第10話 祖母 2

 私は何故、断絶に至ったのかは知らない。


ただ二人とも聡明で、美しい人であった事は


蔵に眠っていた写真から知った。


祖母が祖父に嫁ぐ写真も出て来た。


そして、以前話した水害の写真もあった。


古い家系で二階建ての蔵の中には、真実の歴史が眠っていた。


遺体は一応、再確認の為、父は警察署に行ったが、


父も医者であり、検視官と話し、原形をとどめておらず


頭部の傷跡から転んだ際、死んだのであろうと推測され


処理された。


私は東京に出てきて、色々考えた。


二度と会う事は無い事も分かっている。


私は色々な知識があり、歴史にも強く、


数え切れないほどの相談にも乗って来た。


私は母は重度の精神病だと知っていたが、


常に薬を飲んでいた為、その素顔を見る機会は無かった。


家は広く、数日程度なら会わない事も普通だった。


家政婦さんは2人いて、愚かな母は、私の中学時代の


同級生の友人を家政婦として雇った。


そんな事をすれば家の内情がバレるのは明白であり、


やることなす事、全てが理不尽だった。


全ては体裁の為に、ただのハリボテの為に生きていた。


調理師免許を取り、元々、料理の腕は私の友人たちも


驚くほど、美味かった。


そして、料理教室を始め出した。


問題は体裁の為に、月給は殆ど取らず、材料費は高かった為、


赤字で続けていた。それは全くもって意味の無い事でしかない。


自分の家で生徒が作ったとしても、材料自体が違うのだから


味も落ちる。


それを数年続けた。


私には理解を超えた事だった。


しかし、東京に出てきて、私は保健士さんに相談する事を勧められたが


元々、誰にも相談した事の無かった私は断り続けていた。


話すとしても膨大な量であり、内容も複雑な上に、自分がもしその話を


されても、信じないと思っていた。


私は独りであらゆる事を考え抜き、話してみる事にした。


私に多くの時間を出来るだけ作れるよう、調整し、私の話を真剣に聞いてくれた。


私はそれに対して、偽りは一切せず、真実を話す事が、返礼だと思い話しだした。


保健士さんに私は、「本当に分からない人は、何度言っても分からない」と言われ


たが、祖母と妹の、共に死ぬまで断絶を貫き通した事は、正直言って、


気分が晴れないと感じていた。私は仲介人である、頭の幼い年上の人に、母への伝言


を伝えるよう頼んだ。


“これまでの事を全て許す”と伝えた。連絡はしてこないのも分かっていた為、


私は悪く無いのに、私から身を退かねば、終わらないと考え、


敢えて和解を提案した。それは人生で得た現実を、この目と心で感じたからだった。


しかし、常に嘘をつき続けていた母には、逆に猜疑心しか生まれなかった。

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