妖力だ。だが私は妖術の使い方は知らん。というよりこれは妖怪によって異なるようだし、半妖化したからといって妖術を使えるとは限らないらしい。だからもし君が妖術を使えるのであればその使い方を残しておいて欲しい。


 では妖力を扱うとは何かというと、例えば人より速く動けたり、人より強い力を出したりできる。そういうものだ。私の父は本物の妖怪だったのだが、妖怪であればみなそれを行っており、妖力があるものであれば誰でもできるものだといっていた。だから私はそれを伝えよう。


 とはいっても、具体的な方法があるわけでない。例えば私は速く走れるようになるー!っと思えば使えるし、強い力を出すぞー!と思えば使える。そういうものだ。そして私が残せるのはここまで。


 妖術はこれをさらに発展させたものだと私は思っている。例えば耳を消すぞーと思えば消えたりとな。私は消せなかったが、君ならできるかもしれないな。そして出来たのならその方法を残しておいて欲しい。


 では、ここまで読んでくれてありがとう。君のこれからに幸多からんことを願っているよ。

ーーーーーーーーー



・・・・結局なにも書いてないじゃないか!!!!頑張って最後まで読んだ私の時間を返して!!!


 あまりにもひどい・・・これじゃぁ何が何だかわからない。あ、なんか本の横にメモ書きみたいなのが置いてある。



ーーーーーーーー

 そうそう、忘れていた。ここに来る手前にある空間は妖力の使い方を研究するための場所だ。何をどうしようと決して崩れることのない特殊な結界を張ってあるから好きに使うといい。

 それでは今度こそさらば!

ーーーーーーーーー



 いやもう・・・それだけですか。とりあえず、ここの本を読む前にSLAWOと同じかどうか試そう。同じだったのなら本を読む必要はあまりないだろうし。



 さて、まずは魔力操作・・・じゃなくて妖力操作か。すでに妖力を感じ取ることは出来てるので同じように操作できるかだけど・・・、出来ちゃった・・・。妖力強化も出来た。

 尻尾に妖力を通しても同じかと思ったら、これは少し違うらしく狐火が出るとこまでは一緒だが、色が白・蒼・紅と順に色が変わっていってる。それとちゃんと熱を持ってるから、物を燃やせる気がする。その辺の草を燃やしてみよう。


ボン!!!


 物凄い勢いで燃え上がったと思いきや、すぐに消えた。しかし狐火があたった部分は真っ黒に焦げ、草は炭化してる。これは使ったらだめだね。大火事になる。これ使えば尻尾を乾かせるかなーとか思ったけどやめた方がよさそう。


 ついでにSLAWOで使ったライトボールとかウィンドアローとかも試したがこれは使えなかった。SLAWOの狐火とは別物と思って良さそうだ。


 まだ昼までは時間あるな・・・。資料室にある本に役に立ちそうな物がないか、探してみよう。


 それから12時まで探した結果、役に立ちそうなのを一つ見つけた。それが式神を通して行使する術だ。妖怪退治する人が扱うイメージなのだが、これの本質は鬼神が持つ力を借り受けて行使するというところにあるようで、別に誰が使おうと関係ないらしい。というか本来は力のない妖怪が使うために用意された術らしく、普通の人に扱えるようなものではないと記載されていた。その点、安倍晴明や道摩法師なんかを始めとした陰陽師と呼ばれる輩は頭がおかしいとも書いてあった。


 中々に棘のある言い方をしてるから、これを描いた人は陰陽師に対して何かしらの恨みがあったんだろう。ところどころに陰陽師を馬鹿にするような言葉が記載されてた。


 式神にはいくつかの種類があるようで、火の陣、木の陣、土の陣、金の陣、水の陣とあるらしい。そして妖怪によって適正というものがあるらしく、使える陣は異なってくるらしい。その確認は式神に妖力を流せばわかるようだ。火なら燃え、木なら草が生え、土ならば崩れ、金なら鉄となり、水ならば濡れるとのこと。


 とりあえず試してみた結果、式神が燃えたのでどうやら火に適性があるようだ。それから細かい使い方が書かれており、その中には髪を乾かす式神というのもあった。中々に便利なのでこれだけ覚えておいた。一応SLAWOのように狐火でコピーできるかどうか試してみたがダメだった。やはりその辺はまた違うようで、色々調べないといけないらしい。


 一応それなりの成果があったので、定期的にここに来るとしよう。資料は持ち出せないようになっているから覚えるしかないが、まぁ、頑張ろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る