第9石 スギライト
第41話 畑の手入れ
今日は朝から晴れていた。朝食後に庭へ出て畑の手入れを始めた。最初の頃に比べるとだいぶ慣れてきた。
「肥料をまいた区画は思った以上に育っている。順調そのものね。キュウリとトマトの支柱も倒れる心配はなさそう」
「魔法で作った肥料だからでしょうか」
「確認は難しいと思う。次回は街で購入した肥料と比較したい。純粋に肥料が足りないのかもしれない。育っていないほうにも肥料をまくね」
プレシャスが肥料を持ってきてくれた。一緒に肥料なしの区画に肥料をまいた。
雑草も抜いた。密集した場所は間引くとよいと聞いた。種を買ったお店で教えてもらった作業を実行した。何が正解かはまだ分からない。試行錯誤しながら畑を手入れした。
「アイ様は嬉しそうに作業しています。畑仕事は楽しいですか」
「元の世界では畑仕事に興味はなかった。でも今は試行錯誤が面白い」
「イロハ様も喜んでいると思います。野菜はいつごろ収穫できそうですか」
「蔓が伸びて葉っぱも大きくなるから、収穫はまだ先みたい」
キュウリやトマトは膝まで伸びていなかった。ジャガイモとニンジンも見た目では問題なさそう。この世界には米や小麦がある。野菜の種類も多かった。食事の素材には困らなくて助かっている。
「食べ頃の時期は分かりやすいですか」
「キュウリとトマトは直接見えるから判断しやすいよ。でもジャガイモとニンジンは地中だから確認が必要ね」
「収穫したらどのような料理に使うのですか」
「カレーライスは作りたい。寒い日にはシチューも試してみたい。新鮮な野菜だからサラダも美味しそう。プレシャスは何が食べたい?」
「希望はないですが、まだ食べていない料理に興味があります」
「考えてみるね。イロハお姉様にも手料理を食べて欲しい。でも難しいよね?」
「喜ぶと思いますが、地上への降臨は難しいと思います」
「この前が特別だったのね」
七色オパールで倒れたときにイロハ様が来てくれた。本来は世界の破滅に繋がらないと地上へ来ないと思う。それほどまでの事態だった。イロハ様に迷惑をかけたくない。
「イロハ様の慌てた姿は久しぶりでした。イロハ様が地上に降臨すれば大きな気配が残ります。大聖女の行動で分かったと思います」
「イロハお姉様に迷惑をかけたみたい。気をつけるね。でも手料理をご馳走したい気持ちは変わらない。例えば宝石魔法で呼ぶという形ではどうなるの?」
「試さないと分かりません。少なくともイロハ様の許可をもらう必要があります」
「夢の中で会えたら聞いてみる。イロハお姉様は無理でも、畑を手伝ってくれたライマインさんには手料理をご馳走したい」
一緒にリリスールさんも呼ぶ。好きな食べ物を聞いておきたい。コララレさんも来てくれれば嬉しい。料理を考える楽しみが増えた。
「きっと喜ぶと思います」
畑の手入れも終わりに近づいた。
「残りは水やりで終わりね。プレシャスも手伝ってくれてありがとう」
「肥料を元に戻しておきます」
「その間に水をまくね。雫オパール」
オフの状態で魔法を唱えた。ペアシェイプのルースが出現した。ルースを動かしながらオンとオフを繰り返した。何度も経験した作業で綺麗に水をまけた。
畑の手入れが終わる頃にプレシャスが戻ってきた。
「改めて宝石魔法は便利よね。自由に想像できて魔力切れもない。きっと本物のアイ様が対価を求めていないのかもしれない」
「宝石魔法には驚いています。アイ様が魔法で楽しめばイロハ様も喜ぶと思います。ただ世界破滅に繋がるような危険な魔法はお止めください」
「そのあたりは心得ている。犯罪にも手を染めない。イロハお姉様の世界を楽しむために使いたい。畑の手入れも終わったから少し休もうね」
プレシャスと一緒に家の中へ入った。
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