第42話

 次の日の朝。

 開店準備を済ませ、カウンターで待機をする。


 閉店時間が来ると、5人のお客さんが来店された。


「いらっしゃいませ」


 武器を持っている人はいない。

 そう思った時、ドアが開き、一人のお客さんが来店される。


 ゲイルさんだ。

 一人で対応はちょっと、きついそうだ。

 いまのうちにナザリーさんを呼んでおこう。


 調理場へ向かい、ドアを開く。


「ナザリーさん。カウンターお願いします」

「はーい」


 手を洗っていたナザリーさんが返事をした。

 売り場に戻り、カウンターで待機をする。


 すると、ゲイルさんがニコニコしながら、近づいてきた。

 何か良いことでもあったのかしら?


「ミントちゃん、これ開けてみな」


 ゲイルさんは言って、布の袋をドンッと置いた。


「何ですか?」

 

 ゆっくり袋をあけ、中を覗いてみる。

 そこには麻痺消し草が沢山入っていた。


「何これ、凄いです」

「そうだろ、危ないから毒袋1個は店内に持ち込んでいないが、手に入れてあるぞ」


「本当ですか! わぁー嬉しい」

「そうだろう、そうだろう」


 ゲイルさんは誇らしげに腕を組んでいる。

 ドアが開き、一人のお客さんが来店される。

 誰かしら? ゲイルさんが居て見えない。


「いらっしゃいませ」

「俺のコミュニケーション能力は、クラークと違って凄いんだぜ」

「そうなんですね」


 ゲイルさんってクラークさんを呼び捨てにしているけど、一体、

 何歳なんだろ?

 見たとこ30代に見えるけど。


「それで、いくらで買い取ってくれる?」

「ちょっと重さ量ってきますね」

「あー、分かった」


 あ、クラークさんだったんだ。

 さっきの聞いていたのかな?


 調理場に行って、地面に置かれている食品用ではない量りに乗せる。

 えっと、メモメモ。

 メモを手に取り、計算する。


 おまけをして……100Pってところね。

 カウンターに戻ると「毒袋も合わせて、全部で220Pになります」


「おぉ、そんなに良いのか? ミントちゃんが一晩付き合ってくれたら、もっと安くてもいいんだぜ?」

「なに馬鹿な事を言っている」


 クラークさんが後ろから声をかけると、ゲイルさんがビクッとする。

 慌てて後ろを振り向き「ゲッ、クラーク。いつからそこに?」


「クラークと違ってのところだ」

「冗談に決まっているだろ」

「分かっている。だが、品がない」


「おい、ミント。こいつがちゃんと、毒袋を持っているか確認してから、売った方がいいぞ」


「信用ねぇな……ミントちゃん、付いておいで」

「はーい」


 カウンターを出て、クラークさんの横を通る。


「ミント」

「はい」


 クラークさんの方を向く。


「あいつは信用できる奴だ。きっとある」

「はい?」


「だが、信用も出来ない奴もいることは確かだ。俺はそれを教えたかった」

「はい! 分かりました」

「ミントちゃん、早く~」


 外でゲイルさんが呼んでいる。

 私はクラークさんにお辞儀をすると、「はーい、いま行きまーす」

 

 外に出ると、出入口から少し離れた位置に、布袋が置いてあった。


「中身みる?」

「はい」


 ゲイルさんが袋を開けてくれ、中身を見せてくれる。


「確かにありますね」

「当たり前だ。クラークはいつも、信用してくれないんだよな」


「いいえ、信用していましたよ。たぶん、照れ臭くて言えないんじゃないですか?」

「は? 照れ臭い?」


 ゲイルは照れ臭そうに頬を掻きながら、「ふっ、だったら良いけどよ」

「確認できたので、戻りましょうか?」

「そうだな」

 

 中に入ると、紙袋を持ったクラークさんが、出口に向かって歩いていた。

 ふと棚を見ると、一つも残っていない。


「ミント、薬を全部買ってしまった。また補充をしておいてくれ」

「おいおい、クラーク。いくらミントちゃんが可愛いからって、買占めは良くないぜ?」


「だったら、お前にもくれてやる。外で待っているから、早く来い」

 と、クラークさんは言って、外に出た。


「まったくあのオッサン。もうちょっと優しく言えないのかよ」

「口下手ですから」

「知っているよ」


 ゲイルさんは返事をして、ニコッと笑った。

 私はカウンターに行くと、220Pをレジから出し、「220Pになります」

 と、ゲイルさんに差し出した。

 ゲイルさんは受け取り、確認すると、「確かに」


「またお願いしますね」

「分かった。また来るよ」


 ゲイルさんは返事をすると、出入口の方へと歩いて行った。


「ふふ」


 二人にとって、きっと年齢は関係ないのね。

 そんなことに囚われない深い絆で結ばれている。そんな気がする。

 さて、ほっこりした所で、頑張りましょうかね。


 その日の夜。

 寝る準備を済ませ、布団に入り、今日の整理をする。

 手持ちのお金【2660P】


 明日は休みだし、ナザリーさんに素材を入れる収納箱を、外に置いていいか確認したら、買いに行こう。


 あと、サイトスさんの所に行って、

 あとは……何をしよう?


 たまには公園で、のんびりしようかな。

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