(一)-4

 全く完全に一〇〇パーセント、思い出せなかった。

 そんなことで私がずっとその男性をじっと見ていると、彼も気づいたらしい。もぞもぞと動き出し、体を起こした。眠気まなこをこすりながら、左右を見回していた。きっといつもとは違う目覚めで違和感を覚えたのだろう。

 そして部屋を一通り見回した後、昨日来ていた服のままの私の方を見て、「あっ」と声を上げた。

 なにが「あっ」だ。悲鳴を上げたいのはこちらなのに! なんで女子の部屋にあんたみたいな男子がいるのよ! さっさと出て行きなさいよ!という気持ちをめいっぱい込めてその男子をにらみつけた。

「ごめん、ここ、どこ?」

 彼も、状況がわかっていないようだった。



(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る