第2話 救世主〜転校先は不良(ヤンキー)校!?

次の日。


ヤケに視線を感じる。


見てみると、私の周囲にいる男子がチラチラて見ている。



「何か?」


「別に」


匠 蒼介(たくみ そうすけ)




「何かついてる?」


「いや」


木戸 勇真(きど ゆうま)




「じゃあ、どうしてジロジロ見るわけ!?」


「可愛い〜から〜」


吉良 優人(きら ゆうと)



「…それはどうもっ!」

 


私は3人の視線を感じながら1日を過ごしていた。



その日の学校帰り、正門を出ると、また、昨日の奴等がいた。




《うわっ!また出たよ!》




「おやおや?昨日のお嬢さんじゃん」

「今日こそは、付き合ってもらおうじゃねーか!」

「お断りします!」

「いや!今日こそは付き合ってもらう!」



「………………」



《はあぁ〜…面倒…こういう輩って諦めつかないからな…》




その時だ。



「何してんの〜」



背後から声がし振り返る視線の先には、吉良君がいた。




「………………」



「彼女に何か用〜?」

「昨日、出かける約束したんだよ!」

「ふ〜ん」

「勝手な事、言わないで!第一、あなた達が勝手に」

「だって〜」


「とにかく!あなた達に付き合ってる暇ないから!約束したなんて勝手に決めつけないで!」


「諦めなよ~」


「吉良は、黙ってろ!」




《知り合いだったんだ…と、言う事は、二人も知ってるってわけだよね》



「ていうか〜、無理矢理もどうかと思うけど〜?」

「吉良は、引っ込んでろ!」


「俺も用事はないよ〜。…でも…彼女に関しては…見て見ぬふりはできないかな〜?」



《…あれ…?…一瞬…変わった…よね…?》



本当、一瞬だった。




「彼女、困ってるから解放してあげたら〜?」

「断る!」

「ふ〜ん…じゃあ、仕方ないね~?」



そう言うと相手に向かって歩み始める。




「や…やんのか?」


「まっさか〜」




私達の横を通り過ぎる、次の瞬間―――――



グイッと力強く手を引っ張られる。



《えっ!?》



「走るよ〜〜」


「えっ?ええーーっ!!」


「なっ!お、おいっ!」


「追えっ!」




「き、吉良君っ!!」

「逃げるが勝ちって言葉知ってる〜?」

「それは…」

「問題起こすの更々ないし~」

「えっ?」



「処分受けて、何の損得もないし、自分が辛いだけでしょ〜?」


「そうだけど……」


「撒けたら良いけど、アイツら、しつこいからな~」




そして、私達は、ゲーセンに駆け込み、人混みに紛れ込む。


吉良君は様子を伺いながら逃げ、何とか撒けた所で私達は別れた。



次の日の放課後。



「見ーーっけ!」

「なっ!」

「昨日は、散々だったから今日は、強制だ!」



グイッと腕を掴まれ強制的に連れて行かれる。




「や、やだ!離してっ!」


「駄ーー目ーー」




《小さな子供かよ…!》



そう突っ込みたくなる対応だ。



「………………」




《どうしよう…?と、とにかく逃げなきゃ!》




「あーーーっ!」



私は空を指差す。


案の定、彼等は空を見上げ、その掴んだ手が緩んだスキに私はスルリと逃げる。


まあ、私も人に言えない子供騙しのやり方だけど…




「なっ!」


「ま、待ちやがれ!」




私は走って逃げる。


しかし、追い掛けてくる彼等。




そして――――




私は狭い路地裏に入った。


もちろん、行き止まりは計算済だ。


遣り合う場所の、打って付けの場所だから好都合なのだ。




「逃げなくても良くね?」


「全くチョロ、チョロと!」



「あんた達しつこい!行きたくないものは行きたくないんだけど!?」


「別に出かけるくらい減るもんじゃねーだろ?」


「そういう問題じゃないんだけど!?あんた達には

違う形で遊んであげるわよ!」




私は眼鏡を外した。




「眼鏡外したら、また雰囲気変わるじゃん!」


「えっ?もしかして…そっち?」


