第5話⁂”オオカミ怪人”の行方!⁂



 現在ではめっきり見られなくなった見世物小屋だが、海外の奥地や途上国に今でも奇形を売りにした見世物小屋が、存在すると聞いた事が有る。


 昔はお客様の目を楽しませる為に、身寄りのない女、子供や一般市民を誘拐したり、観光目的でやって来た観光客を誘拐して、ワザと奇形にして見世物小屋に立たせていた。


 たとえば…誘拐した子供の身体をあえて変形させ滑稽な形にさせ見世物にしたり、更には誘拐した人間の両手両足を切断して、ダルマ人間として見世物にして、あくどい金儲けをする興行主は大勢いた。


 要するに、お金の為にはどんな手段も選ばないという事だ。

 全く恐ろしい話だが、現在では形を変えて弱い立場の人間が、更に残酷な形で葬られているのが現状である。


 例えば子供や若者に対しての、強制労働、強制結婚、性的搾取、臓器売買など様々な人身取引犯罪がある。

 残酷な話だが、それだけお金になるという事なのだ。



 さ~て御託を並べるのはここまでにしてと———

 本題に入って行きたいと思います。


 要するに、奥多摩湖近辺の寂れた民家に、身寄りのない子供や、奇形の人間を集めて海外で金儲けをしようと目論んでいる悪徳業者が居るのかも知れないと言う事なのだ。

 そこで、ひょっとしたら例の”オオカミ怪人”の噂が聞けるかもしれないと思い、悪徳業者の住む奥多摩湖近辺にある民家に、足を進める直樹と美咲。


 何故そう思ったのかと言うと、実は奥多摩駅近くの”オオカミ怪人”の自宅と奥多摩湖は目と鼻の先で、”オオカミ怪人”は、家族と一緒に奥多摩駅近くに住んでいたとの情報を掴んだからなのだ。


 そんなに近い場所に居たら、ひょっとしたら悪徳業者と会っていても不思議ではない。

 目を付けられていたかもしれないと思い駆け付けた2人。



 ”オオカミ怪人”は、どうも奥多摩駅近くの西多摩町で誕生したらしいのだが、徐々にふさふさ毛が生え始めて小学校では「多毛症」のせいで酷い虐めに遭っていたそうだ。


 そこで心配になった親が文京区に有る大学病院の、高名な医師に診てもらっていたのだが、脱毛を試みるも又直ぐ生えてきてしまうし、剃るのも大変で、治療薬を配合して貰い、最近は親の仕送りで文京区近辺のアパートで独り暮らしを始めたらしい。


 その時にコンビニエンスストアなどで目撃されていた可能性は、十分に考えられる。


 その話を聞き付けた仮面舞踏会の招待客達は、早速”オオカミ怪人”の住むアパートを血眼になり探し回っている。


 だが、折角そのアパ-トを探し当てたと言うのに、そのアパートの住人の話では最近めっきり見掛けないと言う話だ。


「最近、夜もアパートの明かりが付いていないし、バイオリンの音色もピタリと鳴り響かなくなったので、もうアパ-トは引き払っているのでは?」


 そんな話を聞いてスッカリ拍子抜けしている仮面舞踏会の招待客達。

 あれだけ美しい音色を響かせていたのに、どこに消えたのか?


 直樹と美咲の調べでは、どうも三歳の頃からバイオリンを習っていたらしい。

 道理で美しい響きだったのだ。


{折角二〇一五年六月某日に開催される、仮面舞踏会までに”オオカミ怪人”を探し当てよう}と躍起になって居たのに、肩透かしを食らった招待客達。


{パ-ティ―会場に一緒に連れて来てくれた者には、法外な商品の贈呈が待っていると言うのに、一体どこに消えたのだろう?}


 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 一方の〔OUGI探偵事務所〕の直樹と美咲は、奥多摩湖の寂れた民家を必死に探し回っていたが、遂に探し当てる事に成功した。


 だが、既に引き払った後だった。

 これは怪しい?

 もし自分達にやましい所が無ければ、そんな逃げ隠れする必要が無いのだが?

 やはりあの”オオカミ怪人”は悪徳業者の目に留まり、騙されて連れ去られたのか?    それとも強制的に捕まえられ拉致されてしまったのか?


 そういえば奥多摩駅近くの”オオカミ怪人”の自宅と奥多摩湖は目と鼻の先、ひょっとしたら何処かで悪徳業者の目に留まり、目を付けられていたのかも知れない。


 自宅にいる時は親の監視の目が光っていたので、手も足も出せなかったが、アパ-トで独り暮らしを始めたので、それを良い事に上手いこと丸め込んで、連れ去ったのかも知れない?



 また近年は、親が御金欲しさに我が子を売り飛ばす事例も、いくつか報告されている。

 そんな親は極稀だとは思うが?


 実は…”オオカミ怪人”の家では、家庭内暴力が日常茶飯事だったらしい。

 その為親が世を儚んで、売人から声をかけられて手渡したのかも知れない。


「よくもこんな体に生んでくれたな~!」


 三十五歳にもなると言うのに働きもしないで、親の顔さえ見ればお金をたかるか、酷い言葉を吐くか、暴力を振るうか、とんでもない”オオカミ怪人”。


 恨み言と暴力を振るう子供の将来を儚んで、売人の上手い話に載せられ、丸め込まれて”オオカミ怪人”を手渡したという事は十分に考えられる。


 そう思い直樹と美咲は今度は”オオカミ怪人”の住む両親の元に向かった。





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