1-3:一葉の配信

 さて、再びログインした訳だけど、どうしようか。今の時間は18時。配信が19時からだから、まだ少し余裕ある。

 狩りするのもいいけど、疲れたし何よりスキル使えないのがなぁー。あっ、なんか屋台が並んでる通りに来た。少し見て回ろうっと。


 串焼きのめっちゃ美味しそうな匂いがする。さっき食べたばっかだけど、ここはバーチャル。いくらでも食える・・・はず!少なくとも太ることはない。ということで買ってこう。


「おっちゃん、これ何の肉?」


「ん?あぁ、来訪者か。これはホーンラビットのもも肉だ。油が乗っててうまいぞ。1本100zだがどうする?」


「ん~、そしたら2本頂戴。それとこの街のこと知りたいんだけど、どこ行ったらいい?」


 そういいながら200zを渡す。残りの所持金は9800zだ。というか所持金全然確認してなかった。その場でモグモグしながら話を聞く。めっちゃうまい。これ一葉にオススメしとこ。


「あぁ、それなら冒険者ギルドに行くのがいいな。中央広場の直ぐ傍にあるから言ったらいい。あそこは24時間やってるから、いつでも入れるぞ。」


「モグモグ・・・ゴクン。そうなんだ。ありがとおっちゃん。肉美味しかったからまた買いにくるよ。」


「おお!そうかそうか。うちは11~14時と、17時~20時の間やってるから、また来てくれ」


「わかった。ありがとねー!」


「おう、またなー!」


 ん~、美味しい。安い肉だけどめっちゃうまい。モグモグと食べ歩きをしながら中央広場・・・最初にログインした場所に戻る。直ぐ傍に冒険者ギルドがあるとは思わなかったな。っと、ここだね。食べ終わったクシは光となって消えていった。ゴミが出ないって便利でいいね。


 あ、今気が付いたけどゲーム内時間とリアルの時間で連動してるんだね。日本だけじゃなく海外でもそれは同様なのかな?他ゲームだとリアルの1時間が3時間だったりするみたいだけど、このゲームはそういうことはないみたい。


 ギルドの中は一日の仕事を終えた住人たちが酒を飲みながら談笑してて、なかなかに騒がしい。でもこれが冒険者ギルドって感じだよね!。受付はあそこかな。


「こんばんわー。冒険者登録をお願いしたいんですけど。」


「はい、来訪者の方ですね。冒険者の説明は必要ですか?」


「はい、お願いします。」


・初回登録は無料であること

・冒険者ランクはF、E、D、C、B、A、S、SS、SSSランクまであり、最初はFランクから始まること。

・クエストは自分のランクと同じ、または一つ上のランクしか受けられないこと。

・3か月以上クエストを受けなかった場合、活動休止扱いとなり、活動を再開するには再開料金として1000zかかること。

・半年以上活動していない場合はギルドから除籍され、再登録するには10000zかかること

・冒険者用の倉庫と金庫を扱えること


 他にも冒険者の心得だの色々あったが、大体こんな感じ。


「以上となります。他に何か質問はありますか?」


「いえ、大丈夫です。」


「では、こちら水晶に手をかざしてください。」


そういって差し出された水晶に手をかざす。


「はい、ありがとうございます。こちらがギルドカードとなりますので、なくさないようにしてください。」


 おお、せっかくだから試しに鑑定してみよう。


『失敗しました。正規の手順で実行してください』


 あぁ・・・そうだった。マニュアルだから駄目なんだった。

 とりあえずインベントリに入れておく。


「手続きはこれで以上となりますが、他になにかありますか?」


「えーっと、魔法についてどなたかに学びたいのですが、資料とかはありますでしょうか?」


 マニュアル操作。それはつまりこの世界の住人と条件が同じ・・・のはず。しかしいきなり師事するにはまだまだ実績も信用度も足りてない。なので先に資料から探すことにする。


「あら、来訪者の方からそのように言われたのは初めてです。向上心が高いのはいいことですよ。資料でしたらここの二階の資料室と北広場にある図書館にございますので、そちらをご利用ください。訓練所も開いてますので試しに魔法を使う場合はそちらでご利用ください。」


