Episode 12 出逢いと決断

 ネット三昧が続いたある日のことでした。

 私が作詞ができることを聞きつけた地元のネット仲間が、

「オリジナル曲を作ろう」

と言ってきます。

 やりたかったことのしっぽを掴んだ私は、彼と一緒に何曲かオリジナル作品を作り、「弾き語り」をする人たちのたまり場に行くようになりました。


 そこで出逢ったのが、けいさん(仮名)でした。

 時代に似合わぬカタブツさ(笑)。優しく、恋の歌も歌うんだけど、絶対に恋愛には発展しないであろうタイプ。

 でも、みんな、圭さんのことが好きなんですよ。嘘がなくて。


 圭さんは憧れの人でした。私なんかがとてもとても……。でも会いたい。会ってみたい。会いに行こう。

 そこが、運命の一歩目だったのかもしれません。


 私は圭さんと交際するようになりました。勿論、それが「不倫」にならないことを、ちゃんと確認した上でです。


 別居期間が長く、生活費も養育費も払っていない元夫から見て、私たちは「遺棄された妻子」という立場にありました。後で調べると、その場合、母子手当てを受けることだって可能だったらしいです。当然、夫婦関係は破綻していて、その時期に交際相手がいても、全く問題はありませんでした。


 交際して1年半(といっても超遠距離恋愛なので、実際は3回しか会ってないのですが…)、圭さんは、私の両親のところへ交際をしている旨、挨拶と報告に来てくれました。

 当然のように、特に母親からは厳しいことを言われました。けれど、圭さんは、覚悟はあると真剣に誓ってくれました。



 ふと、ゆっちゃんが、ニコニコして、圭さんのところへ行きます。

「え……?」

と、みんな思っていると、ゆっちゃんは、ニコニコ顔で圭さんの袖を引っ張り、

「これは、おとうさん」

と言ったのです。


 えええええええええ!!!!


 みんなしてびっくり。


「お前、もうそんな風に呼ばせてんのか?!」

「そんなわけないでしょ!」

「もう、子供たち会わしたん?」

「今日が初めてや!!」


 大騒ぎ。キャッキャ喜ぶゆっちゃん。


 ゆっちゃんには、未来がちゃんと見えていたのかもしれません。誰よりも、はっきりと。


 まゆも、圭さんに、めちゃめちゃ懐きました。私が圭さんに懐く暇がないくらい、子供たちは圭さんのことが気に入ったようです。


 私は、新しい人生を始めたいと思いました。強く。本当に強く。


 元夫と絶対に別れてやる!!


 そう決断させてくれたのは、圭さんであり、ゆっちゃんであり、まゆだったのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る