第10話 2Girls 1Weed
キーンコーンカーンコーン。チャイムが鳴って休憩時間になった。
「ねぇ、かすみちゃん?問題出してあげよっか?」
ガオーとライオンの真似をしながらほのかが聞いた。
「…いや、いいや。」
かすみは、持参した植物図鑑に目を向けながら言った。
「わかった。じゃあ、問題です!」
「誰か、トリカブト持ってきて。」
「3mの鎖にライオンがつながれています!そのライオンは何m先までの草を食べる事ができるでしょーか?」
ほのかはニコニコしながら言った。
「お!またちゃんと問題言えてるじゃん!やっぱりほのかはやればできるのよ!身内として誇らしいわ~!」
かすみはほのかの頭をなでなでしながら言った。
「ありがとう!でも、かすみちゃんが身内にいると一族の恥になるから2度と言わないでね!」
ほのかは撫でられながら笑って言った。
「と、まぁかすみを褒めるのはこの辺にしておいて…1ついいかしら?」
かすみは真面目な顔でほのかを見た。
「えっ?どうしたの?」
「前々からその問題に対して思ってたことがあるんだけど…それの答えって『ライオンは草を食べない』よね?」
「うん!そうだよ!かすみちゃんすごーい!」
「ええ、ありがと。でもさ、それってホントに正解?」
かすみは深刻な表情で言った。
「ん?違うの?」
「ライオンだってその気になれば草ぐらい食べられると思わない?」
かすみはほのかをまっすぐ見ながら続けた。
「問題には食べることができるかってあるんだから、ライオンが物理的に草を食べられる範囲は正解になると思うの。だから本来この問題は3mの鎖で繋がれてても行ける範囲が正解なはずなのよ。でも、一般的な正解は『ライオンは草を食べない』でしょ?問題としておかしくない?」
かすみはほのかをまっすぐ見た。ほのかも同様にかすみのことを無表情で見つめ返した。
2人はしばらくお互いを見つめ合っていたが、数十秒が経過した頃にかすみが唐突に口を開いた。
「かすみちゃん…ほんとに食べれる?」
「…えっ?」
ほのかの予想外の言葉にかすみは戸惑った。
「本当に草を食べることができる?」
「えっ?だから本気出せば食べれるってさっき…」
「野良犬がおしっこしたかもしれないよ?下手したらうんちしてたかもよ?いや、もしかしたら犬じゃなくて人間がしたかもしれないよ?それでも本当に…貪り食える?」
「…貪る必要ある?いや、仮に人間の排泄物がこびり付いた草でも本気出せば…食べれるわよ!」
「ふ~ん。」
ほのかはそういうとカバンから何かを取り出し、それをかすみに渡した。
「じゃあ、はい!これ、その辺で拾ってきた雑草。食べてみて?」
ほのかが渡してきたその雑草は、ヨレヨレになっていて何か茶色の物体がこびり付いていた。
「ひぃい!ばっちぃ!な、なに渡してんのよ!!」
かすみはその雑草を慌てて投げ捨てて、すぐさま手を洗いに行こうとした。
しかし、ほのかは床に落ちた雑草を拾い上げ、かすみの前に立ちはだかった。その目に光は宿っておらず、まるで亡霊のようだった。
「かすみちゃん、本気出せば食べれるんでしょ。ほら、早く食べてみてよ。さあ…食べてみなよぉおおおお!!!!!」
ほのかは急に鬼のような形相をして、かすみの口に雑草を押し当てだした。
「や、やめて!ムリ!ムリだから!ごめん!謝るから許して!!もうその問題にケチつけたりしないからぁ!!」
かすみがそういうとほのかは自分の腕をひっこめた。
「な~んだ!かすみちゃん、草食べれないじゃん!それならライオンだって嫌がって草食べないよ!じゃあ、この問題は『ライオンは草を食べない』が正解ってことでいいね!」
ほのかはそういうと持っていた雑草をぱくりと食べてしまった。
「ちょ、ちょっと!!あんた何食べてんの!?それは…うっ…うおぇっ…!!」
かすみは気分が悪くなり吐きそうになった。口を押さえながらほのかの方を見ると彼女は平然とその雑草を咀嚼していた。
「…あ、あんた、それ…なんで平気なのよ?」
「大丈夫だよ!かすみちゃん!お弁当に入ってた野菜とナス田楽の味噌だから!かすみちゃんが雑草食べれるかどうか試すために嘘ついてたんだよ!ごめんね!」
ほのかはもぐもぐしながら満面の笑みで言った。
しかし、かすみはまだ気持ち悪そうにしていた。
「かすみちゃん?大丈夫だよ?お弁当の具材…」
ほのかの話を遮ってかすみは言った。
「あんたそれ一回床に落ちたやつ…。」
かすみの話を聞いたほのかは急に気分が悪くなり、吐いた。
ほのかが吐いたのを見て、かすみもつられて吐いた。
キーンコーンカーンコーン。チャイムが鳴って休憩時間が終わった。
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