1-18:エリアボス戦
転移した先は、先ほどいた場所と何も変わってないように見える。変わっているのは大木を背にしたフォレストブラックベアが目の前にいるくらい。
掲示板で教えて貰った通り、周囲にうねうねした木の根が四本生えている。まずはあの四つを燃やすとこからか。
「グオオオオオオオオオ!!」
くっ、初手咆哮か。威圧感が凄い。咆哮で私が怯んでるとこっちに走ってきた。
「危なっ!」
それでもまだ距離があり魔力強化してからと思ったら、下から木の根が生えてきた。直前に魔力感知で察知できたため、ギリギリで回避できた。
回避すると、木の根は再び地中に沈んでいくが、今度は弾丸が飛んでくる。これも移動して避ける。そして地中から木の根が伸びてきてるのを感知。幸い地中にある木の根は一本。動く速度も私より遅いから、咆哮を受けて立ち止まることだけ気を付ければ大丈夫そうだ。
フォレストブラックベアの周囲を走って回りつつ、脚を魔力強化し、紫炎を4つ、そして狐火・白を一つ展開する。狐火はあわよくばコピーできたらいいなくらいなので、そこまで重要じゃない。
そして準備ができたところで敵の方に全力で駆けていく。狙いはあのうねうねしてる4本の木の根だ。私が走りだすと、それに合わせて四本の木の根で迎撃してこようとする。が、遅い。難なく近づいて、すれ違いざまに紫炎を放ち四本とも燃やすことに成功。
「グォオ!!」
そして私が走り抜けてからワンテンポ遅れて、その太い腕を振るう。
ドンっ!!!
腕に当たった地面は大きく陥没し大きな土埃を上げ、視界からボスが見えなくなる。とはいえ、私には魔力感知があるのでどの辺にいるのかとか、魔法による攻撃の兆候とかがわかるので問題はない。
にしてもあれは当たったら一撃で死ぬな・・・。絶対に当たらないようにしよう。
常に走りつつ再度紫炎を展開して様子を見る。地表に出てた4本の根は燃やしたが、地中の埋まってる根はまだ残ってる。
ん?なんか、どこからかボスに向かって魔力が流れてる。それも四つのルートがある。あー、これ足の裏から地中に木の根が伸びてて、あの後ろにある大木と繋ぐことで焼けた部分を再生してるのか。
地中の根と地表に出てる根は、元は一本で途中で分岐してる造りになっているようだ。なら、あの足を燃やしてしまえば木の根はしばらく使えないだろう。次に狙うのはあの足だな。
「グオオオッ!!」
ボスの周囲をぐるぐると周ってると、土煙が収まる前に全方向に向けて木の弾丸を飛ばしてくる。けど、魔力の動きからどこが基点で、どういう使い方をするのかすでに予想はついていた。
全方位とはいうが、隙間なく埋め尽くしてるわけではないので、弾丸を飛ばしてきたと同時に空いてるスペースを駆けていき、距離が近くなったところで後ろから四本の足に向かって紫炎を放つ。
「グォォア!?!?」
今の攻撃で大きく怯んだので、反転して再度攻撃を仕掛ける。いまだ怯んだままのボスの右目を爪で突き刺し、そのまま顔面を蹴って飛び越えて上から紫炎を一発放ち離脱する。
「グ”ォ”ォ”ア”ァ”ァ”!!」
「うわっ!?」
私の攻撃を受けたフォレストブラックベアは最初よりも大きな咆哮ともに衝撃波を放ってくる。その衝撃波が体についていた火を吹き飛ばし、更に離れてる私の身体をも吹き飛ばす。
幸い、木に着地することができたので、ダメージはさほど受けてない。というか回復しようがしまいがどちらにせよ一撃でやられるので、戦闘中に回復する利点がない。しいていうなら痛みが引くくらいだが、いまはアドレナリンが出てるおかげか体の痛みは特に感じない。
そして咆哮を上げたフォレストブラックベアを見ていると、情報にあった通り尻尾から木を生やし回復しているようだ。火傷痕も含めて徐々に傷がいえているのが見える。そのまま見逃す理由などないので、その根を断ち切りに向かう。
移動中、紫炎を2つ、狐火・蒼を一つ展開し、蒼にはウィンドカッターをセットしておく。ある程度近づくと、今までとは段違いの速さで木の根が私の方に伸びてくる。それが2本。
脚にかけてる魔力強化を更に強め、速度を上げウィンドカッターや爪で払いながら向かうが、切った傍から直ぐに再生して私の動きを止めようとしてくる。それでもまだギリギリ何とかなっていたが、更に距離を縮めると木の根が四本に増えた。
「っちぃ!!!」
限界まで速度を上げてる状態で、更に追加で二本は流石に処理が追い付かない。
・・・頭痛くなるけど、魔力強化を全身に使用しよう。
今の状態では無理だと判断した私は、全身に魔力強化を使用する。途端に頭が冴えわたり、相手の攻撃がハッキリと理解できるようになる。
また、自分の魔力が後どれだけ残ってるのかも感覚でわかる。この状態を維持できるのはあと2分ほど。紫炎を追加で発動すると、一つにつき30秒制限時間が減ってしまう。今展開している二つで決め切りたい。
先ほどまでとは違い、するすると相手の攻撃を避けていく。近づくごとに根が増えていくが、それも全て
全身を強化してるおかげか、爪撃で難なく切り裂ける。そして次々と現れる障害を避け、そして切り裂いていきフォレストブラックベアへと距離を詰めていく。
そして尻尾の根に近づいてきたところでフォレストブラックベアが腕を上げて待ち構えており、私の移動先に合わせて腕を振ってくる。