「そっち?って、どっち?つーか…良からぬ想像すんなっつーの!あんた達の脳みそ破壊してやりたい!」


「だって、こんな所連れて来るって事は、そういう事でしょう?」


「そうとも限らないでしょう?今から、教えてあげる♪」





ドカッ


股関を思い切り蹴った。




「ってぇーー…この女…」

「超ーー痛いでしょうねーー?」

「この女っ!」

「しつこいら痛い目に遭わせただけ!」

「ムカつく!覚えとけよ!」




そう言うと走り去った。




そして―――――




私は、後悔する自分がいる。




「…本当…敵つくってどうするんだろう?……帰ろう……」



私は帰る事にした。



今迄、彼氏がいた試しがない。




男友達はいたけど


恋人として


付き合う事はなかった。



告白しても友達止まり。


だから、私に恋なんて必要ないと思った。



そして容姿を変え、色々な男の子とやり合った。


女の子なのに男っぽい私の性格に


恋愛なんて文字は合わないんだ――――





次の日、また彼等は現れた。



「昨日は、どうも俺の手下共が御世話になったみたいで」


「ええ、その節はどうも!それじゃさようならーー」


「待ちなっ!顔貸せ!」


「顔?貸せません!だって顔取れないしーー」


「てめー、馬鹿にしてんのか!?」



「いいえ。当たり前の事を言った迄だけど?」

「痛い目遭いたくねーなら顔貸しなっ!」



「………………」



「これ以上、私に構わないでくれない?」

「悪いが、それは出来ねーんだよ!」


「…そう…」




ドカッ


バックで殴る。




「ってー!この女!いきなり何しやがる!」


「あー、ごめーーん」




そして、グイッと相手の胸倉を掴んだ。



「…ウザいんだけど!?」


「…なっ…!」


「分かったなら二度と来んなっ!」




そして掴んだ胸倉を離し帰り始める。




「………………」




その途中、私はぼんやりと帰る。


そして、誰かとぶつかってしまった。




「ってー!何処見て歩いてんだよ!」


「…すみません…ぼんやりしていたので…」


「あーあー、洋服濡れたんだけどさーー、弁償代よこせよなー」


「弁償代?」




《チンピラ…?それとも…タチの悪い不良?》



「ごめんなさい!持ち合わせなくて…」


「だったら、ちょっと付き合いな!」


「すみません…私、急いで…」




グイッ

腕を掴まれる。




《…っ…この人達…ヤバイ連中だ…》




私は抵抗するのを辞めた。



その時だ。



「その子に何か用ですか?」


誰かが尋ねてきた。




「あ?」


「ぶつかってから洋服を汚された御詫びしてもらう所だったんだよ!」




ふと声のする方に目をやると、吉良君の姿があった。




彼の名前を呼ぼうとしたが、首を左右に振る仕草をし



「すみません。彼女は悪気があったんじゃないと思いますよ~。何とかなりませんか〜?」



「悪いが、それには答えられねーな」



「じゃあ、どうすれば彼女を解放してくれますか~?」




「………………」




「どうもこうも…」


「じゃあ弁償代よこせば解放してくれますか〜?お兄さん達、話し分かってくれそうなんだけど……駄目ですか?公共の場で面倒な事になったらお兄さん達も困るでしょう?」


「そ、それは…ま、まあ良いっ!今日の所は勘弁してやるけど、二度とねーからな!」




そう言い放つと、去って行った。




「……かった…」



私はヘナヘナと体が崩れていく。



慌てて吉良君は、抱き留めた。



「大丈夫?」


「…うん…」


「あーいう輩、ヤバイ連中だし下手に挑発したら危険だから〜」


「…うん…手を掴まれた時、そう感じたから」



掴まれた腕が少し赤くなっているのが分かった。




「思い切り掴まれた感じだね〜?」


「…あ…うん…男の人は、まあ力強いし…」


「それ分かってて、喧嘩したら駄目だよ〜」


「えっ?」