「なるほど、ありがとうございます。あとオススメの宿はありますか?」


「でしたら、『宿り木の主』という宿がおすすめですよ。一泊500zと来訪者の方には優しい値段です。ここの広場を含めて東西南北各広場に面した箇所にありますよ」


「そうですか、ありがとうございます。」


「いえいえ、頑張ってくださいねー」


 ということでまずはギルドの脇にある階段を上り資料室に向かう。

 中にあった資料は主に『採取の仕方』『戦闘での魔法の使い方』『強敵から逃げる技術』など実践的なことばかりだ。

 私が知りたいアーツの発動方法に関連するような資料は見当たらなかった。

 となると図書館かな。


 っと、もうすぐ19時だ。喫茶店とかあればそこで見ようかなと思ったけど、それらしいところもないし、オススメしてくれた宿を取ってそこで見よう。

意外とすぐそばにあった。


「いらっしゃいませ、一名様ですか?」


「はい、一人です。」


「かしこまりました。一泊500zとなります。」


そういわれたので500zの受付に渡す。


「はい、確かに受け取りました。こちら部屋の鍵となります。奥の階段を上がって突き当りを右に入った先になります。ごゆっくりどうぞ。」


 受付の人に言われた部屋に入る。

 中はビジネスホテルのような小さい個室でベットが部屋に置いてあるだけの簡素な部屋だ。風呂トイレもないが、それは私たちたちのような来訪者仕様になってるためだろう。

 一葉の配信まであと10分かぁー、魔力操作でもしてみるかなー。魔力器官があるのはわかってるし、ここに意識向けたら出来る気がする。


 座禅組んで集中モードに入る。みぞおち付近にある魔力器官に意識を向けると何かが漏れだしているのを感じるから、多分これが魔力かな?


『魔力感知を習得しました』


 おお、あってるね。そしたらここから漏れてる魔力を掌付近に集めて・・・集め・・・、出来ん!!!

 いや、流石にいきなり集めたりは出来ないよね。少しずつ動かしてみよう。

 更に集中して、漏れてる魔力に意識を向けて・・・、これを少しずつ少しずつ掌の方に動かしてくイメージで・・・。あぁ、途中で途切れて霧散しちゃった。もう一回・・・。もう一回・・・。


 ってもう配信始まるまであと一分じゃん!


 えーっと、配信サイトを開いて、GirlsAnthemで検索して・・・これかな?


『GirlsAnthem新メンバー発表!!』


 ふーん、新メンバー?誰だろ。


『あ、あ、配信できてますか?聞こえてたらコメントくださいー』


・ktkr

・大丈夫

・聞こえてるよー

・OK

・〇

・猫耳可愛い

・(>W<)


 あれ、カズハがいない。この配信であってるよね?


『はい、ありがとうございます。改めまして、GirlsAnthemリーダーのRinと、』


『Minaだにゃー!!!よろしくにゃー!!』


・Rinーー!

・Rinちゃんのエルフ姿神々しい。後光がさしてる。

・Minaちゃんの猫耳可愛い。

・Minaにゃー!!!!

・新メンバー発表まだー?

・マダー?


『たくさんのコメントありがとうございます。新メンバーについて気になってるかたが多いようですので早速紹介しますね。Kazuhaちゃんどうぞ!』


『はーい!呼ばれてピュっと参上!元AegisOne不動のエースKazuhaだよぉ~!!よろしくね~~!!!』


・え?

・は?

・ちょっ、待って

・Kazuhaちゃんって『あの』Kazuha??

・女の子だったんか

・マジカ

・過去プレイしたことのあるゲームみたら全部性別選択可能なゲームしかやってなかったってことは。

・つまり女の子


『あ、ちゃんと男の子だよー!ほら、性別もちゃんと♂になってるでしょ?』


・えっ、いや流石に加工やろ。

・このゲーム加工は無理だぞ。どんなに弄ってもちょっと変わるくらいしかできん。男なら尚更無理。

・じゃぁ、リアルはこれに限りなく近いってこと?

・そこらの女の子より女の子しててずるい。

・私の女子力全部持ってかれてる。

・私も・・・女の子の自身無くした・・・

・でも可愛いからOK

・それな

・可愛いは正義

・She is He!?!?


 ふふふ、うちの一葉はかわいいやろ。世界一かわいいんです!!

 っていうかGirlsAnthemで活動してるっていってたけど今日からかい。事前に聞いてた話と違う。まぁいいんだけど。


『コメントのみんなも驚いてるにゃー、私も事務所で顔合わせした時はビックリしたのにゃ。』


『そうですね。同じチームに所属しているとはいえ、競技勢のAegisOneの方と直接お会いすることはありませんでしたから。』


『ははは、大体そんな反応だよね。この後の予定は西の草原で狩だっけ?』


『えぇ、そうですね。Lv5のホーンラビット、奥に行くとLv7~8のゴブリンが出る地帯です。』


・え、もうそんなレベル上がったの?

