一章 第六話

如月が受けたのは、「先日如月が付喪神を討伐した山で、再び付喪神が目撃された」というものだった。

そして、その山に行けという指令もあった。

そんなわけで、如月はその山、御隠山みかくしやまへ向かっていた。


(俺は鎌の付喪神を確かに倒したはず)


如月の目で付喪神が消滅したことを確認したため、それは確かであった。

となると、目撃されたのは別の付喪神ということになる。


問題なのは、で、なおかつ、短い期間で付喪神が目撃されたということだ。


如月は、鎌の付喪神を倒すよりも前にいたのではないかと考えていた。



この御隠山には、とある言い伝えがあった。

それは、「この山に一人で入ると神隠しに合う」というものである。

ゆえに、御隠山というのだ。

如月も、その言い伝えのことは知らされていた。


よく考えれば、わかることだった。

言い伝えでは、何も残さず消えてしまうのだそう。

もし鎌の付喪神が原因だとしたら、何かしらの痕跡が残るはずなのだ。

しかし、何も残らないということは、、、


(別の付喪神が、鎌の付喪神よりも前にいたということか)



如月は、御隠山に着いた。

気配を探るようにして山を登った。

ところどころに折れた木々があるが、それは辻切との戦闘によるものである。


「これは、付喪神の気配。本当にかすかだが、こっちから付喪神の気配がする」


如月は、気配のするほうへ走り出した。

辻切と戦った場所より、少し行ったところ。

そこに、神社があった。


「この神社から、付喪神の気配がする」


しかし、あたりは静まり返っており、付喪神の姿は見当たらない。


如月は刀を抜き、宙を斬った。

パリィン!

何かが割れる音とともに、裂け目が現れた。


「これは、、、結界型の妖術。どおりで俺が気が付かなかったわけだ」



妖術にも種類があり、『開放型』と『結界型』である。

『開放型』妖術とは、現実世界に影響を与える妖術で、たいていの付喪神がこの『開放型』妖術を使う。

辻切が使った『鎌鼬』もこの『開放型』妖術に分類される。

一方で、『結界型』妖術とは、現実世界ではなく、付喪神が作り出した空間に影響を与える妖術である。

『結界型』妖術は、その中に付喪神がいた場合、探知ができないという特徴がある。

この『結界型』妖術を使う付喪神は、自身の作った空間に引きこもていることが多く、それ故に『神殺し』に見つかりにくく、長寿となることが多い。



如月は、この空間内を進んでいた。

一面が鏡張りであり、ところどころに立っている円柱も鏡張りである。

空は鏡張りになっておらず、青空が広がっていた。


まるで万華鏡みたいだな、と如月は感じていた。


しばらく進むと、円柱に、付喪神が座っていた。


「あら、ここに誰かが来るなんて、何年振りかしら」

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