第25話 自分 6

もう出入口の小さな部屋にいる警備員さんとは


顔なじみになっていた私はそのまま入っていき自転車を止めた。


そして何の連絡もしてはいなかったが、叔父の部屋に行った。


その頃はたまに通うようになっていた為か。


別段驚く事も無く、笑顔で招き入れて


自分の学科の生徒に紹介された。


とんでもない家の子だと、叔父は私を紹介した。


そして生徒と暫く話している間、私は置いてあるPCでゲームをして


話が終わるのを待っていた。


話が終わり、私は叔父の部屋に入った。


何かあったのか? と尋ねられた。


私は事の詳細を話した。


叔父の顏は曇り空のように、雨は降らないが、


晴れる事は無い。珍しい顔つきを見せた。


私はソファに座り、叔父も対面にあるソファに座った。


そして、これは、「わしから聞いたとは言うな」と最初に言われ、


暫く黙った後、「あの子は自殺したんだ」と言った。


首吊り自殺で死んだと聞き、私は信じられなかった。


最後に会った時も、普通だったからだ。


叔父は悲劇だと言い。ストレスを子供相手にかけ過ぎだと言った。


そしてその子の親も医者であった。


子供は伸び伸びさせて、分からない事を教え、悪い事をしたらお仕置き


していれば、自分で自分の道を見つけるものだったが、


今の時代じゃそういう親も減ったと、叔父は話してくれた。


色々話した後、私は家に帰った。私は自分がまだ子供だという自覚はあった。


色んな意味で大人には敵わないと知っていた。


だから会わないように御飯を食べ、お風呂に入った。


それは不自然では無かった。避ける必要もないほど家は広かったからだ。


そして時間が流れ、あの季節がやってきた。


私は季節から、その事を思い出していた。


辛い気持ちは皆、言わないが思っている。親が敷いたレールだ。


二郎が私にしか相談しなかった。真実を知っているからだ。


人は経験しないと本当の事を知ることは出来ない。


彼は賢いからそれを知っていた。だが、壊れた。


そして、嫌でも思い出すその季節が来た。


そして、きっちり、一年後、弟も首を吊り、自殺した。


何とも言えなかった。しかし、自分にもある可能性だとは分かった。


そして、それほどまでに私は、苛酷な小学生時代を送っていた。


一体どんな気持ちだったかは、誰にも理解出来ない。


虐待もあっただろう。私もされていた。同じような人生を歩んでいた


兄弟は二人とも幼くして、首を吊り自殺するという選択をした。


弟は兄の部屋で全く同じようにして、自殺した。


私は死や、気が狂う世界の中で、生きていた。


医者の息子のあるあるでは、皆、家出の経験をしている。


親に対して逆らうが、結局負ける。


私のように負けない人間は、私は知らない。


だが、必ずどこかにいる。


世界に唯一無二な人間は存在しないからだ。


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