大賢者はなぜ死んでいる!?

ボソボソさん

プロローグ 大賢者死にました

 この世界に来て、はや何年だろうか。

 俺は、魔王を倒して、大賢者ととりあえずは呼ばれるようになった。

 まぁ色々あって、今は王都からは少し離れた郊外に住んでいる。

 理は変わったんだ。仕方のないことだ。

 今では、俺のところなんかに来てくれるのは、俺の弟子たちくらいのものだ。

 まだ20代前半なのに、なんでこんな黄昏てんだろ……俺。

 弟子たちはみんなちょっと変わってるけど普通に可愛い、それが唯一の安らぎでもある。

 まだ20代前半なのに、なんでこんなオヤジくさいんだろ……俺。

 もう少しで、またこの世界を楽しんでいけるかなと、前向きになれるかなぁって思ってたのになぁ。

 くぅぅ、まだ20代前半……

 もう、魔王は倒したし、俺の存在はこの世界では重要ではなくなった。この世界での情熱たぎる、夢とロマン的なものは終わってしまっているんだ。

 というか、オワッテル。

 結局、ずっと横たわったまま。

 当たり前か、そう……俺は、死んでしまっている。

 本当、ドジというか……まぁいつも大体転生してきたときは、似たり寄ったりの状況だったかもしれない。


 この世界で死んでしまったのは初めてだけど、死ぬとしばらく幽体? 精神体? でいるようだ。俺の精神体は、自分の動かなくなった身体のちょうど胸あたりから少し顔を覗かせるようにひょっこり出てるようなイメージだ。

 蘇生できたら、この間の記憶とかってどうなってるんだろう?

 今まで、仲間たちを生き返らせてきたけど、あいつらもこんな感じだったんだろうか?

 そういえば、俺以外みんな死んでしまったレリンクア研究施設の攻略の時とか、思ったより時間かかっちゃったし、外は暑かったのに中は怖いくらいにひんやりしてたから、膀胱ギリギリでとりあえず立ちションしてからみんなのことを生き返らせてたこととかもあったけど、あれ全部見られてたのかな? 俺の小便の時のルーチン見られてたのかな?

 そんなことに想いを馳せながら、俺は見慣れた部屋の景色を下から見上げ、朝日が差し込んでくるのを眺めていた。

 もう、なんだかんだ朝なのか……


 この世界のルールだと、死んでから24時間以内なら、蘇生が可能らしい。

 だからそれまでは、精神体でいるのかもしれない。

 今のところ、蘇生アイテムは、この世界では見つけられていないから、蘇生魔法に頼るしかないが、蘇生魔法の使い手は、片手で数えられるくらいしかいない。しかもそいつらがあと24時間以内に、こんな辺鄙な場所に来て、俺の死に気づいてくれないといけない。

 なかなかのハードモード、けっこう詰んでる状況だ。

 だがまぁ、まだ可能性はあるにはある、俺の弟子たちはそれなりに頻繁に顔を出してくれている。俺の二番目の弟子のキュリオ、あいつは、変わってるけど、回復魔法に関しては俺に引けを取らない。

 俺の弟子たちと言ったら、ちょっと変人だけど、可愛いし、腕前は一流だし――


 その時、俺の家の扉が勢いよく開く音がした。


「リテラ様ー! チャリスが馳せ参じましたよー!」

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