1-9:種族クエストその2
「翔、おはよ~」
朝7時。私が朝ご飯の用意をしてると、一葉が起きてきた。昨日は遅くまで作業していたようで大分眠そうだ。
「おはよ、一葉。ご飯もうすぐ出来るから先に顔洗ってきな」
「ん~、そうする~~・・・ふぁぁ~」
ふふっ、本当に眠そう。かわいいな。
今日の朝食はご飯に味噌汁、卵焼き、ベーコン、キャベツの千切りと軽めなものにしてる。というか朝から脂っこいものはキツイ。
朝ご飯が出来たのでダイニングテーブルに並べていく。丁度、一葉が洗面所から戻ってきたところでテーブルに座り、ご飯を食べる。
「一葉、今日は五限目まであるから帰ってくるの18時半ごろになるから、晩御飯はよろしく」
「ん、了解。僕は今日午前中だけだから、帰ったら部屋の掃除とかもしとくね。」
「ありがとー」
「いえいえ」
こんな感じで朝の会話を終え、食器を片付ける。その後シャワー浴びてメイクして髪セットして着替えて家を出て大学に向かう。私と一葉は違う大学に通ってるので、乗る電車は違う。
駅まで一緒に歩き、その後は一葉と別れて電車に乗る。大体家から大学までは30分くらいで着く。
「翔ちゃんー!おはよー!今日もイケメンだねぇー!」
「あぁ、おはよう。そういう梨花も相変わらず美人だね」
「うふふ、またまたそんなこと言ってー。でも、ありがとー!」
大学につくと、私の幼馴染の
「梨花は今日は何時まで大学にいるの?」
「私は今日午前中だけだよー。そういう翔ちゃんは?」
「私は5限までフルで出る」
「うわー、大変だねぇ。頑張って!!昼は一緒に食べよー!」
「そうだね、ありがとう。じゃ、またあとで。」
その後、1限2限と続けて講義に出た後、梨花から来たLINKを返して食堂に向かう。食堂で待ってるそうだ。
「あ、来た来た。おーい」
私が食堂に入ると、梨花が私に手を振ってくる。私も手を振り返して席に向かう。
「お疲れ、翔~」
「そっちもお疲れ様。もう頼んだの?」
「うん、翔の分も頼んだよー。」
「そっか、ありがと」
ここの食堂は『今日のおすすめ』以外のメニューが存在せず、日事にメニューが変わる。なので選ぶ必要もない。会計の際に学生証をかざすと支払いが完了した扱いになる。一食500円と安い。
「翔ちゃんはSLAWOやってるの?」
「やってるよー。なんで?」
「あっ、やっぱり!?昨日一葉ちゃんの配信に出てたからさ。正直意外だなーって。全然ゲーム興味なかったじゃん?」
そっか、梨花も一葉が配信してるの知ってるのか。私がゲームしないの知ってるからこういう話題振られるの珍しいなって思ったけど。そりゃバレるよね。配信で一葉本人が僕の彼女です宣言してるし。
「まぁね、ゲーム始めたのも一葉に誘われたからだしね。まぁ、結構面白くてハマってるけど。」
「そっかー、いいなぁー。私第一陣は購入できなかったんだよー」
「あ、梨花も買うんだ。第二陣はいつなの?」
「3か月後の9月1日だよ!!次は3万台だけど、当たるといいなぁー」
「当たる当たる。大丈夫でしょ。当たったら一緒にやろう」
「もちろん!!ちゃんとエスコートしてね!」
「かしこまりました。お嬢様」
「ふふっ、よろしくね。私の騎士様」
とまぁ、こんな感じでふざけながら会話しつつ、昼を食べ終えて解散した後、私は午後の講義を受けに行く。この後も5限目まであるから大変だ。
「っ痛っ!!!・・・??」
席に座るとお腹に一瞬だけ謎の痛みが走るが、直ぐにその痛みは消えた。なんだろう・・・?変なもの当たったかな。まぁ、お腹痛くなったらトイレいけばいいや。
結局その後、謎の痛みがあったことも忘れ、五限目の講義も終えて大学を出る。
「一葉にLINK送っとこ。『今から、帰るよ』っと」
ピコン『了解!今日のご飯は唐揚げだよー!!』
