第23話 ギル友を作ろう

「う~ん、どうしたものかな……」


 宿舎の中、はぁと大きめのため息をつく。

 ミクがそれを鬱陶しそうに見る。はぁ……本当にどうしたものかな。

 

「なによ……ウザいわね」


「口で言わなくてもわかるよ……でも流石にこの状況はヤバいよ……」


「なにがヤバいっていうのよ。あんたいつもヤバいヤバいって言うわよね。口癖なの?」


「そんなことはどうでもいいんだよ! そうじゃなくて、これだよこれ!」


 俺は袋の中身を机に落とし、見せる。

 カリンカリンとものが2,3個落ち、そして終わった。


「どういうこと!?」


「? ……それはお金よ」


「そういう概念の話をしてるんじゃなくて。どうしてこんなにお金が少ないんだってこと! 説明してもらえるよね!?」


 ビーン硬貨が5個もない。ほとんどない。

 これじゃあ宿一泊分のお金もなかった。今日が終わったら出て行かされる。


「そりゃ、いっぱい使ったからでしょ」


 当たり前だろうと言わんばかりの言い方で言われた。

 その言い方に驚きあきれつつも、返答する。


「……ちょっと待て。なににそんな使ったんだよ。まだ三日目だぞ。あれだけ稼いでから三日しか経ってないんだぞ」


「う~ん、そうね。一番使ったのはやっぱり食事よね。朝、昼、晩でいっぱい買ってたらいつの間にか無くなってたわ。仕方ないでしょ。食事だもの。取らなくちゃいけないのよ!」


「ここにきて逆ギレ!?」


 言ってる最中に急に音量が大きくなった。昨日の食事がなんか豪華そうだと思ったのもうなずける。こいつ飯に関しては使ってしまうらしい。


「あのな! 作ってくれるのは感謝してるけど、あんまりお金を使うなよ! 俺たちはギルドじゃまだ一番下のクエストしか受けれないんだぞ!?」


「わかってるけど、仕方ないじゃない。今度からは規制するわ」


 余裕つぶやく。


 ……これ、怒ってもいいのかな。……いや、いいでしょ。俺なんか食事なんかそんなに使ってないのに。昼と夜しか食べないのに!


「……大体、いっぱい稼いだって言ってもそこまでじゃない。今日、クエストに行けばいい話でしょ。そんなに怒ることじゃないわ。私ならすぐに敵を倒せる自信はあるわ!」


「……そうじゃない。そういうことじゃなくて。クエストっていってもそんな討伐系の依頼があるかどうか怪しいんだ。俺たちの位はまだ一番下! 前も見ただろ、あの掲示板。酷い有様でゴブリンくらいしかなかったじゃないか! しかも準備ちゃんとしないとキツかったし!」


「でもいまなら倒せるわ」


「だから!」


「どうせ、あの掲示板よ。一つくらいいいクエストがあるでしょ。そういうのは行ってからにすればいいのよ」


「……まあ、行っていいのがなかったたら、その時考えればいいか」


 重要なのはお金だ。これが無くなると非常に困るし、さらに増やさないと元々の目的である孤児院が立てれない。

 増やすのが最優先だ。

 ……ってあれ、そもそもなんでお金がなくなったんだっけ。


「今からギルドに行くとして。ミク、これからは俺が食事に関しては買ってきます。お金の管理はミクには任せておけません!」


「えぇぇぇ…………」


 不機嫌そうにしつつも俺が怒っているのが伝わったのか渋々うなずいた。

 そういうわけでこれからお金の管理は俺に移った。


 そしてある程度の準備をしてギルドに向かう。

 辺りは昼で早く選んで行かないと帰るときには夜中とかになりそうだ。 

 ファイアーボールがあるから灯りはなんとかなるかもしれないが、疲れるからあまりやりたくない。できれば、早く帰りたい。


 そうしているうちについた。

 早速クエストがある掲示板の方に行く。

 

「……ついた。ついた。さてさて、クエストの方はどれどれ……」


 正直に言おう。

 微妙過ぎる……また動物の発見だの勉強を教えてくれだので報酬は少ない。

 はぁ……これはやる気でないな。


 そんなときだった。後ろから話しかけられた。俺ではなく、ミクが。


「あれ、ミクちゃんじゃん。今日はファクト君とクエストかな?」


「……クリアじゃない。そうよ。ファクトと一緒にクエストに行くのよ!」


 優しい声だった。青髪の青年で見た感じ、ミクの友人かなにかだろう。前に俺が寝ている間に人気者になり、ここで友人を作ったとかなんやら言ってたし。

 ファクト君って呼ばれるのはちょっとだけ心外だけど。

 隣には2人の男女がいた。仲間だろう。


 女の人は手に大きな杖を持っていて、魔法使いだろう。

 もう一人の男の方は盾が構えてあり、防御系の人とわかる。


 俺がその人の方を向いていると、俺が見ていたのを気づいたらしくこっちに近づいて来た。


「ああ、どうも。ファクト君。クリア・ラン・ジーニアだ。よろしくね。隣にいる2人は右から順にガンズ・アリマーとカリン・アリマーで姉弟なんだ」


 二人が俺に向かってお辞儀をする。


「……俺は知っていると思いますけど、ファクトです。それでミクとは知り合いなんですか?」


「うん、ギルド長と一緒にいたから話しかけたら仲良くなって……多分、このギルドの中だったら彼女結構知り合い多いと思うよ」


「そうなんですか……」


 なぜか知らないけど、アイツ人脈が広いんだよな。

 あんな性格なのに。それでなんで俺にはできなんだろう。不思議でたまらねぇよ……


「……まあ、そう落ち込むなファクト君。ライバルは多いと思うけど、ミクちゃんは大丈夫だ。安心して頑張りなよ!」


 あれ、なんかこいつ勘違いしているような気がする。

 ミク? ライバル? 頑張る? なんのことだろう。全然わからない。……まいっか。興味ないし。


「……そういえば、クリアさんはどうしてここに? クエストですか?」


「そうだよ。討伐系のクエストに行こうと思っててね。あいにくうちのパーティーは防御役も回復役も居るんだけどどうしても攻撃が強くなくてね。一応頑張れば倒せるって程なんだけど、それだったらもう1人か2人仲間を探していこうかなって思っていたところさ」


「……どんな討伐クエストなんですか?」


「ああ、スケルトンにゴブリン、スライムさらにゴブリンロードもいるといった迷宮探索だよ。多分半日もかからず帰ってくると思うけど……それがどうかしたのかい?」


「……報酬はどれくらいで?」


「たしか、30コーン硬貨だったかな。位が白の初心者の君からしたらちょっと高いと思うかもしれないけど、これくらい黄色の僕たちじゃ普通なんだ。協力してくれる人には半分の15コーン硬貨をあげようかなって思ってるんだよ。どうしようかな……誰か協力してくれる人いたっけな……」


 俺はそれを聞いてあっと思い浮かんでしまった。 

 お金も解決し、レベルも上がり、経験も積める。しかも仲間がいるから安心して戦えるというおまけつき。

 これは……これは行くしかないっしょ!


「ねぇ……クリアさん」


「ん?」


「そのクエスト。俺たちと一緒にしませんか?」


 俺はクリアさんたちを誘ってみることにした。

 

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