1-13:封印解除

 今日も今日とてSLAWOをやる。最近SLAWOばっかりやってるなー。前はカフェ行ったりウィンドウショッピングとかしてたんだけど、最近はあまり行く気にならない。それするならゲームしたい欲の方が強い。自分でもここまでハマるとは思ってなかった。


 いつもの宿屋でログインした後、種族クエストのタスクを消化する。残ってるタスクは『妖術を使用して敵を倒す(83/100)』と『Lv15以上』の二つだけなので、午前中には終わるでしょ。あ、一葉は今日午前中は事務所にいってるから一緒にプレイするとしても午後からだ。SLAWOの広報モデルをやらないかって話が来ているみたい。


 西の森まで行ってレベル上げを開始する。やってる最中に妖術を使用して倒すというタスクもクリアできるでしょ。


ピコン『レベルが上がりました。』

ピコン『種族クエスト:封印を解く(2/100)のタスクが完了しました。依頼者に報告にしましょう』


 1時間ほど狩りをしたらレベルが上がった。ポイントはいつも通りにSTR、INT、AGIに3ずつ。残った1をVITに振る。途中ネームドじゃないブラックベアの通常種がいたけど、こっちはさほど苦戦することなく倒せた。零距離戦闘陣の威力二倍が結構効いてるみたい。



 さて、街に戻りますか。あれ、なんか霧が・・・えっ?


 森から出ようとすると一瞬目の前が霧に覆われて、霧が晴れると種族クエストを受けた場所にやってきていた。もう、驚くことはないよ。


「やぁやぁ、基礎的な妖術は使えるようになったみたいだね。なによりだよ。それでは君にこれを上げよう。」


ピコン『種族クエスト「封印を解く(2/100)」をクリアしました。』

ピコン『クエスト報酬として「妖の鍵」を入手しました。』


 彼が渡してくれたのは白色の勾玉。昨日のネームドモンスターと同じくらいの魔力を勾玉から感じる。


「これを狐火で吸収してくれるかい?今の君ならこれを吸収できるはずさ。」


 言われた通り狐火を点け、勾玉を狐火に当てる。すると勾玉が吸収され、全身が熱くなってくる。段々怠くなってきた。


「あぁ、無理しないでいいよ。力が馴染むのに時間かかるからね。ゆっくり寝ようか。」


ピコン『 「アヤカシの鍵」を吸収しました。「壱ノ封・妖イチノフウ・アヤカシ」の解除を開始いたします。強制ログアウトを実行。再ログイン可能時刻は30分後となります。』


 えっ、強制ログアウトされるんだ・・・。ログアウトが実施され現実世界に戻ってくる。デバイスを見ると『データ更新中:3/100 %』と表示されている


「はぁ・・・相変わらずあの人はこっちの事情をガン無視してくる。ていうかあの人名前なんていうんだろ・・・」




 意図せず時間が出来てたので、とりあえずコーヒー淹れてニュースでも見ようかな・・・。へーっ、12時からSLAWOの公式配信があるのか。来週のアップデートのお知らせね。あとは・・・


『GirlsAnthem新メンバーKazuhaの彼女が配信に登場!!そのルックスに女性リスナーはメロメロに!?!?』『男の娘の彼女はイケメン女子!?話題のカケルはどんな人??』


 えええっっ!?!?なんで私がニュース記事になってるの・・・。えぇぇぇ、恥ずかしいんだけど。ちょっ、トイレ行こう。




 ふぅ・・・びっくりしたー。一葉って結構人気あるんだね。そのせいで私がニュース記事になってるし。うわっ、焼き鳥食べてるときのスクショががっつり載ってるし!恥ずかしい!


