第34話 討伐依頼完了

 ハンターギルドに到着すると、ピミテテさんが出迎えてくれた。

「ビッグポイズンフロッグを倒してきたよ」

「初めての討伐はどうでしたか?」


「緊張したけれど平気だった。でも帰りが凄かった」

「ライマインさん、何かあったのですか?」

 心配そうにピミテテさんが聞いた。


「討伐依頼自体は問題なかった。遠くから魔法で仕留めた腕も見事だった。問題は街へ戻るときにスパイクベアーに遭遇した」

「まだ街の近くを彷徨いていますか? すぐに討伐を向かわせます」

「倒したから平気だ。街周辺で見かけたのが気になる。ギルドマスターに知らせたい」


「ちょうどよかったです。ギルドマスターもライマインさんを探していました。アイさんの討伐依頼は、わたしのほうで対応します」

 ライマインさんが奥の部屋に消えていった。

「自素石を渡すね。素材は落ちていなかった」

 ピミテテさんに袋ごと渡した。


「自素石は売りますか。素材も買い取りできるので、見つけたら持ってきてください」

「使う予定がないので売りたい。リーフウルフも倒したから一緒に売っても平気?」

「大丈夫です。一緒に鑑定します」


 リーフウルフの自素石も渡した。スパイクベアーは記念に手元へ置いた。鑑定装置を持ってきた。自素石を一つ一つ乗せて確認していた。全てが終わった。

「ビッグポイズンフロッグが七匹で、リーフウルフが三匹でした。討伐報酬と自素石で銀貨十三枚です」

 金額を確認してから受け取った。初めての報酬は嬉しいものがあった。


「今日は食材を多く買って、夕食を豪華にするつもり。自分へのご褒美ね」

「アイさんの笑顔は癒やされます。ご褒美は素敵ですよ。他の依頼でも見ますか」

 嬉しさが顔に出ていたようね。でも嬉しいときは素直に喜びたい。


「次はリリスールさんに監視役をしてもらいたい。依頼内容はリリスールさんと一緒に決めたい。リリスールさんは来ているの?」

「ギルドマスターのところにいます。戻るまで時間がかかると思います」

「時間が掛かりそうね。リリスールさんにはあとで話してみる」


「今日はもう帰るのですか。何か用事はありますか」

「お金も入ったから買い物して帰るくらい。特に予定はないよ」

「もしよければ妹のパメナナに会って頂けませんか。今なら酒場も空いています。アイさんと話したがっていました」


 パメナナさんがきっかけで、酒場で踊れるようになった。小遣い程度だけれど今の生活に役立っている。自由に踊れるのも好きだった。

「私もパメナナさんと話してみたい。実はあまり会話していなかった」

「妹も喜びます。奥で休んでいると思うので、父親に声をかければ平気です」


 ピミテテさんと別れて、プレシャスと一緒に酒場へ移動した。プレシャスが私の顔を覗いていた。討伐依頼が達成できて、プレシャスも喜んでいるかもしれない。

「サムラグラさん、パメナナさんと少し話しても平気?」


「夕食の下準備中だが、邪魔しなければ構わない。今日は踊り子はできそうか」

「平気よ。パメナナさんとお喋りが終わったら踊るね」

「パメナナは奥の部屋だ。ゆっくりしていってくれ」

 近くの扉から奥へと入った。パメナナさんの姿があった。


「ピミテテさんから聞いてきたよ。私と何の話がしたいの? サムラグラさんからは了解をもらった」

「本当に来てくれて嬉しい。いつもお姉ちゃんとばかり話していて羨ましかったのよ。近くに腰をかけてね。わたしは手を止められないけれど気にしないで」

「平気よ。私も食事を作るけれど、パメナナさんは慣れているよね」


「毎日だからね。実はアイちゃんの踊りと音楽に興味があるのよ。音楽と踊りがぴったりあっていた。何処で習ったか知りたいかな」