「さっきもだけど以前やりあっていたでしょう?」


「えっ…?…あっ…えっと…」




《嘘…見られて…》



「俺達が助ける間もなかったけど、無茶しない方が良いよ〜」


「…吉良君…だから視線感じてたんだ…二人も見かけたって事なんだね」



「……………」




「…私、女の子じゃないみたいてしょう?」


「別に、そうは思ってないけど~」


「良いよ。気を遣わなくても。正直、言ってもらった方が良いし」


「棚峅さん…」


「ごめん。それじゃ」



私は笑顔を見せ、去り始める。



「ちょ、ちょっと待って!」




グイッと腕を掴み引き止められた。




「……………」




「…無理して笑顔つくんなくても良いよ」



ドキン…


見抜かれていた。




「誰もそんな事は思ってないから」


「………………」


「でも…これだけは3人からのお願い。無茶しない事を約束して。どんなに君が武術が出来ても、女の子だって事、きちんと分かってて欲しいんだ。何かあった時は、遅いし、君が傷付くから」



「…ぅして…?」


「えっ?」


「どうして、そんなに優しくしてくれるの?放っておけば良いじゃん!」


「出来ないよ!君は女の子だから」


「……………」


「もっと自分を大切にしなよ」


「……………」




彼の言葉は


凄く胸に響いた


そして


嬉しかった




『女の子だから』



初めて異性から


言われた台詞だった





「…ありがとう…吉良君…」



自然と笑みがこぼれた。




「その笑顔を忘れないで」


「えっ?」


「帰ろう!近くまで送るよ〜」


「…でも…」


「女の子の一人歩きは危険だから」


「…ありがとう…」




私は素直にお礼を言って、送ってもらった。




そして、いつの間にか3人といる事が増え始めた。


何だかんだいって、結局、男友達になってしまう私。


特に、ここは男子校と変わらないから尚更だ。




「負けたらジュースおごりーー」と、蒼介。


「絶っ対!負けへんで!」と、木戸君。


「私だって負けないからねーー!」


私達、4人のゲームバトルが始まった。


カーレースゲームだ。



そして――――



「言い出しっぺの蒼介が奢りってありえないし!」


「うるせーな!」



その時だ。



「あれ〜?蒼介じゃん!女連れて良いねー」

「…何だよ!」


「ねえ、彼女、そいつ等と、一緒にいないで俺達と付き合いなよ」


「やだ!」


「何だよ!人がせっかく誘ってやってんのによ!」


「せっかくとか、誘ってやってるとか、そんな言い方する人嫌い!」


「つー事で悪いな?彼女、俺達が良いんだって!」


「それに、あなた達、知らない人だから…ごめんなさい」




すると、何やらコソコソ相手が話をしている。


そして、私を見た。



「…おい女!」

「何ですか?」

「伝説の女!?」



「えっ!?で、伝説の…女…?何ですか?その変な情報。私、そんな伝説を残すような事、何もしていないんですけど」



「………………」



「今日は、取り敢えず帰る!行くぞ!」



そして奴等は去った。



「おいっ!何だ?さっきの伝説って」と、蒼介。


「知らないし!」


「何やらかしたん?」と、木戸君。


「いやいや、本当、知らないんですけど!?」


「誰か変なデマ流したとか〜?」と、吉良君。


「えっ!?」


「ありもしない事を誰かが流したんじゃないの〜?」


「おい、おい。冗談にも程があるぞ!だとしたら、コイツあぶねーだろ!?」




「そうだけど~希美ちゃんの知らない話しが出回ってるって事じゃないの〜?」


「…嘘…で…しょう?や、やだな〜…辞めてよ!」


「大丈夫!その時は俺達が助けるから〜」


「そうそう」


「だから俺達と一緒にいれば大丈夫なんちゃう?」


「うん…ありがとう…」

















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