 はぁ、早くログインしたいけどまだ時間あるし、掲示板でも少し覗こうか。


 ユニーク種族は私以外見つかってないみたいだね。あとは昨日話した内容は一葉が攻略板に貼ったようだ。調薬か錬金術を持ってる人がMPポーションを作成して売りに出し、それを持ってない人は魔力草を集めてるらしい。中には農耕にチャレンジしてみようという人もいる。


 あとはエリアボスの探索だけど、ギルドで封鎖してるモンスターがどの辺にいるのか確認できたみたいで、いまそこに向かってるようだ。この調子だと今日中に南か西のエリアボスが突破されて第二エリアが解放されそうだ。


「おっ、100%になったね。じゃ、ログインしようか」




 ログインすると、見知らぬ天井が目に入る。


ピコン『「壱ノ封・妖イチノフウ・アヤカシ」の解除が完了しました。以降、すべての妖術の使用が可能になります。』


 なにやら謎なログが表示された。内容的にいままで使ってた狐火のほかに何かあるってことだよね。何があるんだろ。



「やぁ、調子はどうだい?九尾の力は馴染んだかな?」


 表示されたログについて考えてると、勾玉を渡してきた彼が声をかけてきた。

挨拶するために身体を起こそうとするが、上手く動かない。あれ、なんでだ?なんか足がバタバタしてる。


「あぁ、君は今狐になってるよ。ほら」


 そういわれて見せられた姿見には狐になった私の姿が。体長は150cmほどだろうか。全体的に白くもこもこしている。耳は人型の時と同様に内側が紅くなっている。尻尾は人型の時とは逆の色合いになっており、根本が白く、先っぽが紅くなっている。顔はシュっとしていて、目も鋭く紅い色をしている。額には縦に一本の紅い線が入っている。


「あ・・・あ、なんか、話せた。」


「おお、その姿でも話せるんだね。知らなかったよー。妖狐になった感想はどう?」


えぇ・・・会話できなかったらどうするつもりだったのこの人・・・。


「どうといわれても・・・?元々九尾の妖狐だったのでは?ステータスの種族はそう表示されてますけど」


「あー、そういえば説明してなかったね。じゃぁ、君の状況を説明しよう。まず、君が人型だった時。あの時はまだ九尾の妖狐として存在が確立してたわけじゃないんだよね。成る要素は持ってるけど、実際に成るかどうかは別の話。んー、九尾の妖狐(仮)の状態だったって思ってくれればいいよ。」


「とすると今の姿が本来の姿ということですか?」


「まぁ、そうだね。一部しか封印が解かれてないから完全体じゃないけどね。さっき君に取り込ませた勾玉が九尾の力の一部。あれがあと8つ残ってる。さて、ここまでで何か質問はあるかい?」


 おーっ!やっと会話が成立した。でもあなただれ!?まだ名前聞いてない。のでまずはそこから。


「えーっと、あなたは誰なんですか?」


「僕かい?そうだね・・・。君の親・・・みたいなものかな。あー、ルシフェル君みたいな立ち位置だと思ってくれていいよ。あれの君専用のやつみたいなね。さすがにこの世界で神の恩恵を授からずに生きてくのは大変だからね」