こうしてやり取りしてると、まるでお嫁さんみたい。一葉の料理を食べるの久しぶりだなぁー。楽しみだ。
「ただいまー」
「おかえりー!ご飯出来てるよー!食べる?」
「うん、食べる。」
「はーい、テーブル座って待っててー」
家につくと一葉が私を待っててくれたみたい。テーブルに私と一葉の分の料理が並ぶ。
「「いただきます。」」
久しぶりの一葉の手料理。約1ヵ月ぶりくらいかな?相変わらず私より美味しい。
「んー、美味しい!最近料理してないのに、相変わらず美味しいね。」
「そりゃ翔に料理教えたの僕だもん。翔が料理覚えるまでは僕が担当してたんだからそうそう腕は落ちないよ」
そう、私が料理をし始めたのは一葉と付き合ってから。もっというと同棲を始めてからだ。それまで私はコンビニ弁当とか外食で済ませていた。
しかし、一葉と同棲するという話が出ると一葉が諸々のお金を出すということで、せめてご飯くらいは作ってあげようと思い料理を覚えようとしたのだ。
だが、私の友人は料理をせず、実家も遠いので親に教わることもできない。
結局一葉に『あなたに家のお金も出して貰ったし、せめてご飯くらいは作ってあげたいんだけど、私料理できないんだよね。だから教えて欲しい』っていったら教えてくれた。
幸い普通に料理できる程度のセンスはあったようで、同棲を始めてから一か月くらいで普通に料理を出来るようになり、以降は基本私が、偶に一葉が料理するようになった。
「ご馳走様。美味しかったよ。今日はSLAWOやるの?」
「はい、お粗末様でした。やるけど、今日はプロゲーマー時代のチームメイトと一緒にやるからごめんね。」
「ううん、大丈夫。種族クエストがあるし、私はそっち進めてく。多分今の状態でレベルだけ上がってもスキル使えないんじゃ絶対どっかで詰まるだろうし。」
「そっか。了解。片付けは僕がやるから、先お風呂入っておいで。沸かしてあるから」
「そう、ありがとう」
風呂に入って身体を綺麗にし、部屋着に着替えたあとSLAOWを起動する。いつものように私の意識は遠ざかり、ゲームの中へと入っていく。そして、目を開けるといつもの宿屋に出た。隣を見ると一葉のアバターが横になっていた。
なるほど、ログアウトしても体はここに残るのね。
さて、日課になりつつある魔力操作の鍛錬から始めますか。
とりあえずおさらいで上半身に魔力を循環させていく。・・・うん、大分慣れてきた。一周三秒くらいで出来るようになったので、次は足の方にも循環させていく。そうして鍛練を続けてる最中に一葉がログインしてきたが、軽く話して直ぐに部屋から出ていった。いやまぁ、ログインしてもずっと宿屋の部屋にいる私の方が変なんだけどね。
ピコン『魔力操作のスキルレベルがUPしました。』
そこから更に1時間ほどで全身に魔力を循環させることができるようになり、スキルレベルも2に上がった。
頭に魔力を通すのは結構難しかった。なにせ量が多いと痛む上に、その痛みに反応して更に魔力が流れ込んでいってしまうという悪循環。直ぐに魔力を発散させないとHPが減っていってしまう。危うくそれで死にかけた。
さて、次は『魔力を纏う』にチャレンジしてみよう。本には『魔力を纏うとその部位が強化され、レイスなどの霊体にも攻撃が可能になる。また、魔法に対する防御力も上昇する』と記載されている。
実戦の際には安全のために屋外でやることと書かれているのでその通りにする。東の狩場にはまだ行ったことないので、今日はそっちに行こっか。
ということで東の狩場につきました。ここは草原の先は荒野になってるようで、ここは初めからゴブリンがいる。最初の狩場としてはレベルが高いようだ。更に奥には火山が見えるので、恐らく鉱石とか取る人はこのルートを通っていくのだろう。プレイヤーもあまり見かけない。
