第43話 魔法の確認作業
庭に出て転送魔法の準備を始めた。
畑の横にコーラルを使った魔法の肥料を用意した。準備は整った。
「ペンダントトップの裏と庭に魔方陣を作る。その二つで転送魔法を試す。最初はペンダントトップの裏からよ。
宝石魔図鑑も最初に出現するルースも現れなかった。ペンダントトップをめくった。リボンの裏側に小さな地球があった。
「魔方陣があったよ。魔法が成功した」
「宝石魔図鑑もルースも見えませんでした。誰にも分からない魔法です」
「通常の魔法は出現させたほうが、魔法らしくて他の人も納得してくれそう。ここまでは順調ね。もう一つの魔方陣を作る。完成したら転送魔法を試してみる。印スギライト」
庭の中央に魔方陣が完成した。デリートで魔方陣は消えなかった。いつまでも魔方陣を残せておける。クリアで魔方陣を直接消した。再度、庭の中央に魔方陣を作成した。
「最初は小枝で転送できるか試してみる」
「わたしは何をすればよいですか」
「誰かに見られたくないから、人の気配がしたら教えて」
「今は近くに誰もいません。近づきましたら教えます」
木の近くに移動して小枝を見つけた。数本持って魔方陣から離れた位置に立った。この場所から魔法を唱えて、小枝が移動すれば成功となる。
「転送魔法を開始するね。
一番長い小枝を想像して呪文を唱えた。唱えた瞬間、手元の小枝が軽くなった。地面に描かれた魔方陣に視線を移した。心の中で思った小枝が落ちていた。
「アイ様、小枝が出現しています。魔法は成功ですか」
「想定通りの小枝が移動した。次は数を増やす。魔方陣の外に転送できるかも試す」
両方とも問題なかった。出現させる空間に小枝があると、小枝を押し出してくれた。手元への転送も大丈夫だった、想定通りの呪文だった。呪文は心の中でも唱えられた。緊急時にも対応できる。
「順調に魔法が唱えられたようです。他に何を試しますか」
プレシャスが質問しながら近寄ってきた。
「最後に生物が転送できるか試したい。無事に転送できれば魔法は完成よ。兎などの小動物を捕まえたい」
「生きたままですか。わたしが案内します」
時間をかけずに兎を生け捕りにできた。
動くものが転送時にどのようになるか不明だった。念のために兎を籠の中に入れた。私の近くに籠を置いた。プレシャスは離れた位置で待機している。
緊張しているのが自分でも分かる。手に汗を握っていた。イロハ様の世界でも転送魔法は存在する。人間も移動していた。理屈的に宝石魔法でも可能と思う。本物のアイ様からもらった力を信じることにした。
「魔法を唱えるね。瞬スギライト」
籠の中身が消えた。魔方陣のほうへ視線を向けた。兎が跳びはねていた。
ほっと胸を撫で下ろした。転送魔法は生物でも成功した。
「転送魔法は見事でした。ただ本来は貴重な魔法です。取り扱いに注意してください」
「小物は袋を用意して見えないようにする。大物は人目に気をつける」
プレシャスと私自身も転送魔法を試した。魔法が発動すると景色が揺らいだ。揺らぎは収まりながら転送先の景色に変わった。無事に移動できた。
収集部屋に魔方陣を描くため、家の中へ移動した。プレシャスと一緒に収集部屋まで来た。魔法の肥料も忘れずに持ってきた。
「天井も高くて充分な広さがある。丸ごと家が一軒入れそう。これだけ広いと置く場所で迷う。目印をつけたい」
「どのように場所を分けるのですか」
位置で想定もできるけれど広すぎる。もう少し細かく範囲を絞りたい。
「五つの魔方陣を描いて区別する。魔方陣で転送先を分けるのが使いやすそう」
「効率よいと思います。魔方陣ごとに利用を分ければ、間違いも少なそうです」
「中央と四隅に魔方陣を描きたい。中央は人の移動や緊急避難で普段は何も置かない。残りは貴重品、宝石類、旅で使う日用品、大きな荷物置き場よ。印スギライト」
中央に魔方陣を描いた。残りの四つも順番に作成した。最後に棚や箱などを置いて、魔方陣の中でも区分けを作った。
「まだ何もありませんが、素敵な品物で埋まればイロハ様も喜びます」
「たくさん集めたらイロハ様に見てもらいたい。これで完了ね。さっそく転送魔法を試したい。街へ買い物に行って、帰りに転送魔法を使ってみる」
片付けをしてから、プレシャスと一緒に街へ向かった。
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