第14話 二郎 2

 彼が残ったのは、会社の跡継ぎの為だけだった。


20代の頃には、経営の困難さを話したり、今度の見通し等、


色々話した。


彼は現実の中で生きていた。だからこそ彼は困難が来ると、


分かっていても、苦難を乗り切る為、その目は輝いていた。


命の宿る目をしていた。


高校の頃、信じられなかったが、二郎は虐めにあっていた。


私は二郎にその事を相談され、聞けば昔の塾仲間の一人である


事が分かった。私は二郎に、私の名前を告げるよう言った。


私の名前を出したら、知っていると答え、それからは


虐められなくなった。その頃はまだ元気だった。


しかし、あまりの重圧に彼は壊れてしまった。


そして跡継ぎの為だけの存在であったはずが、


跡継ぎから外され、父親の弟である叔父が社長となった。


一度、私の母親が社長の妻を連れて来ていた。


私と二郎が友人であった事を知りながらも、私に紹介しようとした。


良いお母さまですね。と言われたが、私は返事をしなかった。


これほどまでに愚かな人間に対して、何も見えてないと思った。


そして、私はその時、今の自分では助ける事は出来ないと悟った。


私は話しかける事もできず、その場を後にした。


本当に何も分かっていない母親は、二郎の調子が


良くなってきてるみたいだと、私に話しかけた。


それは最悪の状態からの話であって、昔の二郎の話では無い。


私は今から5年前かもっと前かは、忘れてしまったが、


二郎と同じ奈落の底に落ちた。


今まで何度となく落ちてきた闇では無い。


本当に立ち上がる事の出来ない場所に私はいた。


頭に浮かんだのは、二郎の事だけだった。


どうすればとか、どうしよう等と思うことすら出来ず、


私の日常はそこで終わった。


毎日チェックしていたメールも、PCの機動も、


テレビも、映画も、ドラマも、何もかもが出来なくなった。


そして、体内出血から大量の血が出て、肺炎のような咳が出だした。


今は咳は出なくなったが、出血は週に1,2度ある。


そして今は心不全になった。だが私は医者たちに囲まれて育った。


近しい従妹や親族だけでも、10名以上の医者がいる。


表に出ない話や、今の医療の進み方や、その他諸々もろもろ聞いてきた。


心不全の事も直接聞いてみた。実際、私もなって分かったが、


あれは対処と時間との勝負だ。対処が速ければ問題無いが、対処が遅れれば


手遅れになる。医者や他の分野でもそうだが、結局は過去の遺産から


生まれた知識に基づいて、対処しているだけであって、


医者本人が、かかった訳では無い。それを踏まえると


症状からの予測しか出来ないのが現実だ。


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