第5話 #ハル




 公立高校には二人とも合格していた。



 新しい制服が来るとマキは早速その制服を着て、お店で仕事をしていた俺に見せに来てくれた。


 母は凄く楽しそうに「マキちゃん可愛いね! こんな可愛い女子高生、学校でいっぱい男の子からモテて大変になっちゃうよ?」とはしゃいでいた。

 仕事中は無口な父でさえ制服姿のマキを見て、目尻を下げて顔を綻ばせていた。



「ハル君、どうかな?」


「うん」


「似合ってる?」


「うん」



 凄く可愛いくて、高校生に見えるマキにドキドキして、家族の目もあって恥ずかしくて、俺は「うん」しか言えなかった。






 高校へは俺もマキもそれぞれ自転車通学だった。


 俺の入学した高校は、自転車だと30分程。マキの高校は15分程度。


 マキから「朝は途中まで一緒に行きたい」と言われ、入学式の翌日から早速自転車で二人並んで通学を始めた。




 マキは高校生になると、今まで肩までの長さだった髪を伸ばしたいと言って、髪型もポニーテールにすることが多くなった。


 学校の方は「面白い子とかいっぱい居たよ。早速友達も出来た」と楽しそうに教えてくれた。



 俺の方は、入学式の翌日には早速学力テストがあり、結果はなんとか学年で30番に入れたが、周りの雰囲気もあり浮かれる気分には慣れなかった。

 兎に角、1に勉強、2に勉強、という感じで、隣の席の子とかと少しは会話をするけど、会話は続かない感じで、クラス全体がそんな雰囲気だった。


 お店の方は、バイト扱いにしてくれて時給を出してくれるようになった。

 でも特に使い道が無かったから、全部貯金に回した。



 GWになると、「スマホ欲しいから」とマキもウチのお店で週3~4でバイトを始めた。

 マキは元々お店のメニューとか全部知ってるし、今までもたまに手伝い程度ならしてたので、最初から馴染んでいた。







 1学期の間は、高校の勉強になれるのに必死で、家ではお店の手伝いが息抜きの様になっていた。

 マキとは、お店の定休日に併せて学校帰りに待ち合わせて遊びに行ったり、週末なども夜バイトの後に二人でご飯を食べながらゆっくり過ごし、夏休みに入るころには俺も緊張せずにマキとキスが出来るようになっていた。


 夏休みに入ると同時に、マキは自分の稼いだ給料でスマホを購入した。

 そして俺も一緒に同じ機種を購入した。


 学校では連絡先を交換するほど親しい人は居なかったから、ほぼマキとやり取りするだけのスマホだった。

 マキの方は、事前に高校の友達から連絡先を教えて貰っていたらしく、早速登録してはメッセージを送ったりしているようだった。



 夏休みは、勉強とバイト三昧だった。

 マキも休みの間はほぼ毎日バイトに入った。


 その分、お店の定休日は勉強もせずにマキと二人で遊びに出かけた。




 8月の下旬のある日。

 この日俺は午後のシフトに入る予定で、マキは夕方からの予定だった。


 朝10時頃に自分の部屋でクーラーを効かせて勉強をしていると、マキがやってきた。


 バイトがある日に朝から遊びに来ることは珍しかったので、何か用事とか相談事でもあるのかと思い、俺も勉強の手を止めて冷たい麦茶を二人分用意して話を聞くことにした。



「朝から来るの珍しいね。 なんか用事でもあった?」


「うーん、そうかな・・・・」


 マキはハッキリしない態度で凄く不自然だった。



「何か相談事でもあるの?」


「うーん・・・」


 じれったいので、少し突き放すフリをした。


「何も用事無いなら勉強に戻るけど。 今日は午後からお店だからこの時間しか勉強できんし」


「あ!待って・・・えっと」



 マキがおずおずと小さな箱を俺の前に置いた。


 その箱はコンドームだった。


「へ!?」


「あ、あのね!私たちもう高校生だしね! それにこの時間ならおばさん達もみんなお店でしょ?この時間なら大丈夫だとおもって・・・」


「えっと・・・つまり、エッチしたいの???」


「・・・・うん」


「・・・」


 セックスに興味がないと言うと嘘になるが、それでも自分がその行為をするのはもっと先の話だと思っていた。

 少なくとも高1の間なんてとんでもないと考えていた。

 性欲なんて勉強の邪魔とさえ思うこともあったくらいだし。



「ハル君、そういうのあまり興味無さそうだしね、でも私はハル君と早くそういう関係になりたいって思って」


「確かに、人より興味は薄いかもしれんけど、全く興味がない訳じゃないよ。 ただ勉強とかお店のこと優先してたから」


「ダメかな?」


「俺、上手く出来る自信ないよ?いいの?」


「うん、私も自信無いし」


「わかった」




 この日は恥ずかしいからとカーテン閉めて電気も消して、それでも服を脱ぐと恥ずかしくて、お互い大事なところは手で隠してて、いざ始めようとしても緊張してガチガチで何度挑戦しても上手く出来ず、お昼前に諦めた。


「ごめん、上手く出来んくて」


「ううん、私の方こそ痛がって何度も中断させちゃったし。 明日もう一回挑戦してみよ?」


「うん、わかった」


 この日寝る前に、スマホで色々調べた。


 充分に前戯すること。前戯のやり方。

 入れやすい体位。

 エッチの時に女性をリラックスさせる方法。

 などなど。



 次の日、前日と同じように朝からやってきたマキは、昨日とは違ってモタモタせずに直ぐに本来の目的に入った。

 マキの方も昨日の失敗から色々勉強してきたようで、結局この日1回目で何とか成功した。


 マキはかなり痛がっていたけど、でも「凄く嬉しい」と言ってキスしてくれたし、夕方のバイトも予定通り働いていた。


 この日から夏休みが終わるまでの数日だったけど、家族が居ない午前中に毎日の様に二人でセックスをして、自分では淡泊だと思ってたのに、すっかりエッチにハマってしまった。





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