第40話 相続人たち 1

相続を口約束で交わしていた為、相続人は19人もいた。


本来、相続を普通にしていれば、相続人は2,3人で済んでいたが、


没落するとは、思いもよらかったのだろう。


永続的に金持ちで居続けれるほどの金は確かにあった。


しかし、この親族は皆が酒飲みで、毎日宴会を主催していた。


死んだ祖母も高齢でありながら、お酒を使ったシャーベットをよく作って


私たちに出してくれていた。


元々は大地主だった。私の父の家も隣にあるのは切り売りで買い取ったせいだ。


本来は人や不動産屋に土地は売るものだが、数百坪では済まないほどの土地を持っていた。その為、政府に売ったりもしていた。


警察署を建てる時にも大きな土地が必要だった為、大叔父が土地を売った。


土地とは別に500憶ほどはあったが、そのうちの200億程度は、日々行われる宴会に消えた。その人とは会った事は無いが、どうやら学校の教師をしていたらしい。


そして大水害の時に数百億を投じて、街の人間の多くを助けた。


酒のみであったが立派な人だった。しかし、相続人たちはその欠片も無い程、


皆、小物になってしまった。


通常、考えて見れば当たり前なのではある。


苦労というものを殆ど知らずに皆、生きていた為、当然、人間性などを考える必要もないまま育っていく。


相続人の中にはかなりの高齢者もいた。相続が終わる前に死んだ。


相続者は18人になったが、私は問題になる事が分かっていた。


皆、面倒事は嫌いだ。当然、私も嫌いだ。


特に発言権も無い私は、特に入るべきでは無かった。


まるで導火線に火をつけた状態で、爆発までのリミットは私には見えていた。


そして忠告もした。したが、「まだ大丈夫よ」とその叔父は言っていた。


私はその土地の売却に当たり、支度金として幾らあったのかは正確には知らない。


ただ、タンス預金として三千万あったのは、父から聞いていた。


そこから支度金として一千万~一千五百万ほどを支度金にした。


それが約2年か3年かで全て消えた。


消えてから騒ぎ出した。全く持って愚かな連中だとしか言いようがない。


そして私への未払金は、その叔父と結託して盗んだものとされた。


これ以上引き延ばしたら必ず来年の集まりで、問題になると


私は強く叔父に忠告したが、理解しなかった為、問題になる前に多額の未払金を請求した。


私は大嵐が来る前に、強く叔父に未払金のうち百万だけでも払うように


強く請求した。そして彼は百万だけ支払った。


私の中では手切れ金のようなものだった。問題が起こればどうなるか分かっていた。


そして予想通り、叔父は皆から攻められた。甘い考えを持っていた叔父は、一般人と


同じように、どうせ言うだけだろうと高をくくっていた。


しかし、次の日、正式に弁護士から連絡がいき、彼は焦った。


焦った彼は私に、一度返金してくれないかと言ってきたらしい。


私は事の流れが読めていた為、百万だけ受け取り、すぐに携帯の番号やメール等は全て迷惑フォルダに入れていた。


そして連絡を絶った私に彼は手紙をよこした。私はそれを父から受け取ったが、封も開けずそのまま読まなかった。


読めば疲れる内容だけしかない事は分かり切っていたからだ。


しかし、父は妹や弟たちから、手紙の内容が何だったのか探るように言われていた。


私に内容を聞いてきたから、それはすぐに悟れた。


そう。“日常が非日常になる時には必ず裏で何かが動いている”私の哲学の言葉だ。


面倒事が何よりも嫌いな父が、内容を聞いて来ると言う事は、有り得ないからだ。

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