第38話 父 4

父が最後の最期で、暴力では無いが凶行に走った。


それは自分の兄弟と私を天秤にかけて、


彼らのほうが大切だったからだった。


普通の人なら何か事情があったとか、本当は想っていたとか

何かに理由をつけて人は皆、悪いほうには考えない。


それはいたって普通の事だ。

私でも本来はそう思う。


しかし、父の場合は言い訳の出来ない凶行であった。

私を足蹴にして、まるで地獄へ突き落す行動に出た。


母が警察官を呼んだ話しはしたが、二人は黙秘を貫いた。

それはとてもじゃないが、世間に言えるような事では無かったからだった。

私の話を聞いてくれた警察官の人は、私に起きた悲劇を、

3時間も話しを聞いてくれた。


当時、私は四面楚歌状態で、誰もが知っている中、

私が日々体に異常が増え続け、癌の父よりも先に死ぬのでは?

と言われるほどボロボロにされた。


幼馴染の一件も分かってはいたが辛かった。

話してみんさいと彼は言ったが、信じない事はわかりつつも話した。

そして爆笑された。私は苦笑しか出なかった。


特に私の父母を命の恩人だと思っていた、実際そうなのだが

彼は本物を見分ける力が無かった。


私が作り話しをして実際に自殺する事のほうが有り得ない。

しかし彼は私の父母に心酔しきっていた。信じすぎていた。


私に起きた事はまるで無かったかのように誰も口にせず

私は前以上に人に会う事をやめて行った。


この話は非常に複雑で信じ難い事ではあるが、最後までハッキリと

私に言った。「自分は悪く無い」と言って去る事になったが、


その入院が決まった三カ月前から私は最期の勝負だと思った。

正確には奴の死が決定打ではあったが、入院されたらそのまま祖母の時のように


面会謝絶にされるのは目に見えていた。


だから入院先が決まって3カ月後に入院すると知ってから、

私の血を吐く程の日々が始まった。


あの男は最後「自分は悪く無い」と言った。


しかし三カ月の間。私は夜の9時から12時まで毎日欠かす事無く言い続けた。

それは譲歩に譲歩を重ねたものであったが、拒否された。


何故夜の12時までだったかは、信じ難く、これは母も呆れていたことだが、

「もう寝ようや」と初日に言われた。涙を流して訴える私に対して、

何の感情も無いようにただそう言われた。


私は初日にして、諦めかけた。しかし現実で3カ月しか猶予は無い。

だから無駄だと分かりつつも言い続けた。3カ月、90日間、

私の涙が途切れる事は、一度も無かった。


そう。この話に触れると今も肺炎のような咳が出る、そして出血をしている。

長い間でもうどれだけ体がヤバい状態かは医者以上に理解している。


医者は知識はある。実戦に勝る知識は無い。私は調べに調べ上げ、そして


従妹などの親戚の医者にも聞いた。勿論、体調不良は隠してだ。


自分で感じるからこそ、痛みの程度や、発作がきそうな前兆は分かる。

しかし、それは医者には分からない。あくまでも知識だけだからだ。


物静かでいつも昔からそんなに話す父では無かった病気以前の父は言っていた。


医者だって分からない事は沢山ある。症状だって似たようなのも一杯あるし、

ただ診察しただけで一発でこれだと分かれというほうが無理だ。と言っていた。


私の病気は本当に自分でも信じられないが、ストレスから全てが来ている為、

治しようが無い不治の病だ。私にある知識だけでは治すことは無理だと知ったが、

だからと言って、治したいとも思えるはずもなく、私は生きている。


しかし、今、再び立ち上がろうとしてはいるが、簡単では無い。

私は、頂きが見えない山に登ろうとしている。

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