第30話 なんでも知れる女の子になりたい。

「勉強しますか」


 今日は平日だが外が雷雨と暴風によって、突如休校となった。


 僕も、もう受験生で六月に差し掛かっている。


 今年の夏休みはあまり、遊ぶことはできないけれど、せめて絵里ちゃん達とは一緒にいたいな。


 そう言えば、絵里ちゃん大丈夫かな。


 朝起こしてご飯食べさせたっきり会ってないけれど。


 その時、ひと際大きな雷が落ちた。


「あっ..........停電だ」


 今の時代、便利だよな。スマホの光があるから。ブレーカー、ブレーカーっと。


「絵里ちゃんの家もきっとブレーカー落ちたよな。大丈夫かな」


 ..........やっぱり、心配だ。行くか。合鍵もらってるし。


「お邪魔するよー」


 絵里ちゃんの家には驚くほど人気がなくリビングは真っ暗だった。


 ってことは、部屋か。


「..........絵里ちゃん大丈夫…って」

「せ、雪花お兄さん!!」


 絵里ちゃんは布団にくるまってがたがたと震えていた。


「怖かったよー」

「大丈夫、大丈夫だからね」


 背中を擦ってあげると、安心して泣き出してしまった。


 十分ほど経つと、落ち着いてきたのか「雪花お兄さんの匂いしゅき」とか言い始めた。


「あ、そういえばなんで雪花お兄さんお家にいるの?学校は?」

「それはね」

「まさか、私とイチャイチャしたくて学校さぼっちゃったとか!?」

「普通に、学校休校になった。この雨だし」

「なんだー、そうだったのか」


 と若干不服そうに頬を膨らませる。


「..........あ、でも、絵里の事心配してきてくれたんでしょ」

「うん。そうだよ」

「むふふ。雪花お兄さんしゅき」

「はいはい」


 頭を撫でると、ネコのように頭を手にこすりつけてくる。


「雪花お兄さんって、絵里の事なんでも分かってくれるよね」

「なんでもは分からないかな」

「そんなことないもん。いつも私の事よく見てくれてるもん」

「そうかな?」

「そうだよ。でも、雪花お兄さんは全然雪花お兄さんの事教えてくれないし。私も雪花お兄さんの事なんでも知りたい!!」

「僕の事かぁ」

「手始めに..........どんな女の子が好き?好きな髪形は?どんな体型が好き?料理はできたほうがいい?おっきいお胸は好きかな?」

「え、あ、そうだね」


 絵里ちゃんからの次から次へと出てくる質問。


「ショートよりロングのほうが好きかな」

「ふむふむ」

「体型はあんまり気にしないかな」

「なるほど」

「料理は..........僕がしてあげたいかな」

「ふむ」

「その..........胸は大きいほうがいいかな」

「えっち」


 その最後に..........


「他にもいろいろあるけれど、じゃあ、最後ね。..........私の事..........好き?」

「っ!!」


 いつもとは違う笑み、恥ずかしさを漂わせつつも期待をしている目。笑みの裏側で若干の不安が見え隠れしている。


 これって......でも..........

 

 



 

 


 

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