 踊り子に興味があるみたい。ピミテテさんとはよく雑談していた。でもパメナナさんとはあまり話していない。

「友達の踊りを見て覚えた。一緒に踊って動きを合わせているうちに自然とね」


「わたしもアイちゃんと一緒に踊れば、踊りを覚えられるかな?」

「パメナナさんは酒場での動きが機敏に思えた。きっとすぐに覚えられると思う。せっかくだから今日は一緒に踊ってみない?」

「わたしにできるかな」


「大丈夫よ。友達と一緒に踊る感じできっと楽しい。よければ友達になってくれる? この街に来てから日が浅くて友達が少ないのよ」

 パメナナさんとは年齢が近いから、友達になれたら嬉しい。

「こちらからお願いしたいくらい。普段は仕事でなかなか話せなかったかな」

「私も嬉しい。今日は友達になった記念日ね。一緒に踊ろうよ」


「そこまで言われれば一緒に踊ろうかな。でも衣装はないよ」

「宝石魔法を使えば、同じ衣装を着られる。他に何か気になることはある?」

「踊りに関しては今のところないよ。ただアイちゃんは常識知らずと、お姉ちゃんから聞いた。本当なの?」


 いつの間にか広まっていたのね。

「異国出身だから、この国の常識に疎いのよ。でも徐々に覚えてきている。パメナナさんは酒場で働いているから、情報が入りやすいよね。私が知っておくべき常識はある?」


 動きを止めて考え出した。

「最近の話題でも平気?」

「それでも構わないよ。情報が増えれば、それだけでも助かる」

 パメナナさんが手を動かし始めた。話す内容が決まったみたい。


「一番関心が高い話題は上位魔物かな。まだこの街から遠いけれど、この国の領土内を彷徨いているみたい。国の調査団が調べているらしいよ」

 イロハ様が話していた上位魔物ね。

「上位魔物は自然消滅を待つしかないと聞いた。まだ消滅していないの?」

「すぐには消滅しないみたい」


「国が調査しているのなら、上位魔物は倒せないの?」

「ランク10のハンターが数名集まらないと無理みたい。でも現実的ではないかな」

 最高ランクは10だった。たしか誰もいないと聞いた。

「この国にいるハンターでは、最高ランクはいくつか知っている?」


「ランク9が二人かな。斧使いの戦士と五属性の黒魔道士で、ザムリューン国の英雄として有名よ。王都ザイリュムが活動拠点みたい」

「二人の英雄ね。一度は会ってみたい。その英雄でもランクが足りない。さらに人数が多くないと上位魔物は倒せない。たしかに消滅を待つしかなさそう」


 プレシャスなら上位魔物を倒せるかもしれない。でもイロハ様の考えで手出しをしないはず。私を守るのが最優先よね。

「上位魔物の動きは遅いみたいだから、街の近くに来たら逃げれば平気よ。夕食の下準備が終わったかな。お客で酒場が込む前に踊りたい」

 パメナナさんが立ち上がって背伸びした。


 二人で酒場に戻った。サムラグラさんに話して、二人で踊る了解をもらった。酒場にはパメナナさんの母親もいるので平気みたい。

 いつも踊る場所に二人で立った。テーブルを見渡すと知っている顔があった。よく踊りを見てくれる人たちだった。


「今日はパメナナさんと一緒に踊るよ。音色トルマリン。煌めきトルマリン」

 体が青色の光で包まれて踊り子の衣装に変わった。服の色は最初の歌に合わせて黄色にした。ハープは揺れながら小さな音符を漂わせていた。横に目を向けた。


「煌めきトルマリン」

 パメナナさんの服装も同じように変化した。準備が整った。

「最初は元気な歌、ベスト オブ ハンター。オン」

 二人で一緒に踊った。パメナナさんは遅れずに踊っていた。お客の反応もよかった。楽しい時間を一緒に過ごした。

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