 なるほど、私専用のサポートAIと。いや、スキルの使い方とか何も教えてもらってないんだけど・・・。まぁいいや。次に、あ、これも聞かないと。


「私は人型には戻れるんですか?」


「今の状態だと無理だね。弐ノ封・化ニノフウ・バケル を解かないと。そのためにはもっと力をつけないとね。」


「えっ、そしたら街に入れないんじゃ・・・。」


「そうだね、入れないね。」


え、いやいや、入れないねじゃなくて。


「次の封印を解くまではここをセーフティーエリアとして開放してあげるよ。物資の売買やギルドの依頼とかは僕が仲介してあげるから、そこまで支障は出ないはずだよ。」


ピコン『???の森が解放されました。メニュー画面に帰還/機能が追加されました。帰還機能を利用することでここに移動できます。』

ピコン『???の森がセーフティーエリアに設定されました。以降、HPが0になった際はここで復活します。』


「あぁ、そうだ。外出するときは庭に出て転移したいって念じれば転移できるよ。帰るときも一緒ね」


 ふぅ、とりあえず宿屋の代わりの場所はゲット。基本的なことはできるみたい。街で活動できないのは辛いけど、まぁ仕方ないかなぁ。


「他に何かあるかい?」


「あと、訓練場みたいな場所があると助かります。動きにくいので。」


「そう?動きの確認くらいなら庭でやっていいよ。森には出れないけどね。他は?」


「ありがとうございます。他は大丈夫です」


「了解。んじゃ、いつものやつ渡しておくね。それじゃ、僕は奥にいるから何かあったら聞いてね。」


 いつもの本を渡し、彼はどこかに去っていった。いやどうやって見ろと。仕方ないので口で咥えて床に置く。


ピコン『種族クエスト「封印を解く(3/100)」を受注しました。』

ピコン『「九尾の妖狐・妖ノ尾編」を入手しました。』


いつものクエストを受注したね。内容を確認しよう。



種族クエスト:封印を解く(3/100)

<概要>

九尾の妖狐にかけられた封印を解き、力をつかいこなそう!その2!


<クリア条件>

□Lv25以上

□DEX80以上、MND100以上、INT180以上

□「九尾の妖狐・妖ノ尾編」を読破する。

□妖術のスキルレベル2以上



 おっと、ここにきてステータスの条件が厳しくなった。100ポイントを全部使って届くかどうかってくらいかな。次は貰った本を読もうか。



九尾の妖狐・妖ノ尾編

<概要>

 九尾の妖狐が持つ尻尾は、それぞれの尻尾が別々の特性を持っている。そのうちの一本、妖ノ尾は『妖術の使用』に特化した尾である。使用する妖術は「狐火・白」「狐火・蒼」「狐火・紅」「紫炎」の四種類がある。狐火は魔技(魔法などの魔力を使用した技)をコピー・発動する機能を持っており、その威力は魔技の理解度により変動する。


<狐火・白について>

・『魔技の吸収・記憶』を行う。通常の狐火よりも大きく、吸収可能範囲が広い。

  吸収:

   魔技の魔力を吸収する。

   理解度が100%を超えた魔技を吸収した場合はMPを回復する。

  記憶:

   吸収した魔技を記憶する。記憶可能量・理解度はINTに依存する。

   記憶可能量を超えた場合は記憶に失敗する。

   枠を開けるには『合成』か『破棄』を行う必要がある。

   記憶した技は『蒼』や『紅』で使用することができる。


<狐火・蒼について>

・『魔技の発動・調整』を行う。

  発動:

   「狐火・白」などで記憶した魔技を発動する。

  調整:

   魔力を通常より多く消費し技の効果を調整して発動する。


<狐火・紅について>

・理解度が100%になった魔技の『合成・強化』を行う。

 合成・強化した魔技は記憶され、「狐火・蒼」で発動することができる。

  合成:

   二つ以上の魔技を選択して合成し、新たな魔技を作成する。

  強化:

   魔石を使用して強化する。

   使用する魔石の属性・サイズによって強化率が変動する。


<紫炎>

・使用すると紫色の炎が周囲に展開される。炎の威力・量は使用した魔力量により変動する。この炎を操作して攻撃や防御に使用することができる。魔技ではないため狐火で記憶することはできない。



ピコン『九尾の妖狐・妖ノ尾編 を読破しました。ヘルプに「九尾の妖狐・妖ノ尾編」が追加されました。』

ピコン『タスク「九尾の妖狐・妖ノ尾編」を読破する。をクリアしました。』

ピコン『新たな妖術を使用可能になりました。』


◆妖術Lv1

 ・狐火(白・蒼・紅)

 ・紫炎

 <記憶されている魔技(記憶可能数:14)>

  ・ウィンドアロー  [理解度100%]

  ・ウィンドカッター [理解度100%]

  ・ライトボール   [理解度100%]

  ・ライトヒール   [理解度100%]

  ・ヒール      [理解度100%]


 おぉう・・・スキルも色々変わったし、何より姿が変わっちゃったから色々検証しないと。っと、もう昼か。一旦ログアウトして午後からは変更点の確認・検証を行おう。

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