・早くない?

・リリース開始から10日間は経験値ブーストがあるからそのおかげじゃない?にしても早いけど。

・みんなレベルいくつなの?

・役割はどうするの?


『私は5、ミナちゃんが7、カズハちゃんが3ですね。タンクがいないので、ミナちゃんに回避タンクをやって貰って私が弓でアタッカー役、カズハちゃんはサポートですね。』


『了解にゃー、早速移動にゃ!』


 移動を開始したGirlsAnthemの面々、周囲のプレイヤーの多くはみんな似たり寄ったりの顔してるから多分プライバシーに配慮した設定になってるんだろう。配信に映ってもいいよっていう人が映るような感じかな?


『ついたにゃー!そこそこ奥に来たけど意外と人いるのにゃ』


『そうですね、ですがタゲが被るようなことはないでしょうから、早速やってきますか。』


『了解、回復は任せて。余裕あったらライトボールで支援するね』


・おっ、早速始まるか

・Kazuhaちゃん大丈夫か?この辺ゴブリン出る地帯でしょ?

・Minaちゃんが強いから大丈夫やで

・Rinちゃんも弓うまいよ。


 近くのホーンラビットを狩始める。Minaは両手にダガーを持った二刀流スタイルでタゲ取りに専念、なるべく弾くように動いてる。そして出来た隙をRinが弓でアタックしてる。味方がダメージうけたらKazuhaが回復。


・Minaちゃん回避タンクも出来るんか。めっちゃうまいな。

・Rinちゃんの弓の精度相変わらずおかしい、飛び跳ねてるホーンラビットの目に当てるとか。

・Kazuhaちゃんの回復も安定してる。

・いうてこの辺は初心者エリアやからな。経験者二人と別ゲーのプロだったら一匹くらい問題ないだろ


 狩りを開始して5分くらい経ち、余裕そうということでゴブリンに挑戦。

火力が足りず少し時間がかかっているが、問題なさそうだ。


『Rinちゃん後ろ!!』


ガキン!!


『キャッ』


『MinaちゃんとRinちゃんは前に集中してて。後ろは僕が引き受けるから』


 前のゴブリン2体に集中してたところ後ろからゴブリンアーチャーの攻撃。アーチャーの隣には通常のゴブリンがいた。

 アーチャーにライトボールを放ちつつ、隣のゴブリンに杖で殴りにかかる。


・えっ、こんなところにアーチャー!?

・そんな奥にはいってないよな?

・たまたまリポップしたとか?

・いや、てかKazuhaちゃん神官だよね?なんであんな足早いの?

・個性とか?このゲームの特性は職業関係ないみたいだし。

・てか普通に上手いな。レベル差結構あるのに。あの感じだとレベル10じゃないの?

・上手いっていうレベルじゃないでしょ。後ろに目ついてるよ。アーチャーとノーマルの相手をしながら後ろのMinaちゃんとRinちゃんにヒールしてる。

・まじかよwww、バケモンやんけwww

・あの動きは紛れもなくKazuhaや。FPSのランク戦をナイフオンリーで日本一位取った男の動き。


『Kazuhaちゃん!こっち終わったよ!』


『了解!あとよろしく!』


 MinaとRinの戦闘が終了し、あとは後ろの二匹だけとなった。一葉がある程度削っていたこともあって、こっちはそれほど苦戦せずに終わった。


『みんな、お疲れ様。Kazuhaちゃんサポートありがとう。』


『いいえー!無事で何よりー!お疲れ様!』


『お疲れ様にゃー、まさかこんな近距離にゴブリンアーチャーがリポップするとは思わなかったにゃ』


・Kazuhaちゃんに気を取られがちだけど、MinaちゃんとRinちゃんの安定感抜群だな。

・挟まれさえしなければ4体同時でも行けそう。

・割とピンチに見えたけどこの状況で誰も回復ポーション使ってないのやばすぎる。

・これが最前線プレイヤー・・・


 一葉は当たり前として、他二人もかなり上手いな。んー、この後も引き続き狩りが続く感じかー。モニター縮小できるみたいだし、左下に避けてラジオみたいに聞きながら掲示板でも覗いてみるかな。

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