本音 ~元彼side~ 5月14日

 杏梨があまりに金田の気持ちをわかっていないので、つい素っ気ない態度をとってしまった。


 杏梨の家から自宅までの道のりでそうたは少し反省していた。


 そうたは正直なところ、杏梨が羨ましかった。好きな人と恋人同士で両思いなんて羨まし過ぎる。


 そうたにはもうそんな思いを伝えられる恋人はいない。

 今から彼女の家に行くけれど、彼女には決して会えない。

 どんなに好きでも、思いをぶつけることがまた彼女を傷つけかねない。


 そうたは同じ過ちを繰り返したくはなかった。


 昨夜、杏梨とセックスしようと思えばできた。でもできなかった。


 彼女への愛しさを杏梨を喜ばせることで紛らわした。そうたは杏梨を利用した。


 そうたはあのとき金田の代わりだったし、杏梨はあのときあいりの代わりだった。


 あいり、それは最近まで付き合っていたそうたの元カノの名前だ。


 自宅でシャワーを浴びると、そうたはあいりの家へ向かった。




 その夜、金田から1件のメッセージが届いた。


 金田:

 杏梨と別れた。今まで俺の我が儘に付き合ってくれてありがとう。



 このメッセージを見て、杏梨が泣いているのが想像できた。


 でも、そうたは何もしなかった。

 そうたの頭の中はあいりのことでいっぱいだったから。

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