私はこれを上に飛んで回避し、その直後にドンッという大きい音が鳴り土煙が上がる。視界が悪くなるが、魔力が視えているので関係ない。
そのまま尻尾から伸びてる木の根に向かって爪撃を放つ。それを止めようと10本の根が地面から出てくるが視えたが、根が伸びてくるよりも早く私の攻撃が届く。それと同時に地中にある根から魔力が消え、動かなくなった。
そして大木と繋がろうとしてる尻尾の根を紫炎で燃やす。
「グアァァァ!?」
尻尾の根が弱点なのか、かなり痛そうにしている。その隙に後ろ脚の腱を切り裂いて機動力を奪っていく。
「ググッ、グアッ!!」
痛みに耐えながら振り向きつつ私に攻撃してくるが、踏ん張りが効かないのか、先ほどよりも動きが散漫になってる。攻撃を避けつつ、左目に爪を突き刺して顔面にしがみつく。そして少しだけ魔力を残し、ほぼすべての魔力を使って爪先から紫炎を発生させて内部から燃やす。
「グア”ッ!ア”ア”ア”!!!」
今までにないほど痛そうな悲鳴を上げて暴れるが、全身を魔力強化してる私を振りほどくことはできず、そのまま頭の中を焼き尽くしHPが0になった。
ピコン『フォレストブラックベアを討伐しました。第二の街アランへの通行券が冒険者ギルドから送られます。1分後に通常エリアに転移されます。』
ピコン『レベルがUPしました』
ピコン『魔力強化のレベルが上がりました』
ピコン『魔力操作のレベルが上がりました』
ピコン『魔力感知のレベルが上がりました』
ピコン『条件を満たしたため魔力視を取得しました』
ピコン『軽業のレベルが上がりました』
ピコン『爪撃のレベルが上がりました』
ピコン『称号:身体ヲ破壊スルモノ を取得しました』
ピコン『称号:格上殺し を取得しました』
色々とログが流れるが、ひとまずクリアログが流れたのを確認し、展開している魔法や妖術を全て解除する。
「ふぅ・・・MPは残り1・・・。ホントにギリギリだったね・・・・。ちょっとMPポーション飲んで回復するねー。」
いまものすごく気怠く、そして頭が超痛い。あと全身がズキズキする。
とりあえずMPポーションを二本飲んで不足MPを回復。狐火・蒼でヒールを使用してHPを回復する。コメントも再表示させる。
・うおおおおお!!
・すげえええええ!!!
・おめでとおおおおおおお!!!
・新しいHENTAIの誕生だああああ!!!
・カケルくんおめでとう!!!!
なんかあんま嬉しくないコメントも混ざってるけど、大体はおめでとうコメントで埋め尽くされていた。
「みんなありがとうー。めっちゃ疲れました・・・。あ、質問は戻ってからね。」
・了解!
・りょ!!
・多分いま周りにプレイヤー沢山いるけどがんばって!!
何か不穏なコメントが見えた・・・。まって、視聴者数3万!?嘘でしょ!?
そして一分後、元いたエリアに転移してきた。なんか周りにめっちゃ人がいるんですけど!?って、そりゃ三万人も見てたらいるよね!!うん!なんとなくそんな気はしてた!
「「「おおおお!!!おめでとおお!!!」」」
「あんたすげぇなぁ!!!」
「あれをソロかよ!!」
「カケルーー!!!!おめでとうー!!モフモフだぁ!!」
一葉もここで待機していたようで、私に向かってダイブしてくる。そして私の身体でモフモフしている。
・一葉ちゃんwww
・真っ先にダイブしてきたねww
・あぁ・・・ここが楽園ですか・・・
・一部プレイヤーが拝んでて草。
・Minaちゃんも拝んてるwww
ん?Minaちゃん?
「おめでとうございます。カケルさん。Kazuhaちゃんと一緒に仕事させていただいてますRinと申します。」
奥からKazuhaが所属してるアイドルユニットのGirlsAnthemのリーダーRinさんが出てきた。
「これはご丁寧に。Kazuhaがいつもお世話になってます。この後ボス戦ですか?」
「えぇ、そうですね。ひとまず自力でどうにかしようかと。」
「だねー、アドバイス貰うのもいいけど、やっぱ自分たちで攻略したいし」
「というか、アドバイス貰っても参考にならなさそうにゃ。」
・Minaちゃんが一番真理をついてるww
・あれは何を参考にすればいいのかわからないww
・途中から未来予知入ってたもんなww
「そう?まぁ、頑張って。」
コメントも散々なこといってるけど、実際重要なのってキャラ作成時に選べる魔力感知だけだと思うけどな。アレがあれば相手の魔力からどのタイミングで攻撃してくるのかとか、狙いは何かとか何となく予想つくし。
あと他でいうなら魔力強化かな。火力を補えるし、タンクが使えば防御力向上も望めるしね。だから参考にならないどころか、かなり重要な情報だと思うんだけど・・・。まぁ、そういうことなら言わなくていいかな。
質問されたら答えるけどね。
「じゃ、私は一旦拠点に戻るね。みんなも祝ってくれてありがとう!ボス行く人はがんばって!」
「おう!」
「頑張るぜ!」
「やってやるぜええええ!」
「「「おおおおーーー!!!」」」
この場にいた人達にも声をかけ、私は拠点に戻った。
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