さて、とりあえず外に出て少し北方面に移動。壁の近くにはゴブリンも来ないようなので、ある程度移動したところで訓練を開始する。
えーっと、魔力を纏う際は、途中までは魔力循環と同じ要領で纏わせたい部位に持っていく。纏わせたい部位の中心までもっていったら、魔力をそこで留め体の内部に染み込ませるようにゆっくりと広げていく。
対象の部位が淡く光れば成功のようだ。魔力を広げるときのコツはとくに記載がないが、循環が出来るのであれば問題なくできるはずとのこと。どこに纏わせてもいいが、利き腕か利き足に対してがやりやすく、纏わせたい範囲に対して十回ほど魔力を循環させてからやるといいらしい。
そしたら実際にやってみよう。とりあえず右腕に纏わせたいから右腕に対して10回ほど魔力を循環させる。それが終わったら、魔力を右手首の手前くらいまでもっていき、そこから魔力をゆっくりと染み込ませていく。
ピコン『魔力強化を習得しました。詳細はヘルプをご覧ください。』
◆魔力強化Lv1
・魔力を纏わせた部位を強化する。MP消費量は込めた魔力に応じた数値となる。
おっ、スキルを取得したな。書いてることも本の内容と一緒だ。よしっ、このまま放出までやってしまおうか。
放出は物体に魔力を流す際に必要になる技術。より極めれば魔力を弾として飛ばせるようになるとのこと。やり方は放出は魔力を指先とかに集める。そこに更に魔力を追加で流して押し出す。これだけ。
例に書いたように最初は指先とかにやるといいらしい。それから押し出すときの魔力が多いと暴発することがあるようなので注意とのこと。キラキラした光が外に出ていると成功らしい。
ま、やってみますか。まずは魔力を指先にあつめる。そしてこれを留めておいて、押し出すように追加で魔力を流す。
ピコン『魔力操作のレベルが上がりました』
ピコン『種族クエスト:封印を解く(1/100)のタスクが完了しました。依頼者に報告にしましょう』
おっ、成功したね。そしてスキルレベルが上がって種族クエストも一つ目をクリア。依頼者に報告しましょうと出てるけど、どこに行けばいいんだろ・・・?前と同じように図書館でいいのかな?わかんないけど行ってみるか。
街に戻り図書館に移動していると、来るときには見かけなかった路地を発見した。奥を覗いてみると見たことある建物と庭が見えたので、路地を進んでいく。
思った通り、前回と同じ場所にたどり着き、後ろを見るとさっき通ってきた路地はなく、森になっていた。
「やぁ、来たね。ちゃんと言われたことを実践できたようで何よりだ。これで君はスタートラインに立ったわけだ。次はこの本に書いてあることをやってみて。それが出来たらまたおいで。」
ピコン『種族クエスト「封印を解く(1/100)」をクリアしました。』
ピコン『種族クエスト「封印を解く(2/100)」を受注しました。「九尾の妖狐・基礎編-力の使い方-」を取得しました。始まりの街・エンジに戻ります』
クエストのログが流れた後、目の前が霧に包まれていき、気づけば大通りに出てた。相変わらずあの人は話を聞かない・・・。というかあっという間だな。次のクエスト内容を確認しよう。
種族クエスト:封印を解く(2/100)
<概要>
九尾の妖狐にかけられた封印を解き、力をつかいこなそう!その2!
<クリア条件>
□Lv15以上
□DEX40以上、MND50以上
□魔力操作のスキルレベル5以上
□「九尾の妖狐・基礎編-力の使い方-」を読破する。
□妖術を使用して敵を倒す(0/100)
はぁー、やっと妖術を使えそうだ。・・・難しくなければだけど・・・。もっかい東の狩場に戻りますか。宿の中で試す訳にはいかないだろうし。
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